My Own Watch|松浦俊夫さんが愛用する時計とは
第3回|松浦俊夫 × オメガ スピードマスター
傷ひとつにも愛着のある、いつも身に着けている時計
日本のクラブカルチャーを築いてきた先駆者、松浦俊夫氏。DJからリミックス、そして海外アーティストのエージェントにいたるまで、世界中で精力的な活動を重ねる松浦氏に、日々をともに過ごす愛用時計について聞いた。
文=OPENERS写真=西田周平
松浦氏が愛用している時計、それは1989年製のオメガ「スピードマスター」アポロ11号限定モデルだ。毎日を共に過ごした証である傷ひとつにも愛着がわくほど、松浦氏がこの時計に寄せる思いは深い。
「いつも身につけています。そのためボディは傷だらけですが、それも人間でいえば、“しわ”のようなもの。使い込むほどにさらに愛着が沸き、何度もオーバー・ホールをして使いつづけています。きっともう直せないといわれるまで着用するでしょうね」
この時計は、古くから親交のあるファッション・デザイナーから譲り受けた。あるとき彼が腕にしているのを目にとめたところ、数年後、それを覚えてくれていたデザイナーが松浦氏に譲ってくれたという大切な思い出をもつ時計だ。松浦氏はこの一本を「今の時計にはない不変的でシンプルなデザインが美しい」と語る。
「DJという仕事柄、手もとを使うので、あまりいい時計をしていると壊してしまうことがあるんですね。この時計は“質実剛健”というか、タフなスタイルとでもいうのかな。現代的なスポーツ感覚をもっていますし、カジュアルでもシックでも、どんなスタイルにもフィットします」
所有している時計は計10本。シーンによってはほかの時計と使い分けることもある。
「『セイコーパワーデザインプロジェクト』の深澤直人さんがデザインした時計も、気に入ってよく着けています。ミニマムなデザインに“機能美”を感じます。ブラックとホワイトの時計ですが、自分の着る服はモノトーンが多いので愛用しています。少し“艶”を出したいときにはスピードマスター、というように使い分けていますね」
ブランドは気にしない、出合いを大切にした時計選び
松浦氏は1990年代、G-shockのデザインを手がけたこともある。ケースバックに、当時活動をしていた「U.F.O」3人のモチーフを刻んだデザインは海外でも人気を博し、ロンドンのセレクトショップに松浦氏自身が持ち込んだ思い出もある。松浦氏にとって、時計は“アクセサリー”ではなく、愛着を寄せて“使う”もの。そんな松浦氏にいまほしい時計をたずねると「アンティークのダイバーズウォッチ」という答えがかえってきた。
「いま選ぶとしたらダイバーズですね。仕事中、比較的乱暴に動くタイプなので(笑)。あまり高級な時計には興味がありません。繊細なデザインの時計はもう少し年齢を重ねてからでもいいのかな、と思っています。1960年ごろのオメガのシーマスターなどがいいですね。アンティークといえばロレックスかもしれませんが、みんながしているものはむしろ避けているところもあります。時計ばかりではなく、自分が選ぶものについては、すべて“出合い”が大切だと思っています。身に着けてしっくりくるもの、自分の手にある姿が浮かぶものに出合ったとき、きっと手に入れるんでしょうね」
松浦俊夫|MATSUURA Toshio
DJ&音楽プロデューサー。世界中のクラブやフェスティバルでDJ活動しながら、その世界を舞台に培われた感性とネットワークを駆使し、音楽制作、イベント・プロデュース、コンサルティング、クリエイティヴ・デレクション、海外アーティストのエージェント業務などマルチに活動中。現在Inter FM“Tokyo Moon”のパーソナリティも務めている。
http://www.toshiomatsuura.com
http://openers.jp/culture/matsuura_toshio/index.html