Diary-T 62 Angel
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2015年5月8日

Diary-T 62 Angel

Diary-T

Diary-T 62 Angel

文・アートワーク=桑原茂一

朝風呂に入って、澁澤龍彦事典をめくっていたら、「天使」の話に目がとまった。

でその行間から飛び込んできたのが、

漢字の「七」を飛翔する天女の象形と見てとり……というフレーズ、

ほ〜う、なるほど、気がつかんかったが、確かに

「七」は天女が飛んでいる。

で、天使……脆さ、弱さ、甘さ、……も染みこんできた。

そういえば、二十七歳の頃、

なぜか天使にとりつかれ、

comme des Gのパリコレの後で必ず寄り道していたロンドンの

行けば必ず通っていたポートベローアンティーク・マーケットで

天使の絵を懸命に探したことがあった。

そういえばあのとき手に入れたあの天使の絵はいったいどこにいったのだろう。

探したのは最初のアルバムのジャケットに使えたらの思いもあったから、

が、その天使は、さらっとしてて毒というか濃さが足りなかった。

うーん、だからそこに加味するなにかが掴み切れてなかった。

天使……脆さ、弱さ、甘さ、

でファーストアルバム「急いで口で吸え」のジャケットは

友人のパンクサックスプレーヤーの書いてもらった奇天烈系南国の花。

ま、花は、植物の「性器」

つまり性器を恋人に送る愉快な人間ということもあり、

そう、この知ったかぶりは、その昔渋谷の道玄坂の古本屋で

敬愛する澁澤龍彦さんの全集を見つけたから、

ま、それはともかく、記憶を手繰っても

天使になぜ惹かれたのかいまだによく分からない。

一つ思い出すのは、あの頃、

デヴィッド・リンチ監督『エレファント・マン』(The Elephant Man)を、

ロンドンの映画館で観て、号泣したことがあった。

もしかしたらそのことも関係があるのかもしれない。

そうそう、映画の後半で主人公がつよく望んだ舞台見物のシーンで、

エレファントマンが許されて貴賓室から観るその舞台のクライマックスで、

天使が糸で吊され、飛んでいた。飛んでいてた。確かに私は飛んでいた。

飛んでいた記憶が蘇る。

ところで、

一、漢字の「七」という文字が飛んでいるようにみえること

二、舞台で「天使」飛んでいたこと、

三、その映画を観ていた私が飛んでいたこと、

一見、なんの脈略のないこの三つの要素を繋ぐのは

飛んでいたこと。

つまり、飛んでいることの善し悪しは、

創作のヒントにはまったく関与しないということ。

だから、天使はどこに行ったのか?

これこそ私の明日を左右する極めて大切な問題だ。

うん?

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