1970年代に誕生した麗しきアーキテクチャー。甦ったフルコレクション|GIRARD−PERREGAUX
WATCH & JEWELRY / SIHH&BASEL
2017年12月4日

1970年代に誕生した麗しきアーキテクチャー。甦ったフルコレクション|GIRARD−PERREGAUX

GIRARD−PERREGAUX|ジラール・ペルゴ

グラマラスな曲線が生み出す、優しさと優雅さ。
現代のアールデコと言うべき、幾何学バランスの勝利!

オクタゴンベゼルの逆アールによるやわらかな印象が目に飛び込み、ブレードのような曲線が作り出す影にデザインの深みを覚える。時計ケースのベースレイヤーはサテン仕上げ。その次のラウンドはポリッシュ。そしてオクタゴンベゼルは正面がサテンでサイド面がポリッシュ仕上げとなる。建築設計を応用した様式美は、スポーティ&ラグジュアリーの枠から、一歩、抜きん出たエレガンスをもたらしている。

Text by TSUCHIDA Takashi(OPENERS)

建築設計を応用したジラール・ペルゴを代表する「ロレアート」

1975年に初代モデルが誕生した「ロレアート」が今年、フルラインナップコレクションとして戻ってきた。これまでも単発アイテムとして幾度となくリリースされてきた「ロレアート」だが、今回は女性用モデルから複雑モデルまでを揃えた4サイズ全40型が一気に登場、これでブランドを代表するシリーズが新たに形成されたことになる。

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しかも「ロレアート」のデザインコードをすべて満たし、1975年当初のディテールが変更されることなく、忠実に継承されていることにも注目したい。そのデザインコードとは、

・八角形と円を組み合わた個性派ベゼル
・文字盤にはクル・ド・パリ装飾(※ピラミッドを敷き詰めたようなテクスチャーのこと)
・ケースとブレスレットが連続的で、しかもフィット感に優れるデザイン
である。

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幾何学的デザイン、すなわち八角形と円を組み合わせるベゼルデザインのアイデアは、イタリア・フィレンツェのドゥオモ(教会堂)のクーポラ(半球形の屋根)の構造から着想を得たものだ。ロレアートのデザインには、イタリアの建築家が携わっているからである。

一方で、ロレアートには、もうひとつストーリーがある。1975年にリリースされたロレアートは、インハウスクオーツムーブメントを搭載した進取のモデルだったのだ。

スイス勢として、いち早くクオーツムーブメントの自社設計・製造に成功したジラール・ペルゴは、1971年にファースト・クオーツモデルをリリース。そしてジラール・ペルゴが定めたクオーツ振動子の振幅数32768Hzがその後の世界基準となり、現在に至っている。

ジラール・ペルゴはクオーツムーブメントに対し、機械式と比較した優劣を定めず、あくまでもムーブメントの選択肢のひとつと捉えた。もちろん、当時のクオーツは超高級品だったのだが、クオーツムーブメントにコート・ド・ジュネーブ装飾を施すなど、見えない箇所にも機械式ムーブメント同様に手間暇をかけたのである。

その姿勢は、現行コレクションにも現れている。今回はケース径34mmのレディースコレクションにクオーツムーブメントが採用され、誕生当時へのオマージュを込めている。

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1975年発表のオリジナルモデル。

また4サイズそれぞれに、最適サイズのムーブメントを収めていることも興味深い。シースルーバックから見るムーブメントは、ケース内のスペースを最大限活用している。ムーブメントを使い回していない誠実さも、SIHHにて評価を集めたポイントである。

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ロレアート 42mm

ムーブメント|自動巻き(Cal.GP01800)
ケース素材|SSまたはチタンと18KPGのコンビ
ケース径|42mm
ストラップ|SSブレスレットまたはチタンと18KPGのコンビまたはアリゲーター(アリゲーターストラップの場合、交換用ラバーストラップ付き)
ケースバック|シースルー
防水|10気圧(SSモデル)、5気圧(チタンモデル)
価格|119万円(左)、244万円(中央)、111万円(右) ※すべて税別

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ロレアート 38mm

ムーブメント|自動巻き(Cal.GP03300)
ケース素材|ベゼルに56個のダイヤをセットしたSSまたは18PGまたはSS
ケース径|38mm
ストラップ|アリゲーター(アリゲーターストラップの場合、交換用ラバーストラップ付き)または18KPGまたはSS
ケースバック|シースルー
防水|10気圧(SSモデル)、5気圧(18KPGモデル)
価格|147万円(左)、370万円(中央)、112万円(右) ※すべて税別

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ロレアート 34mm

ムーブメント|クオーツ
ケース素材|ベゼルに56個のダイヤをセットしたSSまたはベゼルに56個のダイヤをセットした18KPG
ケース径|34mm
ストラップ|SSまたはアリゲーター(アリゲーターストラップの場合、交換用ラバーストラップ付き)
防水|3気圧
価格|103万円(左)、196万円(中央)、95万円(右) ※すべて税別

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ロレアート トゥールビヨン

ムーブメント|自動巻き(Cal.GP09510-0002 ホワイトゴールド ブリッジまたはCal.GP09510-0001 ピンクゴールド ブリッジ)
ケース素材|18KWGとチタンまたは18KPGとチタン
ケース径|45mm
ストラップ|アリゲーター
防水|3気圧
価格|1062万円(左)、1011万円(右) ※いずれも税別

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ロレアート スケルトン

ムーブメント|自動巻き(Cal.GP01800-0006)
ケース素材|SSまたは18KPG
ケース径|42mm
ブレスレット素材|SSまたは18KPG
防水|10気圧(SSモデル)、5気圧(18KPGモデル)
価格|345万円(左)、654万円(右) ※いずれも税別

Page02. ブランドアイコンの“ブリッジ”をフィーチャー

GIRARD−PERREGAUX|ジラール・ペルゴ

ブリッジを生かし、機構をシンメトリーに配置。
現代のアールデコと言うべき、幾何学バランスの勝利!

ブランドアイコンの“ブリッジ”をフィーチャー

ジラール・ペルゴがアイデンティティとしているディテールのひとつがブリッジである。ブリッジすなわちムーブメントの軸受けをジラール・ペルゴは文字盤のデザインへと昇華した。歯車の軸を支えるべく、地板の対面で軸をサンドイッチするだけのパーツを、文字盤側に移動させ、装飾のひとつに見立てる、そのセンスが卓越している。しかもブリッジを配列し、左右シンメトリーに見せるというのも、ジラール・ペルゴのオリジナルセンスである。時計の輪列レイアウトを精度追求以外の美的見地から見直す行為は、当時、並外れた発想だったに違いない。

昨今のジラール・ペルゴは、このブリッジを用いたアイコンをコンプリケーションモデルで展開してきたが、今年、ついにノンコンプリモデルが登場した。設計モチーフは、1889年のパリ万博でグランプリを受賞した懐中時計「スリー・ゴールド ブリッジ トゥールビヨン」の開発者であるコンスタン・ジラールによるもの。

10時位置にマイクロローター、2時位置に香箱を備え、6時位置には脱進機を搭載。時計の輪列が文字盤側に集まり、しかも左右シンメトリカルにレイアウトされていて美しい。その様子を最大限伝えるべく、ベゼルを排し、ドーム型風防で立体的なムーブメントを際立たせている。

2017年はジラール・ペルゴの「スリー・ゴールド ブリッジ トゥールビヨン」が世に出て150年を数えるアニバーサリーイヤーである。その記念年にまったく新たな“ブリッジモデル”が登場したのは、決して偶然ではない。

“ブリッジ”というディテールにブランドの姿勢を投影し、このヘリテージを一部のコンプリケーションモデルに留めず、いずれコレクション展開していこうとする意図があると見て間違いない。

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ネオ・ブリッジ オートマティック チタン

ムーブメント|自動巻き(Cal.GP08400)
ケース素材|チタン
ケース径|45mm
ストラップ|アリゲーター
防水|3気圧
価格|259万円(税別)

1966ケースに収納されたWW.TCワールドタイム

さらなる話題は、WW.TC(World Wide Time Control)である。これまでWW.TCは独立したシリーズとしてビッグサイズのケースに収められ、展開されてきた経緯を持つ。それをジラール・ペルゴの最もシンプルなラウンドケース1966に収めたのが今作だ。

ビッグサイズかつケース厚もあったこれまでのWW.TCから一転、ドレス感が際立つルックスに生まれ変わった新作は、知的なムードが漂い、カジュアル感が一掃されている。そのうえダブルリューズの特徴は残され、ひと目でジラール・ペルゴ製と分かるディテールも残されている。このダブルリューズは、9時位置のリューズでワールドタイムを、3時位置のリューズで時刻を修正・操作するシステムである。単機能ゆえに誤操作を起こしにくく、使い勝手に優れる利点を持つ。

まさに引き算の美学である。数あるワールドタイムのなかでも、エレガントさで際立っている。

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1966 WW.TC

ムーブメント|自動巻き(Cal.GP03300-0027/0022 ※SS/18KPG)
ケース素材|SSまたは18KPG
ケース径|40mm
ケースバック|シースルー
ストラップ|SSまたはアリゲーター
防水|3気圧
価格|142万円(左)、257万円(右) ※いずれも税別

Page03. ジラール・ペルゴ アントニオ・カルチェCEOインタビュー

GIRARD−PERREGAUX|ジラール・ペルゴ

現代のアールデコと言うべき、幾何学バランスの勝利を導く
その秘訣、そしてブランドの展望を聞く

ジラール・ペルゴ アントニオ・カルチェCEOインタビュー

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――「ロレアート」新コレクションによって、ブランドのどういう側面を訴求していくお考えですか?

ロレアートは、長い年月をかけて見出された1970年代のアイコンです。パワフルな個性と力強いアイデンティティを備えたこの時計は、ジラール・ペルゴというブランドの発展における中心的な存在なのです。ロレアート コレクションは、今回のSIHHでの発表以来、大きな成功を

収めています。時間の経過と共に進化し、進歩するように設計されたコレクションです。

――「ロレアート」のようなスポーツラグジュアリーモデルは、他ブランドの多くが参入しているホットなマーケットです。そのなかで、ジラール・ペルゴの優位性とは何ですか?

『ラグジュアリー スポーティーウォッチ』というカテゴリーにおけるジラール・ペルゴの強みは、ロレアートのように歴史的な正統性のあるアイコニックな時計が存在することです。

――次に、アイコンとしての「ブリッジ」に着目した経緯を教えてください。

1884年に、コンスタン・ジラールは、ヌーシャテル天文台から優秀賞を受賞した時計を作りました。そのムーブメントは、香箱と2番車とトゥールビヨンキャリッジを垂直方向に一直線に配列し、3本のブリッジで平行にとめた機構を特徴としていました。コンスタン・ジラールのアイデアは、機能を維持しながらデザイン面を強調し、これら3本のブリッジを配置することで、ムーブメントの芸術的な側面を開発することでした。機械式ムーブメントの3つのブリッジ(香箱

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用・歯車列用・ムーブメントの軸受け用)は、“共通の特徴”を示しますが、一般的に共通ではないのは、その部分に焦点をあてたことなのです。これは、時計業界では類を見ません。

コンスタン・ジラールは、同業者の時計師たちが一般的には放置していた要素に注目することを選びました。ムーブメントの構造に注力するのと同じぐらいに、部品の形にこだわったのです。したがって、ムーブメントは、ただの技術的な部品と見なされなくなり、その代わりに時計の全体的な美しさを即座に認識できる機能となります。文字盤にブランド名を記載する必要はなく、ムーブメントを一目見るだけで十分となるのです。過去1世紀以半にわたってジラール・ペルゴに、スリーブリッジという署名は、強烈なブランドを特定する特徴となりました。

――ネオ・ブリッジによって、どういうコンセプトを訴求していくお考えですか?

ネオ・ブリッジは、ジラール・ペルゴにとって重要な意味を持っています。なぜなら、トゥールビヨン機能未搭載の初のブリッジを備えた時計だからです。スリーブリッジのモデルに関する目的は、3種類の異なる価格帯の、現代的で伝統的な提案を基にした本格的な新たな製品群を作りだすことです。

ネオ・ブリッジは、基本的な時計の機構を備えた初のコンテンポラリーな分野です。3Hzという低振動で、慣性モーメント方式のテンプを備えたサイズの大きな機構を備えたこのモデルは、259万円(税抜)でご用意しています。

次に、我々は、もう2つの価格帯を完成させます。製品群ピラミッドの頂点には、トゥールビヨンがあり、その下の中央部分には別の複雑時計を配します。

――高級時計業界はいま、どこに向かっているとお考えですか?
そのなかで、ジラール・ペルゴのポジショニングをどう考えていますか?

市場は進化し、ブランドは適切な戦略を採用することでこの現実に適応しなければなりません。ジラール・ペルゴに関する限り、我々は5,000~10,000スイスフラン(約58万~115万円)という、以前にはなかった価格帯で、ステンレススチール製の時計を提案します。これまで以上に、正しいサイズ、適切な機能、正当な価格で、適正な製品を提供することが重要です。

――ジラール・ペルゴのアイデンティティとは何だとお考えですか?

ジラール・ペルゴは、品質の優れた時計製造ブランドです。ムーブメントへの仕上げにおけるディテールへの気遣いと、高振動のムーブメントやクオーツ、そして最近ではコンスタント・エスケープメントL.M.を含む数多くの特許が示す精度の探求など、時計の優雅さを象徴しています。

ジラール・ペルゴは、その歴史と価値と同様に、貴重な遺産によっても敬意を表されているブランドです。私たちは、225年の歴史を尊重すると同時に、新たな機構を開発する先見性を持ち合わせているのです。

問い合わせ先

ソーウインド・ジャパン

Tel.03-5211-1791

http://www.girard-perregaux.com/

           
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