モエ・エ・シャンドン モエ アンペリアル 150年 アニバーサリー(2)| MOËT & CHANDON

モエ・エ・シャンドン モエ アンペリアル 150年 アニバーサリー(2)| MOËT & CHANDON

モエ・エ・シャンドンとシャンパーニュの276年

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MOËT & CHANDON|モエ・エ・シャンドン

モエ・エ・シャンドンとシャンパーニュの276年

モエ アンペリアル 150年 アニバーサリー(2)

1600年代の後半に、偶然も手伝って誕生したシャンパーニュ地方の発泡するワインは、造り手たちによって磨き上げられて、シャンパンという特別なワインとなった。フランス王室の庇護を受け、時代にも愛されたシャンパンを、モエ・エ・シャンドンは、いち早く、世界に広めてゆく。封建社会から市民社会へと時代が移ってゆくなかで、モエ・エ・シャンドンの存在感は揺るぎないものとなってゆく。

Text by SUZUKI Fumihiko

シャンパンを世界に

では、シャンパンを世界に、のほうはというと、これはクロード・モエのビジョンだ。

クロード・モエは有能なビジネスマンであり、そもそもワイン商として、フランス国外にもコネクションがあった。そして、フランス王室を魅了した発泡するシャンパンのワインを、フランス国外にも広めていったのだ。ドイツ、スペイン、ベルギー、そしてロシアにまでシャンパンは広まる。クロード・モエの死後ではあるけれど、1787年にはアメリカにも輸出され、18世紀の間にシャンパンは欧米の上流階級の間で、その名声を確立した。

かくして、成功するモエのシャンパンだけれど、いっぽうフランス王家のほうは紆余曲折あり、革命の後、フランスは皇帝が支配する国となる。そして、この皇帝、ナポレオン・ボナパルトもまたシャンパンに魅了された人物だった。

「余はシャンパンなしでは生きられん」といい、勝利の祝杯にシャンパンを注ぎ、負ければシャンパンで敗北を慰めたと伝えられる。ちなみに、ナポレオンはロシア戦役で敗れるけれど、ナポレオンに敗れたロシアの貴族もシャンパンには魅了されていたので、シャンパンは政治の敵味方を超越している。

ナポレオンはモエ・エ・シャンドンのお得意様だった。シャンパーニュ地方エペルネにある、モエ・エ・シャンドンの発祥の地にして現在も本社がある「ホテル モエ(モエの館)」にはナポレオンが試飲に訪れたという「ナポレオンの部屋」があり、そこには皇帝が酔って眠くなってもいいように、ソファーもある。そして、ナポレオン一家からの注文を取りまとめたノートが、いまも残っている。

こちらがそのノート。ナポレオン・ボナパルトのみならず、ナポレオン一族の注文が丁寧にまとめられている

ここは現在、ユネスコの世界遺産に登録されている。地下にはシャンパーニュ地方最大となる総延長28kmの巨大セラーがあり、そこも世界遺産。セラーにも、ナポレオンが訪れたことを示すプレートや、ナポレオンの訪問の際に贈られたナポレオン カスク(樽)など、皇帝の痕跡がある。現在はどちらも、私たちも見学できる。

モエ・エ・シャンドンが誇る地下セラー。奥に見えるのがナポレオン カスク。光によるワインの劣化をふせぐため、肉眼では照明が赤いけれど、実際はシャンパーニュ地方を特徴づける白亜紀のチョーク質土壌を削って出来た白い洞窟。この土壌はスポンジのように水を蓄え、干ばつでもブドウに充分な水を供給し、セラーを乾燥から守り、温度を一定に保つ。

ナポレオンから注文を受けたのはクロード・モエではない。クロード・モエは1760年にこの世を去り、当時の当主はその孫にあたる三代目。18世紀末から19世紀はじめに、モエを牽引したジャン・レミー・モエだ。ジャン・レミーは、ナポレオンだけでなく、国外の王侯貴族と厚い信頼関係を結んだ、クロードの精神の継承者だ。

1807年、モエ・エ・シャンドンのカーヴを訪れたナポレオンを案内するジャン・レミー・モエ

シャンパンにおける継承は、単に継続だけを意味しない。たとえば、人気高まるシャンパンには、ブドウ畑がもっと必要だったから、ジャン・レミー・モエはブドウ畑の開墾に乗り出し、シャンパーニュ地方で良質なブドウを栽培できる土地の発見と、栽培法の発展にも貢献した。現在約1200haとシャンパーニュ最大の自社畑をもち、しかもそのうち50%がグラン・クリュ(特級)、25%がプルミエ・クリュ(一級)というモエ・エ・シャンドンの原点はジャン・レミー・モエにあり。シャンパンは、農業にも、醸造にも、ボトリングにも、貪欲に時代の先端技術の導入し、なければ発明し、ノウハウを蓄積する。ジャン・レミー・モエは、そういうシャンパーニュの革新によって伝統を紡ぐスタイルの体現者だった。

19世紀中に、モエのシャンパンはブラジルやカナダにも出荷され、世界はモエの魔法にかかってゆく。