連載|須永辰緒の選盤流儀 第4回|第4回目にしてジャズ界の真打ちをセレクト
連載|須永辰緒の選盤流儀 第4回
第4回目にしてジャズ界の真打ちをセレクト
連載第4回目となる今回は、10月上旬に恵比寿ザ ガーデンホールにて3日間にわたり開催され、須永氏自身もDJとして参加した世界三大ジャズフェスティバルの日本版「Montreux Jazz Festival Japan 2016(モントルー・ジャズ・フェスティバル)」の様子をお届け。極めた者にしか分からぬ感動をレポートしていただいた。
Text by SUNAGA Tatsuo
夏の終焉にふさわしい舞台での涙
過日の10/7から10/9までの三日間、恵比寿ザ ガーデンホールにて開催された「Montreux Jazz Festival Japan 2016」に参加させて頂きました。初日こそ所用で伺うことができず、日本のスーパーグループ「META FIVE」のオープニングもそうだけど、ヘンリク・シュワルツfeat.板橋文夫&Kuniyukiも見逃してしまった。
気を取り直してDJで参加した2日目のヘッドライナーはジャイルス・ピーターソン率いるブラジル・オールスター、SONZEIRA(ソンゼイラ)マルコス・ヴァーリの登場にはくらくらと目眩。やはり間近で聴くブラジル音楽のビート感覚は格別です。昨年のベスト・ルーキー、ピート・ジョセフのステージもよく練られた構成とそのステージングに魅了される。メラニー・デ・ビアシオの幽玄な世界観はコルトレーンの61年作「IMPRESSIONS」の冒頭を飾る“India”そのまま。バーズの“霧の8マイル”も思い出したほど。
そして3日目には2016年のヘッドライナー、カエターノ・ヴェローゾが登場。お待ちしておりました。思いつくままセットリストを上げてみます。
Um Indio
Luz Do Sol
Mei bem, meu mal
Minha vos, minha vida
Reconvene
Bahia,minha preta
Abracaco
A luz de tleta
Miragem de carnaval
Desde que o samba e samba
途中から不覚にも涙でメモも絶え絶えに。知らない曲もあったのでかなり飛び飛びなリストです。時に愛弟子テラーザ・クリスチーナを従え、または裏に回り支えながら素晴らしいステージが展開されました。個人的に好きな曲は全部聴けたのは嬉しく、しかしその感動的な歌声のステージを眺め、ホールなのに晩夏を感じるといったような不思議な経験だったように思います。八代亜紀さんの気さくなステージも素晴らしかった。クリヤマコトさんのユニークなジャズ・アレンジを見事に御していた強さもあった。
こんなバラエティ豊かなラインナップを通して現代のジャズを見事に描き切った運営サイドにあらためて最大限の感謝とリスペクトを誓い、2016年の私の長い夏は終わりました。5月の宮古島ミュージックフェスティバルから始まり南フランスでのWorld wide Festival、熱狂のFUJI ROCK FESTIVAL、北海道帯広大樹町の宇宙の森フェスティバル、いとうせいこう建設的30周年フェスティバル、そしてこのモントルー。今年は本当に素晴らしいフェスに恵まれた一年でした。
John Coltrane「IMPRESSIONS」(Impulse)
コルトレーンのひとつの到達点。件の“India”はエリック・ドルフィー(bcl)との双頭コンボ。そしてNYの名門ジャズクラブ、ビレッジ・バンガードでライブ録音されたもの。この後にコルトレーンの恒久的なカルテットーマッコイ・ターナー(p)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)ジミー・ギャリソン(b)ーが組まれる萌芽の時期の録音というのも興味深い。このどこか青い炎のように燃えて深淵な世界をぜひ体感して欲しいと思います。