創業130周年のアニバーサリーを来年に控え、表現方法をアップデート|CARL F. BUCHERER
CARL F. BUCHERER|カール F. ブヘラ
今年はカラバリ。しかもエッジの効いた
コンテンポラリー・シック!(1)
昨年のバーゼルワールドでは新キャリバーを発表、マニュファクチュールの本懐であるテクニカルな強みを発揮したカール F. ブヘラだったが、今年は一転。質実剛健を地で行くブランドが、艶やかなカラーコントラストを披露した。創業130周年という大切な節目を来年に控え、表現方法のアップデートが試みられたのである。
Text by TSUCHIDA Takashi(OPENERS)
ルツェルンの誇り、自由への賛歌を示すべく
今年はルックスに磨きをかける
こんなにも色艶やかなモデルをこのブランドが出すとは、いったい誰が想像しただろう? カール F. ブヘラといえば、中身で勝負する硬派マニュファクチュールとして時計通を唸らせてきたブランドである。そのメーカーが、今年は“色仕掛け”で攻めている。しかも一発目のカラーバリエーションとは思えない、パンチの効いた変化球。ブルーグレー文字盤にグレーのストラップを合わせるコンビネーション提案もグッドだ。
デザイナーが変わった? NO!
プロダクト開発者が変わった? NO!
戦略が変わった? こちらもNO!
製品開発担当副社長クルト・アレマン氏は「今年の新作も、カール F. ブヘラの既定ラインだ」と応える。これまでは時計好事家の趣向に合わせ、オーソドックスな外観に仕上げてきたが、これからは若い人たちやファッションに精通する人たちにもアプローチできるように、カラーリングで意図的に遊び心を加えたというのだ。ただし機械へのこだわりを捨てたわけではなく、色の遊びはあくまでエクステンションという位置づけである。
ローズゴールドのケースに、シャンパンカラーの文字盤を合わせるというのもシブい。シブさがヴィンテージ感を誘い、今どきのハードコアな表情を生んでいる。シャンパンカラーとローズゴールドとのカラーコントラストがまったく過剰とならず、むしろこのコンビネーションが定番ラインのひとつのように見えるのも、ベースデザインがオーソドックスであればこそだ。“ピカピカのヴィンテージ”と、言葉にすると不思議だが、それが時計界の今季トレンドでもある。
ブラックダイヤルにローズゴールドの組み合わせが、むしろ控えめに見えてくるのは、この3本を並べて見ているからだろう。サンレイ仕上げとサテン仕上げを巧みに使い分けた文字盤デザインに、楔形インデックスの古風なディテールがよく似合っている。
Manero Flyback
マネロ フライバック
ムーブメント|自動巻き(ラ・ジュー・ペレ社がカール F. ブヘラのために製造)
クロノグラフ|フライバック式(クロノグラフ針を止めずに、リセットボタンを押せる特別仕様)
サブダイヤル|スモールセコンド(左)、30分積算計(右)
ケース素材|SS(左)、18Kローズゴールド(中央、右)
ケース径|43mm
ケースバック|シースルー
ストラップ|アリゲーター
防水|3気圧
価格|103万円(左)、252万円(中央、右) ※いずれも税別予価
Page02. ルツェルンの湖の青、ルツェルンの森の緑
CARL F. BUCHERER|カール F. ブヘラ
今年はカラバリ。しかもエッジの効いた
コンテンポラリー・シック!(2)
ルツェルンの湖の青、ルツェルンの森の緑
マニュファクチュールムーブメントを搭載する「マネロ パワーリザーブ」に登場した新色ダイヤルはこの2色。鮮やかなブルーとグリーンのダイヤルである。サンレイ仕上げの光沢が際立つ文字盤のため、まるでシルクのような印象をもたらしているところが興味深い。ブルーもグリーンも、ビジネスコード内の色彩のため、これらをウィークデイで使用することは、何ら問題はない。むしろ同系色のネクタイを合わせると、スタイリッシュさが際立つはずだ。クラシカルな文字盤をビビッドカラーで引き立てるのもまた、現代的な遊び心である。
そしてストラップまでも同系色。艶を備えたカーフ素材である。ステッチ糸を同色に染め、レザーに馴染ませている徹底ぶりも見事。こだわりは深く。それがカール F. ブヘラだ。
さて、来年に創業130周年を迎えるカール F. ブヘラだが、それは前身のブヘラ社を含めてのカウントである。ブランドを刷新してカール F. ブヘラと名乗るようになって15年。そう考えるとリニューアルしてからは、それほど多くの時は経っていない。ゆえに「私たちはスタンスを変えるつもりはないし、変えるべきタイミングでもない」と、クルト・アレマン氏。ルツェルン生まれのこの知る人ぞ知るブランドの伝統は、ビジネスをいたずらに拡大せず、少量生産でも大切に作っていくことと言う。
クルト・アレマン氏は、こんな話を持ち出した。
「ルツェルンは、スイス建国の地であり、市民はそれを誇
りに思っています。ルツェルン市民に独立心が強いのは、そのためです。そしてルツェルン市民のフリースピリットを色濃く受け継いでいるのが、この地で代々暮らしてきたブヘラ家であり、その風土で歴史を積み重ねてきたカール F. ブヘラなんです」
マーケティングに左右されず、時計産業の伝統に則ったアイテムに集中する。その姿勢を崩さず、昔ながらの時計作りを次世代に伝えていく。カール F. ブヘラのブランドポリシーは、そのままクルト・アレマン氏の生きざまと重なって見える。
Kurt Allemann Executive Vice President Product
クルト・アレマン製品開発担当副社長
22歳でルツェルンへ、時計師としてブヘラに就職。前身のブヘラウォッチの時代から製品開発に携わる。2017年3月で勤続40周年を迎えた。今年の新色およびその組み合わせも、すべてクルト氏によるプロジェクトである。
Manero PowerReserve
マネロ パワーリザーブ
ムーブメント|自動巻き(自社製造。Cal.CFB1011)
機能|パワーリザーブ表示、ビッグデイト、曜日表示
パワーリザーブ時間|約55時間
ケース素材|SS
ケース径|42.5mm
ケースバック|シースルー
ストラップ|カーフスキン
防水|3気圧
限定数|各世界限定188本
価格|各123万円(税別予価)