A. Lange & Söhne|その“シンボル”と呼ばれる腕時計
A. Lange & Söhne|A.ランゲ&ゾーネ
PRディレクター アーンド・アインホーン インタビュー
その“シンボル”と呼ばれる腕時計
A.ランゲ&ゾーネは、ドイツのザクセン州、ドレスデンに居を構えるマニュファクチュール。ドイツの東西分裂とともに一時休眠するが、ドイツ統合を機に1994年に新生A.ランゲ&ゾーネとして復活を遂げる。昨年の2010年はブランドの創設165周年、かつ復活から20周年を記念した数々の名品を発表したが、この新作「リヒャルト・ランゲ・トゥールビヨン“プール・ル・メリット”」もまた、A.ランゲ&ゾーネの歩みを伝えるモデルとしての登場だ。
Text by NOGAMI AkiPhotos by JAMANDFIX
A.ランゲ&ゾーネの偉業を語る“プール・ル・メリット”
「この時計は、『A.ランゲ&ゾーネ』を語るシンボルのひとつです」
「リヒャルト・ランゲ・トゥールビヨン“プール・ル・メリット”」を手にそう語るのは、A.ランゲ&ゾーネのPRディレクターを務めるアーンド・アインホーン氏。もともとジャーナリズムの分野に携わっていたアインホーン氏は、同社復活の当初からブランドを支えてきた人物でもある。
“時計職人の技術を反映した機構”と“ザクセンの伝統を活かした芸術”――これらふたつを兼ね備えた時計をA.ランゲ&ゾーネは製作してきた。この時計もまた、まさしく同社の企業文化を反映する時計のひとつだと、アインホーン氏は語る。
時計に名づけられた“プール・ル・メリット”とは、科学や芸術の分野で功績をあげた人物に与えられるプロイセン王国の勲章。アレクサンダー・フォン・フンボルトの進言により、プロイセン王であるフリードリッヒ・ヴィルヘルム4世が制定した。A.ランゲ&ゾーネは自社の功績を讃えるために、この誉れ高き勲章の名をあえて選んだという。その名を冠したモデルは、この「リヒャルト・ランゲ・トゥールビヨン“プール・ル・メリット”」を含めて計4型。そのすべてに同社が誇る機構“チェーンフュジー”が搭載されている。チェーンフュジーとは、トルクと精度を一定に保つための鎖引き機構。精度向上のためかつては大型のマリンクロノメーターに搭載されていた機構を1994年、新生A.ランゲ&ゾーネは初めて小さな腕時計へと搭載することに成功する。
「1994年に発表された最初の“プール・ル・メリット”は、社の復活を記念するラインナップのひとつでした。チェーンフュジーとトゥールビヨンの両方を備えた時計はセンセーショナルなニュースとして話題を呼び、いまでもオークションで高い人気を誇っています。そして2005年にはスプリットセコンドの『トゥールボグラフ』、2009年には私たちのアイコンモデルである『リヒャルト・ランゲ』に搭載したモデルが発表されました」
高精度を保つトゥールビヨンにストップセコンド機構を搭載
そして2011年、4作目として登場したのが、先に登場した「リヒャルト・ランゲ・トゥールビヨン“プール・ル・メリット”」だ。過去の3作品はもちろん、最新作であるこの一本を、アインホーン氏は“A.ランゲ&ゾーネを具現した時計”としてことのほか気に入っている。
「チェーンフュジーにくわえて、トゥールビヨン、そしてストップセコンド機構までもが搭載されている、極めて複雑な時計です。トゥールビヨンは200年以上受け継がれてきた、高精度を保つための機構。しかしながら秒単位で時刻を合わせることができないのが難点でした。トゥールビヨンを一旦停止し、時刻を秒単位で正確に合わせることのできるストップセコンド機構はA.ランゲ&ゾーネの特許でもあります。高精度を目指しながら、かつ正確な時刻表示を追求する――まさに私たちが掲げてきた“精度向上”を形にした時計ではないでしょうか」
「リヒャルト・ランゲ・トゥールビヨン“プール・ル・メリット”」は、時と分、秒が独立したレギュレータースタイルを踏襲している。左下の秒表示の部分にディスプレイされたトゥールビヨンの小窓が時刻表示と重なるため、この時計には回転式の時刻表示ダイヤルが搭載されている。6時になるとVIII~Xまでのダイヤルが現れ、12時になるとまた隠れていく仕組みだ。
「今秋には、やはり私たちの特許であるハニーカラーゴールドを用いた限定モデル『ハンドヴェルクスクンスト』も発表しました。ドイツ語で“クラフツマンシップ”を意味するこの時計は、特に仕上げの美しさにこだわっています。見た目もさることながら、イエローゴールドより2倍の硬度を誇るハニーカラーゴールドに、繊細な質感を出すためのトランブラージュ技法、4番車の受けに施した立体的なレリーフなど、私たちの職人芸が詰め込まれている時計です」
グローバルな展開を続けていくいっぽうで、長年にわたり培ってきた自分たちのアイデンティティを忘れない時計を生み出したい――それがアインホーン氏の願いだ。
「何世代にもわたって伝えられてきた時計職人の“手”を感じる時計、そして私たちにしかできない革新的な技術を積極的に開発していくつもりです。2012年も期待に違わない新作を発表する予定。楽しみにお待ちいただけたらと思います」
A.ランゲ&ゾーネ
Tel. 03-3288-6639