夢中になったあの時代、あの衝撃が、いまを生きる僕らを鼓舞する|ROMAIN JEROME
ROMAIN JEROME|ロマン・ジェローム
ハイエンドなウォッチメイキングを背景に
ROMAIN JEROMEは腕上の
エモーショナルなアートとなる(1)
ロマン・ジェロームの2017年のハイライトは「ドンキーコング」。任天堂が1981年にアーケードゲームとして世に送り出し、1983年にはファミリーコンピューターに移植されて世界中でヒットした作品である。ジグザグな8bitキャラクターは、エナメル技法で描かれている。そう、スイスの職人が丁寧に樹脂を塗り重ねるコールドエナメル技法で表現されているのだ。
Text by TSUCHIDA Takashi(OPENERS)
1980年代の伝説が、©Nintendo.とのコラボレーションにより甦った
パックマン、テトリス、スーパーマリオ、スペースインベーダーと、ここ数年、アーケードゲームの世界観を文字盤に表現してきたロマン・ジェロームだが、今年はマリオがはじめてゲームキャラクターとして登場した「ドンキーコング」が発表された。
このマリオ、最初から名前があったのではなく、当初は“ジャンプマン”と形容されていたようだ。障害物をジャンプでかわし、足場を渡って囚われた姫を助ける内容は、その後のゲーム文化の礎となり、ゲームにストーリー性をもたらしたことでもエポックと考えられている。
キャラクターはすべてコールドエナメル製法で描かれている。3層のピクセルのなかに樹脂を塗り、乾かしているのだ。塗装剤が枠線のなかに盛られているのがまたアナログでいい。文字盤に描かれたキャラクターは動きはしないが、見つめているとゲームに夢中になった時代の記憶が呼び覚まされてくる。
ロマン・ジェロームのクリエイティブディレクター・マニュエル・エムシュ氏は、このブランドを「エモーショナルなアート」と形容する。時計が必ずしも必要とされていない現代において、だからこそ自分たちの“作品”にはストーリーを込めたいと訴える。
1972年生まれのマニュエル・エムシュ氏は、14歳で初めてアメリカを訪れた。交換留学生となった姉のホームステイ先を訪ねるためだった。
「その時の記憶が、私にとっては鮮明に心に残っているんです」と、エムシュ氏。憧れのテレビゲーム、ポップコーンの甘い香り、ティーンエイジャーだけのドライブ。スイスの片田舎に育った彼にとって、何から何まで、眩しくて仕方がなかった。
そのテレビゲームがマリオ。マリオはエムシュ氏にとってのフリーダムの象徴でもある。
「僕にとっての時計とは、古き良き記憶を思い起こさせるエモーショナルなもの。単に時刻を告げる道具ではなく、記憶を辿るという意味で、むしろ時を止めるような道具です」
現代の高級腕時計とは、すなわち精巧さを愛でる精密機械であり、ステイタスの象徴である。それらは、どのブランドの腕時計にも共通する事実。そして時計でストーリーを語るというのも多くのブランドが手がけていることだ。ただしロマン・ジェロームほど、アップトゥデイトな角度から鋭角に切り込んでくるブランドはない。
しかも、エムシュ氏といえば、かつてスウォッチ グループにおいてジャケ・ドローという古典派なブランドを再興させた立役者でもある。真逆とも言える両ブランドだが、エムシュ氏は、変わらぬ手法で采配を振る。古典的なものと、現代的なもの。インスピレーションは異なっても、彼が時計に込めるストーリーの熱量は同じだ。
RJ X ドンキーコング
Ref.|RJ.M.AU.IN.015.01
キャリバー|自動巻き。RJ001-A
パワーリザーブ|最大42時間
ケース素材|ブラックPVD加工のチタニウム。ケースバックにドンキーコングのメダリオン
ケース径|46mm
ベゼル|ブラックPVD加工のSS
ストラップ|ブラックラバー
防水|3気圧防水
限定数|81本(世界限定)
価格|214万円(税別)
Page02. いまにもマグマが噴出する寸前。パワー装填フルチャージ
ROMAIN JEROME|ロマン・ジェローム
ハイエンドなウォッチメイキングを背景に
ROMAIN JEROMEは腕上の
エモーショナルなアートとなる(2)
いまにもマグマが噴出する寸前。パワー装填フルチャージ
「エイヤフィヤトラヨークトルDNA バーン ラバ」は、地球のエネルギーを高級機械式時計に表現したモデルだ。シリーズ3作品目となったこのモデルのイメージは、2010年春にヨーロッパ全空域を閉鎖に至らしめたアイスランドの火山、エイヤフィヤトラヨークトルの歴史的な大噴火である。
たぎるマグマを示す溶岩亀裂部の赤、黄色は、コールドエナメルによる表現。オニキスベースのプレートに、エイヤフィヤトラヨークトルで実際に採取した溶岩をあしらい、立体的なベゼルで雰囲気を高めている。ベゼル同様に凹凸のあるストラップは、トード(ヒキガエル)製だ。
ロマン・ジェロームは、人類が遭遇した語り継がれるべき事象のDNAを腕時計に取り込んできた。そのジャンルは多岐にわたり、陸・海・空(宇宙)、そして前ページのようなコラボモデルにまで至る。しかし、これらのモチーフを通じて、ブランドが訴えているのはストーリーである。力強さ、カッコよさ、かつて熱狂した対象、言葉を重ねずとも直感で伝わる熱き物語だ。
往年のウォッチコレクターにとって、ロマン・ジェロームの世界観は理解を超えているかもしれない。それでも「時間を掛けて丁寧に説明していけば、我々の価値観は必ず理解してもらえるものと信じている」と、マニュエル・エムシュ氏。
彼の視線の先は、おそらくは未来の時計ファンに向けられている。腕時計というアイテムの存在意義が揺れ動く中で、彼は自分の直感に従い、まっすぐに将来を見つめている。ブレないことは、とても強力なのである。
マニュエル・エムシュ
1972年スイス生まれ。スウォッチ グループにてジャケ・ドローのブランド再構築を行い、ブランドを復権と再生に導いた。また彼の手掛けたグラン・セコンド等は、数々のウォッチデザインアワードを受賞している。2010年にウォッチメイキングの世界に新風を吹き込むべく、2004年創立の若いブランド、ロマン・ジェロームのクリエイティブディレクターに就任。斬新な作品の数々を、卓越したイメージ戦略と共に世に送り出している。
エイヤフィヤトラヨークトルDNA バーン ラバ
Ref.|RJ.V.AU.002.02
キャリバー|自動巻き。RJ002-A
パワーリザーブ|最大48時間
ケース素材|ブラックPVD加工のSS。ケースバックにエイヤフィヤトラヨークトルのエングレーブ
ケース径|46mm
ベゼル|立体ストラクチャーとしたブラックPVD加工のSS
ストラップ|ブラックトードレザー
防水|3気圧防水
限定数|99本(世界限定)
価格|344万円(税別)