MUSIC|シカゴから届いたインディーロックの進化形『ギブ・イン』
MUSIC|オン・アン・オン『ギブ・イン』
シカゴから届いたインディーロックの進化形
米シカゴを拠点とするオン・アン・オン(On An On)の3人。彼らから届いたファースト・アルバム『ギブ・イン』には、淡い郷愁、広がりのあるバンド・サウンド、そして高揚感がぎっしり詰まっている。インディーロックファン必聴、涙せずにはいられない!
Text by TANAKA Junko (OPENERS)
3人で踏み出したあらたな音楽の冒険
2012年7月、あるバンドがホームページ上で解散宣言をした。悲しいかな、どんなバンドにもいつか終わりは訪れる。理由はさまざまだが、彼らの場合、いわゆる性格の不一致というよりは、“バンドとして、どこか歯車が合わないようになった(something wasn’t right in the band)”ことによる苦渋の選択だった。通算4枚目となるアルバムのレコーディングを目前に控えた時期。米シカゴを拠点に、2003年から活動していたスキャッタード・トゥリーズ(Scattered Trees)という5人組バンドの話だ。
苦楽を共にした仲間に別れを告げ、前を向いて歩きはじめようとしたとき、リード・ボーカルのネイト・イースランド、ベーシストのライン・エストウィング、キーボード・プレイヤーのアリッサ・イースランドの3人は、おなじ方向を向いていることに気がついた。オン・アン・オン誕生の瞬間である。まったくあたらしい気持ちで、自分たちが本当に作りたい音楽だけを作ろうと心に誓った彼ら。スキャッタード・トゥリーズ時代からのプロデューサー、デイブ・ニューフェルドを迎えてスタジオ入りした。
そこで生まれたファースト・アルバム『ギブ・イン』には、1曲目の「Ghosts」を筆頭に、ロックファンならだれもが唸るような、極上のドラムとサウンドが散りばめられている。これはニューフェルドの尽力によるところが大きい。なにを隠そう、彼はブロークン・ソーシャル・シーン(Broken Social Scene)、スーパー・ファーリー・アニマルズ(Super Furry Animals)、ロス・キャンペシーノス!(Los Campesinos!)といった、2000年代を代表するバンドの作品を手がけてきた人物なのだ。
先行シングルの「Ghosts」は、米人気ドラマ「グレイズ・アナトミー」に使用されたほか、DFAレコードの看板アーティスト、ヨット(YACHT)がリミックスを手がけ、ちょっとした話題となった。去る1月23日、世界に先駆けて発売された日本盤は、このリミックスを収録した豪華版となっている。