旅賢人の麗しきホテル選びvol.4|ブリストル
LOUNGE / TRAVEL
2015年2月13日

旅賢人の麗しきホテル選びvol.4|ブリストル

第4回 フランス ル・ブリストル

アール・ド・ヴィーブルを求めた至高の「パラスホテル」(1)

わずか2年前まで、フランスには5ツ星のホテルがなかったことをご存知でしょうか。それまでの基準では4ツ星が最高ランク。それを見なおしてあらたに5ツ星ホテルを認定したのが2009年。そして、ここからがフランスならでは。等級では語れない、フランスの歴史をつづる華麗なる伝説の名門ホテルのための最高位「パラス」を設立。現在、その名誉を与えられているのはわずか8軒。そのひとつが、パリの『ル・ブリストル』です。

文=寺田直子
写真=今井聡志

パリの社交場として時を刻む

大統領官邸エリゼ宮を中心に、エルメス、ランバンなど高級ブランドのサロンが並ぶフォーブル・サントノーレ通りは、パリでも上質な時間が流れるエリア。石畳の道を歩くエグゼクティブやマダムたちも最高に上質なスタイルでパリの香りをまとい、エレガントです。そのフォーブル・サントノーレにこれもまた優雅にたたずむのが、『ル・ブリストル』。19世紀初頭の伯爵邸宅をそのまま使用して、1925年に開業。以来、パリを代表する高級ホテルとして愛されつづけてきました。ブリストルの名前は18世紀の英国の旅行家で、ホテルの品質に非常にこだわったといわれるブリストル伯爵にちなんで。彼の名に恥じない、上質なホスピタリティと最高級の空間で21世紀のジェットセッターたちを出迎えます。

最近はコンテンポラリーでグラマラスさを強調した高級ホテルも少なくありませんが、『ル・ブリストル』のスタイルはどこまでもエレガント。ベルマンたちが立つエントランスを入れば、大理石のフロアに流れるようなドレープのカーテンと、そこに絶妙なバランスで配されたアンティークな調度品や絵画の数かず。その麗しき空間を照らすのはきらめくクリスタルのシャンデリア。経験の豊かさを物語るレ・クレドール(黄金の鍵)のバッジを着けたベテランコンシェルジュをはじめ、レセプションを仕切るスタッフのたたずまいにも凛とした気品が漂います。そして、「ル・ブリストルへ、ようこそ」という言葉と、柔らかい笑みによってそれまでのピンと張りつめた緊張感は一瞬にしてとけ、最上級のもてなしを享受するゲストのひとりとしてホテルの歴史に刻みこまれます。

高級ホテルでもカードキーが主流の今でも、手渡されるのはどっしりと重みのあるキー。カチリとノブをまわし、とおされたゲストルームにも『ル・ブリストル』のエッセンスが。クリーム色を基調にスカイブルー、ゴールドなどをあしらった室内はヨーロピアンエレガンスそのもの。窓の外を望むと、ル・ブリストルの象徴でもあるフレンチ庭園。完璧なまでの美しさにため息がもれます。

第4回 フランス ル・ブリストル

アール・ド・ヴィーブルを求めた至高の「パラスホテル」(2)

サルコジ大統領も御用達、グルメなダイニング

ル・ブリストルの魅力のひとつに、レストランがあります。メインダイニング「ガストロノミー・レストラン」は抜群の技術力をもつ総料理長エリック・フレション氏による伝統の味に革新的なスタイルをくわえた個性あるフレンチを提供し、輝けるミシュラン3ツ星を獲得。エリゼ宮が近いこともあるのでしょう。サルコジ大統領もフレション氏の料理をこよなく愛する顧客のひとりです。冬と夏でダイニングシーンが変わり、夏は端正な中庭を望む開放感ある空間に、冬場はタペストリーが飾られた中世のおもむきを感じさせる重厚な雰囲気に。クリエイティブな料理はもちろん、食後にたっぷりと登場するシェフ・パティシエ、ローラン・ジャナンによる洗練されたデセールの数かずもお楽しみのひとつです。

そして、あたらしく誕生したのが、よりカジュアルな雰囲気のビストロスタイルの「114 フォーブル」。もっと気軽にホテルを利用してほしいという願いから、誰もが親しみやすいあたたかみのあるデザインの空間に仕上がり、料理も3コースの手軽なスタイルでお値段もリーズナブル。一流ホテルの味とサービスを堪能しつつも、コストパフォーマンスなお値段に抑えられています。

第4回 フランス ル・ブリストル

アール・ド・ヴィーブルを求めた至高の「パラスホテル」(3)

わずか8軒のみ、最高ランク「パラス」とは

ル・ブリストルが認定された「パラス」とは、どのようなものでしょうか。2009年にホテルの格付けに5ツ星がくわわり、その後、2010年11月に「パラス」の創設が発表されました。選出基準は、すでに5ツ星を獲得しているほか、設備、サービス、営業年数などの基準をクリアしたホテルが条件。そのうえで、ATOUT FRANCE(フランス観光開発機構)が第1次審査をおこない、アカデミー・フランセーズ会員、ジャーナリスト、建築家、歴史研究家、ビジネス旅行業CEOなど各界の10人の有識者からなる審査委員会が2次審査をおこない決定。観光担当大臣によって授与されます。
審査委員会での主観的評価基準は、「立地」「ホテルがもつ歴史・由緒、格式」「サービスの個別化、迅速性、正確性、恒常性」、「社会や環境への配慮」など。つまり、フランスの文化を象徴するアール・ド・ヴィーブル的な存在であれ、ということでしょう。

現在、「パラス」に認定されているのは、『ル・ブリストル』のほかに、パリでは『ル・プラザ・アテネ』『ル・ムーリス』『パーク・ハイヤット・パリ・ヴァンドーム』が。そのほかの地域では、ビアリッツにある『ホテル・デュ・パレ』。クルシュヴェルにある『ホテル・レ・ゼレル、ル・シュヴァル・ブラン』。サン・ジャン・カップ・フェラにある『ル・グラン・トテル・デュ・カップ・フェラ』。あまたの名ホテルが存在するフランスでもわずか8軒のみ。今後、どのようなホテルが「パラス」に名前を連ねるか、ホテルファンとしては実に楽しみなのです。

           
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