MUSIC|ザ・ヴァージンズが4年ぶりに再始動!
LOUNGE / MUSIC
2014年12月9日

MUSIC|ザ・ヴァージンズが4年ぶりに再始動!

MUSIC|ドナルド・カミング率いるザ・ヴァージンズが4年ぶりに再始動!

新作『ストライク・ジェントリー』が聴かせるシティ・ロック

ニューヨーク発のロックバンド、ザ・ヴァージンズ(The Virgins)が帰ってきた。4年ぶりの新作『ストライク・ジェントリー』を携えて。ザ・ストロークスのフロントマン、ジュリアン・カサブランカスに「なんて最高なバンドがニューヨークにいたんだ!って驚いたよ」と言わしめた、彼らのサウンドとは?

Text by TANAKA Junko (OPENERS)

ボーカル以外のメンバーをフル・チェンジ

人気ドラマ「ゴシップガール」にも起用されたキャッチーな1曲「リッチ・ガール」で音楽ファンの心をつかんだのち、2009年にセルフタイトルのアルバムでデビュー。ローファイで荒削りなサウンド。都会っ子ならではの“やさぐれ”感。それでいてハイセンスなアート感覚……。そんな絶妙なバランス感覚を携えたザ・ヴァージンズは、ニューヨーク・トライベッカ育ちのフロントマン、ドナルド・カミングを中心に結成されたロックバンドだ。

ファースト・アルバムからの1曲「リッチ・ガール」

気鋭の写真家ライアン・マッギンレーを親友に持ち、バンド結成前にはモデル/俳優をやっていたというカミングの交友関係も相まって、ニューヨークのモデルやセレブの間で一気に火が付いた彼ら。フジロックで来日も果たしたが、長いツアーで疲弊してしまった結果、活動休止状態に。このまま“一発屋”で終わってしまうかとおもわれた矢先、嬉しいニュースが飛び込んできた。ザ・ストロークスのジュリアン・カサブランカスが設立した新レーベル「カルト・レコーズ」の第1弾アーティストとして、待望のセカンド・アルバムをリリースするというのだ。そのニュースには、なんとカミング以外のメンバーをフル・チェンジしたというサプライズまで付いてきた。

4年のブランクを経て辿りついたアルバム『ストライク・ジェントリー』のサウンドとは? そして、再始動する場所として「カルト・レコーズ」を選んだ理由とは? カミングに話を聞いた。

──どんな4年間を過ごしていたのですか?

いや、困ったな……。いまここで4年間の出来事を振り返るなんて、とてもじゃないけど無理だよ。でもこれだけは言える。精神的に一番辛かった時期を乗り越えて、人間的にも音楽的にも一歩成長した自分になったってね。今回のアルバムでは、前作にはなかったあたらしい一面を感じてもらえるんじゃないかな。

──なにをきっかけに再始動することになったのでしょう。

音楽はぼくが物心ついたころから身近にあったものだし、ブランク期間もずっと演奏はつづけていたんだ。いくつかバンドも作ったしね。デビューを目指すような類いのものじゃないけど。それからプライベートで辛い出来事があって、精神的に参ってしまった時期があったんだけど、不思議なことに、ときをおなじくしてまた曲が書けるようになったんだ。

──それにしてもメンバーをフル・チェンジというのは驚きました。いまのメンバーとの出会いはどこで?

長年ぼくの友人でありミュージシャン仲間だった奴ばかりだよ。最近は遊びでカントリー・ミュージックをカバーしたりして、一緒に時間を過ごすことが多かったんだよね。それがすごく楽しかったから、あたらしくザ・ヴァージンズを作ろうってなったときに彼らと組むのが自然におもえたんだ。

──今回のアルバムは、ザ・ストロークスのジュリアン・カサブランカスが主宰する「カルト・レコード」からリリースされますね。どのように彼と出会って、レーベルと契約することになったのですか?

共通の友人がジュリアンに(レーベルがないことも含めて)ぼくたちの状況を話してくれたみたい。去年の夏の終わりごろの話だよ。アルバムに収録する曲のほとんどは、その時点でほぼレコーディングを終えていたんだけど、そのあとのことはまったくノープランだったんだ。だからジュリアンから、一緒に手を組む可能性も含めて、一度会ってみたいと話があったときは、なにか面白いことがはじまる予感がしてワクワクしたのを覚えているよ。で、じっさいに会ってみるとものすごくいい感じで、そこには大きなレーベルとは比べ物にならないような、ユニークな体験が待っているって確信したんだ。

ほとんどの曲をライブ形式でレコーディング

──なぜ『ストライク・ジェントリー(=優しく火をつけて)』というタイトルを付けたのでしょう。

アルバム全体の空気感を感じさせるタイトルにしたかったんだ。手に取った人それぞれに好きなように解釈してもらいたいとおもっているけど……“ストライク・ジェントリー”っていう言葉そのものは、紙マッチの後ろに書かれていたメッセージから取ったんだ。

『ストライク・ジェントリー』からの先行シングル「フラッシュバックス、メモリーズ、アンド・ドリームス」

──あなたが考える、ファースト・アルバムと今回のアルバムとのちがいはなんでしょう。

ファースト・アルバムをリリースしてから本当にいろいろなことがあって、ぼくも変化せざるをえなかった。今回のアルバムは、そうした時期を経て辿り着いた、いまの心情を反映したものにしたかったんだ。そういう意味で、とてもパーソナルな作品になっているとおもう。あとは、あたらしく加わってくれたメンバーの演奏を自然な形で収録しているってことかな。ほとんどの曲をライブ形式でレコーディングしているんだ。

なかでも「フラッシュバックス、メモリーズ、アンド・ドリームス」は、そのライブ感を強く感じてもらえる1曲だとおもうよ。こんな風に即興的に音楽を作るのがこんなに楽しいなんてね。それに気づけたことは今回の収穫だったし、これからもこの方法をつづけていきたいとおもってるよ。


長い長い内省の旅を終えて、再び私たちの前に姿を見せたドナルド・カミング。信頼のおけるレーベルと仲間という“心の故郷”を得た彼が、あらたにどんな道を歩みはじめるのか。新生ザ・ヴァージンズのこれからに期待したい。

MUSIC|ザ・ヴァージンズ『ストライク・ジェントリー』 02

『ストライク・ジェントリー』(日本盤)
ザ・ヴァージンズ
2205円(XQJH-1022)
全10曲
CULT RECORDS/MAGNIPH
2013年3月13日(水)発売
http://www.cultrecords.com/
http://www.magniph.com/

           
Photo Gallery