工房の実力を表現するムーブメントを搭載

高級メゾンがスイス・ジュネーブで会し、その年の新作を発表する、時計の見本市SIHH。腕時計の最新トレンドを決定づける一大イベントに向けて、各ブランドとも準備に余念がない。会期が間近なこともあって、新作を先行してお披露目するブランドが増えてくる時期だ。

SIHHの中心プレーヤーであるカルティエが先陣を切るように、1月にお目見えする新作の一部を先行してリリースした。ひとつは機械式腕時計を目で楽しめるスケルトンウォッチであり、もうひとつは詩的なストーリー性にあふれるレディースの複雑式機械式腕時計である。2本とも野心的な自社製ムーブメントを搭載し、時計工房であるカルティエの実力を証明する腕時計たちである。

Laziz Hamani © Cartier 2015

クレ ドゥ カルティエにスケルトンモデルが登場

2015年に新しいコレクションとして船出した「クレ ドゥ カルティエ」は、“鍵”（フランス語でクレ）を想起させる独特のリューズと、クラシック感にあふれるオーバルケースで、大きな話題を呼んでいる。ベーシックな３針モデルのほかトゥールビヨンやミステリーアワーズもラインナップする充実したコレクションに、今回、スケルトン仕様の新作が加わる。

時計の文字盤は、12、3、6、9時のインデックスを大型のローマ数字で仕立てたように見える。だが、それは文字盤ではない。搭載するキャリバー9621MCの地板をエッチングし、文字盤風にあつらえているのだ。しかも、ケース裏側の受け板も徹底的にスケルトン化したうえ、22K製のローターに大胆なデザインを施し、シースルーバックからムーブメントを見ても、これが自動巻きだとは、一見しただけでは気がつかないほどだ。

ローターは緻密な計算の下で、形状と厚さ、重量を決定されており、巻き上げ効率も十分に確保されている。優れたメカニズムと芸術的なデザインを両立させた自動巻きムーブメントであり、鑑賞という言葉に値する出来栄えだ。2年目を迎える、このコレクションの人気を不動のものに確定させる逸品である。

Laziz Hamani © Cartier 2015

クレ ドゥ カルティエ オートマティック スケルトン
ケース｜パラジウム950
直径｜41mm
厚さ｜11.45mm
ムーブメント｜自動巻き（Cal.9621MC）
ストラップ｜アリゲーター
防水｜日常生活防水
発売｜2016年4月予定
価格｜未定

Page02. 文字盤が詩的なストーリーを描くキャンバスに

文字盤が詩的なストーリーを描くキャンバスに

レディスに供される機械式時計は数少なく、コンプリケーションウォッチは一段とレアである。それだけに、複雑な機構はメンズより研ぎ澄まされ、詩情あふれる世界を展開することがある。この「パンテール エ コリブリ ウォッチ」も、そんなレディース向けのコンプリケーションだ。

パンテールは豹、コリブリは蜂鳥を表すフランス語。文字盤には、18Kホワイトゴールドとブリリアントカットダイヤモンド、ブラックラッカー、ペアシェイプで象られた豹が配され、ゴールドで仕上げられた蜂鳥と共に、くつろいでいる様子が描かれている。

Vincent Wulveryck © Cartier

時刻表示は文字盤の10時位置に慎ましいサイズで配置されており、ダイヤモンドを敷き詰めたケースと共に、いかにもレディースモデルらしいラグジュアリーな雰囲気を醸し出している。

しかし、3時位置のリューズをプッシュすると、文字盤の様相が一変する。豹の胸元から、ゴールドで彩られた子豹が現れ、それに驚いて逃げ出すように、蜂鳥が文字盤の12時方向に舞い上がる。実は、蜂鳥は、パワーリザーブインディケーターを兼ねており、ゼンマイの残量に応じて移動する量が変わってくるのだ（ゼンマイ残量が多いほど12時近くへ動く）。

豹の親子と蜂鳥の戯れる様子を、オートマタ（からくり人形）のように組み込んだキャリバー9915MCは、機械式ムーブメントとして精巧な仕上がりを見せ、文字盤に微笑ましいストーリーを紡ぎ出す、詩的で芸術的な作品となっているのだ。

Vincent Wulveryck © Cartier

パンテール　エ コリブリ ウォッチ
ケース｜ロジウム加工18Kホワイトゴールド、314個のブリリアントカットダイヤモンドをセット
直径｜42.75mm
厚さ｜11.4mm
ムーブメント｜手巻き（Cal.9915MC）
機能｜パワーリザーブ表示（3時位置のリューズを押すと、子豹が現れ、蜂鳥がゼンマイの残量に応じて12時方向へ移動）
ストラップ｜アリゲーター
防水｜日常生活防水
発売｜2016年4月予定
価格｜未定