MUSIC|メロディーズ・エコー・チャンバーが奏でる極上のドリーミー・サウンド
MUSIC|南フランスから飛び出したインディー界の新星
デビュー・アルバム『メロディーズ・エコー・チャンバー』リリース!
極上のドリーミー・サウンド
南フランス出身の女性アーティスト、メロディ・ポシェットによるソロ・プロジェクトがいよいよ本格始動。クラシック音楽の素養を持つインディー界の新星は、素朴で躍動的、そしてどこかクラシカルという独自の世界観が漂うセルフタイトルのデビュー・アルバム『メロディーズ・エコー・チャンバー』を完成させた。
Text by TANAKA Junko (OPENERS)
クラシック音楽の素養を持つインディー界の新星誕生!
スモーキーかつセクシーな歌声。そしてロマンチックな容姿──。まさに“フレンチ・ポップ・ガール”を絵に描いたような出で立ちのメロディ・ポシェット。だが、世界中のインディー・ファンが注目しているのは、そうした彼女の容貌だけではない。聴いている者を夢中にさせ、いつしか濃厚な世界の虜にしてしまう、その新人らしからぬ深みを持った音楽性だ。
クラシック音楽の素養を持つ彼女。音楽学校で学んだ学生時代は、オーケストラに所属し、ヴィオラの練習に明け暮れていたという。そうした経歴を聞けば、独特の音楽性にも合点がいく。特に今回のアルバムでは、クラシックの要素を積極的に取り入れたいと考えていたようだ。
「いつかクラシックの要素を取り入れた音楽をやりたいとずっとアイデアを温めていたの。できれば厳格で抑制の効いた音楽をやりたいとおもっていたんだけど、いざレコーディングをはじめてみたら、制約から逃れて、自分が考えていたよりも極端ではないサウンドや構成へとシフトしちゃった。多分、本能がそうさせたんだとおもう」
正反対のふたりが生み出した音
脇道へそれたサウンドや構成をまとめあげたのは、オーストラリア・パース出身のバンド、テーム・インパラのケヴィン・パーカーだ。クラシック音楽で育ったポシェットと、重いベースラインとガサガサした電子音でサイケデリック・ロックを奏でるパーカー。まったく異なるバックグランドを持ったふたりだが、曲作りではその個性の違いが功を奏したようだ。
「ある意味、正反対だから、お互いにないものを補完しあえたとおもう。ケヴィンのおかげで、それまでの作品を、いったん破壊することができて、そこからはじめてバラバラになったものを、ひとつずつクラシックとサイケデリックとワイルドさがちょうどいいバランスで成立するように組み合わせていったの」
実生活では恋人同士でもある彼ら。最高に耳馴染みのいいユルくてシンプルなギター・ラインと、儚げでロマンチックなフックは、ピュアなポップさを湛えながら、同時にエッジーで危うい魅力を放つ。集中して耳を傾けていると、曲と一緒にどこか遠くへと持っていかれるような高揚感に襲われるのだ。そして、アルバム全体を包み込むどこかアンニュイさには、母国語のフランス語と英語を自由自在に行き来する歌詞が一役買っている。
「正直、フランス語の曲をつくって歌ったのははじめてだったの。以前はあえてやりたいとおもわなかった。どうもしっくりこなくって……。英語の音楽ばっかり聴いていたし、英語の方が馬鹿げたこともすんなり歌えるのよね。もちろん大好きなフランス人のシンガーもたくさんいて。だからかな、先人には勝てない気がして歌えなかった。それが(南仏キャヴァレールにある)祖父のビーチハウスでひとりレコーディングをしていたら、自然とフランス語でメロディーを口ずさんでいたの。すごくシンプルで、ある意味、幼稚ともいえる歌詞をね。でも、それがとっても自然なことにおもえたのよ。多分、自分にとって、ちょうどいいバランスだったんじゃないかしら」