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2025年8月29日

時計を映像で学ぶ。ブローバ150年の軌跡をYouTubeでどうぞ

BULOVA|AMERICA TELLING TIME -アメリカの時を告げるブローバ ~150年の軌跡~

19歳でボヘミアから単身渡米したジョセフ・ブローバが築いた時計帝国の物語が、BULOVA創業150周年記念ドキュメンタリー『AMERICA TELLING TIME -アメリカの時を告げるブローバ ~150年の軌跡~』としてYouTubeで視聴できるようになった。アメリカ国内でのAmazon Prime配信を経て、日本語字幕付きで無料公開された本作は、月面着陸、リンドバーグの大西洋横断、音叉式腕時計の革新など、人類の偉業と共に歩んだブランドの150年を体感できる貴重な動画コンテンツである。

Text by TSUCHIDA Takashi

映像で辿る移民青年の成功物語

1870年、わずか19歳のボヘミア(現在のチェコ共和国)の青年が、単身アメリカの地を踏んだ。彼の名はジョセフ・ブローバ。手に職を持つ時計職人として新天地での成功を夢見た一人の移民が、その後150年にわたってアメリカの時を刻み続ける時計帝国を築き上げることになろうとは、当時、誰が想像できただろうか。
このドキュメンタリーが魅力的なのは、BULOVAが追求し続けてきた技術革新の軌跡を、豊富なアーカイブ映像とともに辿れることだ。1920年代のフィフスアベニューへの移転とともに建物屋上に設立された天文台のシーンは、精度への飽くなき追求を象徴する印象的な出来事として記憶に残る。
アキュトロンの開発秘話で紹介されるプロトタイプ。アクセントカラーが特徴的な緑色ではなく、青色であることが明かされている。
圧巻なのは、1960年に発表された世界初の音叉式腕時計「Accutron(アキュトロン)」の開発秘話である。従来の脱進機に代わって、電子回路で駆動するこの革新的な時計は、当時のどの時計よりも桁違いに精密で正確だった。その証拠に、X-15パイロットやSR-71ブラックバードのパイロットといった、極限の精度を要求される現場で採用されたのである。
ジェミニ・タイタン2号打ち上げに携わった作戦部長ボブ・シーク氏の証言とともに紹介された貴重なアーカイブ。
さらなる感動的なエピソードは、人類の宇宙開発史におけるBULOVAの役割である。NASAの宇宙計画においてアキュトロンが果たした決定的な役割は、技術的な信頼性の証明にとどまらない。アポロ15号の月面着陸時に予備時計として使用され、「月面に到達した唯一の個人所有の時計」となった話題は、多くの人々の心を打つはずだ。
人類の偉大な挑戦の傍らには、常にBULOVAの時計があった。チャールズ・リンドバーグの大西洋横断飛行を記念した「ローン・イーグル」、アメリア・イヤハートの偉業を称える「レディ・リンディ」といったモデルは、単なる記念品を超えて、人類の冒険心そのものを時計という形で表現したものと形容できる。

映像が伝える「魂を持ったブランド」の価値

映像を通じて浮かび上がるのは、BULOVAが単なる時計メーカーではなく、「魂を持ったブランド」であるという事実だ。広告とマーケティングの分野における先駆者としての歴史も、映像ならではの説得力で伝えられる。
1926年に全米初のラジオ広告を実施し、1941年7月1日にはブルックリン・ドジャースの試合中に史上初のテレビコマーシャルを放送したBULOVA。これらの革新的な取り組みを当時のアーカイブ映像で見ることで、時計というプロダクトの文化的価値を社会に浸透させる試みの意義が実感できる。
ブローバが提供した歴史上初のテレビコマーシャル。
フランク・シナトラのパートでは実娘、ティナ・シナトラが登場して証言。
ジョニー・ワイズミュラー、モハメド・アリ、フランク・シナトラ、マーク・アンソニーといった時代のアイコンたちとの関係性も、アーカイブ画像を通じて鮮やかに蘇る。彼らがBULOVAを選んだのは、それが単に精度の高い時計だからではなく、着用者に「大胆さ」や「誇り」、「冒険心」を感じさせる存在だったからである。
そして社会貢献への姿勢も、映像を通じて深く理解できる。1924年に女性向けコレクションを他社に先駆けて発表し、1972年の「Equal Pay Equal Time」広告で男女平等という社会問題に関与した歴史。さらには第二次世界大戦後に設立された「ジョセフ・ブローバ時計学校」で、戦争で傷ついた帰還兵たちに時計製造の技術を教え、新たな目的と生きがいを与えた取り組み。これらの物語は、映像ならではの感動とともに心に刻まれる。
歴史について学ぶとき、もはや専門書を読む必要はない。YouTubeで視聴できるこのドキュメンタリーは、BULOVAというブランドを通じての20世紀を理解する格好の学習コンテンツだ。
150年の時を刻み続けてきたBULOVAの物語は、時代を超えて響く人間の情熱と創造力の映像詩である。移民の夢、技術革新への飽くなき探求、社会への貢献、そして未来への希望。このドキュメンタリーを通じて、私たちは時計というプロダクトを超えた、ひとつのブランドが持つ「魂」の存在を映像で実感することになる。
                      
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