Diary-T 130 うかつだった。
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2015年5月8日

Diary-T 130 うかつだった。

Diary-T

Diary-T 130 うかつだった。

文・アートワーク=桑原茂一

うかつだった。『よくわからないねじ』をよんだ記憶がない。本棚を探したがない。
読み終えたその本の巻末に作家の作品が羅列されているのをみて呆然としたのだ。
これまでの宮沢章夫の書籍はほとんど読んでいると私は高をくくっていた。
ご招待頂いたお芝居のロービーの販売コーナーで知らない作品をみつけては必ず買って読んできたという自負があったにもかかわらず、まったくうかつだった。もうこうなってしまっては粗忽者と蔑まれ、軽率のそしりを受けることも免れないだろう。彼岸からの言葉、牛への道、わからなくなってしまいました、アップルの人、現在文庫本になっているものは論外だが、考える人への連載中から届くと一番にページをめくり声に出して笑う、考えない人、百年目の青空、青空の方法、月の教室、サーチエンジン システム クラッシュ、レンダリング・タワー、14歳の国、演劇は道具だ、考える水 その他の石、呆然とする技術、「ヒネミ」宮沢章夫「魚の祭」柳美里、ヒネミは読んだ。チェーホフの戦争、資本論も読む、なぜかこの二冊はまだ本棚に飾ったままだ……

そう今丁度まさしく私は、宮沢章夫の『ボブ・ディラン・グレーテスト・ヒット第三集』を読み終えたのだ。歳を重ねると内臓の動きも鈍くなるからといいわけがましいがこの本の三分の二を便器に座って読んでしまった。でこの本は二編の小説で構成されているのだが二つ目の「返却」にいたっては最後の八ページを残しall or nothingって言うの?は少しちがうと思うが勢いでほぼ丸ごとを尻に便座を覆うパイル地の隙間のあとをくっきり残すほど読み尽くし、この本の帯コピーに書かれた「僕たちは三十年前のままなんですね」的?な呪文を拭き取り振り払いながら便座から立ちくらみ上がり台所へ向かい冷蔵庫を開けもうないと思っていたお気に入りの温泉水を暫く忘れていたガラスのコップに注ぎなかった水を補充してくれる優しい心遣いに思いを馳せそのまま仕事机に座り最後の八ページを読み終えいまこれを書いている。言うまでもなくこの作品は、お芝居になったり、映画になったりするのだろうな……楽しみだ。で、情景を言葉に置き換える技術が小説を生み出す大切な要素だと腹を抱えて笑った牛への道へをたぐり思い、そういえば牛の胃も反芻するのだったと思い返しあのころも今も私の胃も若干反芻するなでピリオド。

ps.宮沢章夫と私は誕生日が同じ日の射手座同士である。
射手座・学術思想への傾倒 強い探求心 臨機応変 理想主義 競合 so what's

ハニカム選画百 0013

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