Cartier LOVE|カルティエ|絆の証、ラブ コレクション
絆の証、ラブ コレクション
1969年にニューヨークで生まれたカルティエのラブ ブレスレットは、愛の証として多くの恋人たちの心を捉えた。 ビスをとめる行為で愛を確かめ合うこのブレスレットは、今ではカルティエのアイデンティティを語る重要なコレクションとなった。
カルティエならではの愛のマニフェストをラブ コレクションに見る。
文=野上亜紀
1969年、最初のラブ コレクションの誕生
カルティエのラブ コレクションは、1969年にカルティエ ニューヨークのデザイナーであるアルド・チプロの手によって生まれた。
学生のころから歴史に造詣の深かったチプロの初期作品には、古代の伝説をモチーフとした作品が多く見られる。
このラブ コレクションもまた、彼ならではの創作スタイルの流れを汲むものだ。
ある日チプロは、古代の戦士が自分の妻に身につけさせて互いの愛を確かめた“貞操帯”のヒストリーに興味を持つ。
そしてそこから「女性の腕をロックアップする」ブレスレットのデザインを思いついた・・・・・・。
それがラブ コレクションの始まりである。
確かにジュエリーは、互いの忠誠心を語るための大切な証として、古来から恋人たちの絆を結んできた。
ふたつの輪をひとつに繋げたリングや恋人の大切な思い出を忍ばせたペンダントなど数限りない方法で表現されてきたのだ。しかし恋人たちの甘い愛のモチーフに、あえて貞操帯を選んだチプロの発想力には驚かされる。
この2ピースの分解式ブレスレットはチプロが当時感じていたモダニティの表れでもあるのだ。
“表現者”を惹きつけた束縛のブレスレット
「彼氏・彼女のためのもの、自分のためのものではない」と銘打たれたラブ ブレスレットはエリザベス・テーラーと
リチャード バートン、ソフィア・ローレンとカルロ・ポンティ、メイ ブリットとサミー デイビス ジュニアなど、
多くのアーティストたちの心を捉えた。
「ラブ ブレスレットほど愛してくれるの?」とささやかれるまでのブームとなり、その後もこのビス モチーフはたくさんのバリエーションへと姿を変えてきた。
特筆すべき点は、ミュージシャンやアクターなど、多くの“表現者”がこのジュエリーに魅せられたという点であろう。彼らは相手のブレスレットのビスを留めるという、この秘密めいた行為にこそ惹かれたのかもしれない。
ただ単に腕にはめるのではなく、ビスを留めて鍵を預けるというひと手間があってこそ、互いの愛は言葉がなくとも雄弁に語られるからだ。
行為から生まれた愛のマニフェスト
このジュエリーには、そうした小さな行為から生まれた無言のマニフェストを感じる。
以前カルティエのデザイナーにインタビューをした際、デザインの話がいつしか女性の生き方、歩み方のテーマへと変わっていったのが印象的だった。
ジュエリーがいかにして身に着ける者の強い意志に成り得るのかという点に、デザイナーが心を砕いていたからだ。
どう愛せるか、そしていかにして自分の思いを他者に伝えることができるのか──
このラブ コレクションには、こんな密かな主張が込められているように思われる。
カルティエはラブ コレクションをテーマにしたチャリティを絡めたキャンペーンを2007年から行っている。
毎年さまざまなアーティストや文化人が参加するこのチャリティを絡めたキャンペーンでは、本来のラブ コレクションのテーマである男女の束縛を原点に、普遍的な愛のテーマへと進化を遂げたのだ。
共通のテーマは、“HOW FAR WOULD YOU GO FOR LOVE”。
今年はこの問いかけに対して12人のミュージシャンがオリジナルの音楽で答えている。
ジュエリーという甘い夢の中に、愛の難しさをも問いかけるキーワードだが、人々はこのチャリティに触れることでいかにして自分たちの愛に向き合い、それを表現するのか。その方法を探すチャンスをカルティエは与えてくれている。