穏やかに漂う暗黙のフレグランス、Tacit誕生|Aēsop
BEAUTY / MEN
2015年7月9日

穏やかに漂う暗黙のフレグランス、Tacit誕生|Aēsop

Aēsop|イソップ

調香師と開発担当者にきく

イソップから二つ目となる香り

穏やかに漂う暗黙のフレグランス、Tacit誕生

イソップから二番目となるフレグランス『Tacit(タシット)』が発売される。ユズとバジルをメインにした香りはどのようにして生まれたのか。イソップの開発に携わってきたイソップのリサーチ&ディベロップメント マネージャーのケイト・フォーブスさんと調香師のセリーヌ・バレルさんに話を聞いた。

Text by IKEGAMI Hiroko(OPENERS)

前作のマラケッシュ インテンスにつづいて、イソップ二番目となるフレグランスが誕生した。ベチバーハートとバジルオイル、そしてユズの香りがキーとなるこの新フレグランスについて、調香師のセリーヌ・バレルさんと、イソップの80%以上の製品開発に携わってきたケイト・フォーブスさんにインタビューした。

――前作のマラケッシュ インテンスから、それほど期間を置かずに第二のフレグランスを発表することになりましたね

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リサーチ&ディベロップメント マネージャーのケイト・フォーブスさん

ケイト・フォーブスさん フレグランスつくりは私たちにとってチャレンジングなことであり、また大変素敵なコラボレーションとなりました。ぜひ、この刺激的なケミストリーを生み出したいと思い、ふたつ目のフレグランス制作をスタートすることに。セリーヌとは9年以上も前から親交があり、ぜひ次のコラボレーションは彼女をと声をかけたのです。そして、マラケッシュ インテンスは、トップのフローラルとミドルノートのスパイスがたいへんユニークな香りですので、今度はグリーンでフレッシュな香りがいいと思ったのです。

――スキンケアやボディケアアイテムを開発するのと、フレグランスを生み出すのは、違いがあると

ケイト・フォーブスさん ええ、まったく違います。わたしは科学者ですので、スキンケアやボディケアアイテムをつくるほうが簡単です。効果を追求するために成分を組み合わせて実験を繰り返し、失敗しても化学式から答えを導きだすことができます。
一方、フレグランスはもっとエモーショナルなもの。ですから、その感覚や感性をかたちにしてくれるセリーヌの力が必要だったのです

パントーンカラーNo.363がイメージソースに

――実際に『Tacit』をつくるうえで、どのようなプランやコンセプトがあったのですか

セリーヌ・バレルさん イソップのメンバーから4つのコンセプトが伝えられました。ひとつはグリーン色。こちらはパントーンカラーのNo.363です。深くエネルギッシュな緑ですね。そして2つめはイソップのレバレンス ハンドバームの香り。

それから、キリコの絵。さびれた異国情緒ただよう街の風景画で、端には列車が描かれたものです。

4つめは、1960年代の香港を舞台にした映画「花様年華」。束の間の美しさや若さ、秘められた関係がテーマの映画です。

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調香師のセリーヌ・バレルさん

――色や絵画、映画など、とても独創的な4つをヒントに香りをつくるとは、とても難しそうですね

セリーヌ・バレルさん ええ。難しくもあり、そしてワクワクしました。大手フレグランスメーカーからの依頼は、トレンドの香りに添ったリクエストが多く、もっとコマーシャルでマーケティング的な考えがベースなることがほとんど。でも、イソップとの仕事は、もっとアーティスティックで、大変たのしく、やりがいがありました。

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――そのイメージを具体的な香りにしていくのですね

セリーヌ・バレルさん まず、グリーンのカラーの爽やかさはユズで表現することにしました。柑橘系のなかでも、知的でモダンな感じがするユズがぴったりだと思ったのです。また、キリコの絵画に見られるエッジイなムードはバジルで、それも珍しいエジプト産にこだわりました。通常、バジルはベトナム産がよく知られていますが、もっとスパイシーなエジプト産を使いたいと思ったのです。そして「花様年華」の官能的な部分は、ベチバーハートを贅沢に使って表しています。

――ちなみに、Tacitとはどんな意味が込められているのですか

ケイト・フォーブスさん タシットとは、知識にまつわる言葉で、言語で言い表すのではなく、暗黙のうちに理解できるといった意味です。

――だから、インテリジェンスが感じられる仕上がりなのですね。

セリーヌ・バレルさん わたしの勝手な想像ですが、イソップのユーザーは、男性も女性も知的なインテリジェンスが漂う人々。本物の品性を持つ、洗練された人。

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ケイト・フォーブスさん わたしたちはお客様をセグメントしていないので、どういった方につかってもらいたいといった具体的なイメージはないのですが、日本人の方は、職人や本物へのこだわりが強い方が多いので、タシットに共感してくれるのではと期待しています。

――そして、アーティスティックなコラボレーションといえば、パッケージデザインも同様です。

ケイト・フォーブスさん 今回のパッケージデザインはオーストラリアのジョナサン・マッケイブ氏に依頼しました。この布が波打つように動くイメージは、入力した情報からアルゴリズムをつくりだし、システムによって描かれたもの。エモーショナルな部分とテクノロジーが一体となった、とてもすばらしい作品です。

今回のタシットもそうですが、わたしたちは様々な人とコレボレーションをしてきました。東京ミッドタウン店や京都店などの店舗デザインは日本人の建築家とのコラボレーションですし、先日はアパレルブランドのA.P.C.とトイレの消臭剤も発売もしています。外部のアーティストや専門家とのコラボレーションは、とても刺激的で、またイソップの世界を多方面からお客様へ伝えることができます。これからも、ショップや製品をとおして、イソップの世界を広げていきたいですね。フレグランスに限らず、わたしたちが提供しているのは、製品だけにとどまるのではなく、イソップエクスペリエンス、つまりは体感していただきたいのです。

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タシット オードパルファム
価格|1万1880円[50mL]

http://www.aesop.com

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ケイト・フォーブス
化粧品科学の専門課程に加え、学士号と博士号(化学)も取得。科学的な探究、そして細心の注意を払って高品質の成分・原料を調達するイソップの精密な方法に賛同するキーパーソン として、現製品ラインナップ中80%以上の開発に携わっている。現在、イソップの継続的な成長を支えるきわめて重要な機能の数々である、新処方、研究開発、グローバル製品の 安全およびコンプライアンスなど、イソップの製品全体の開発および管理を監督している。

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セリーヌ・バレル
有名な香水会社でインターンとしてキャリアをスタートさせ、同時にマーケティングおよび国際経営学の修士 号に向けて勉強。卒業後、ミラノのInternational Flavors and Fragrances (IFF:インターナショナル ・フレバー・アンド・フレグランス)にマーケティング担当として入社し、その後、同社の調香学校に入り、オランダ、 フランス、米国で調香を学ぶ。現在、IFFニューヨークのクリエイティブ・センターに在籍し、ファイン フレグランス部門に勤務。

           
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