MOVIE|最高に切ないラブストーリー『サヨナライツカ』プレビュー
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2015年3月5日

MOVIE|最高に切ないラブストーリー『サヨナライツカ』プレビュー

『私の中の消しゴム』イ・ジェハン監督×12年ぶりの主演・中山美穂

最高に切ないラブストーリー 『サヨナライツカ』 プレビュー

バンコク、東京、ニューヨーク。25年の時を超え、一瞬の恋が、一生の愛へとつづいていく──。離れていても時がたっても、そこまでひとを愛することができるのか。恋をしたことのあるすべてのひとが涙する、2010年最初の涙、最高にせつないラブストーリー。2010年1月23日(土)より、新宿バルト9、丸の内TOEI 2ほか全国ロードショー公開される。

文=染谷晴美

主演・中山美穂。完全女優復帰を果たす

ヒロイン・真中沓子(とうこ)は「すらりとした足に大きな目。下着もつけずに、頭の先からつま先までブランド品をまとい、目の前にいるだけで息がつまるほどの魅力を漂わせる」女性である。そんな、愛することよりも、愛されることがしあわせだと思っている女性を演ずるのは中山美穂。スクリーンに映る彼女は、まさに沓子だ。投げかけられる強く妖艶な視線に、同性ながら少しドキドキした。

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© 2009 CJ Entertainment Inc. All Rights Reserved.

ミポリンの愛称で親しまれ、等身大の女性を演ずることが多かった彼女も、年齢とともに演技の幅をひろげ、前作(といってももう12年も前だが)『東京日和』では、これまでにない大人の女性を熱演。ひろく高い評価を得たが、その後、女優業から遠ざかっていた時間があまりにも長かったため、私のなかではすっかりミポリンに戻っていた。

それだけに、今作の彼女の演技っぷりには軽いおどろきが。ショッピングをするように好きな男を取り替えていた自由奔放な女性から、一途にひとを愛する強く純真な女性まで、それこそ、若く美しい20代から、凛として生きる50代まで、じつにリアルに演じきっているのである。大胆な濡れ場もあって、これぞ本気の体当たりの演技。完全女優復帰どことか、もうひとつ上のレベルに到達した感さえ抱かせる。

納得のキャスティング。西島秀俊の肉体美も必見!

タイ・バンコクのオリエンタルホテルのスイートルームに住む沓子と、彼女と運命の恋に落ちるエリートビジネスマンの東板内 豊、そして、その婚約者 尋末光子。

豊を演じるのは西島秀俊。結婚までの一時的な恋のつもりが、どんどん沓子に惹かれていく。だけど、成功と幸福を約束された未来を断ち切ることもできない。その本能と理性の葛藤を、静かな“動”を感じさせる演技で見事に表現している。鍛えぬかれた肉体美も必見! むだなものを全部そぎ落とした、いまふうにいえば細マッチョなボディは、ただただ美しいのひとこと。エキゾチックで情熱的なタイの空気感にもぴったりであった。

© 2009 CJ Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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石田ゆり子もいい。光子は、婚約者・豊から「愛している」という言葉を忍耐強く待ちつづける、しとやかで美しい、まさに淑女といえる女性であるが、じつは最後まで自分の愛を貫く、強い理性をもつ女性でもある。石田はこういう役どころがじつにうまい。男に媚びず、凛とした強さを秘めた役をやらせたら、この世代ではいちばんなのではないだろうか。

ひとは死ぬとき、愛されたことを思い出すのか、それとも愛したことを思い出すのか

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日常生活のエッセンスが随所にちりばめられた、イ・ジェハン監督ならではの映像美。エキゾチックで美しいタイの風景とともに、沓子のメイクやファッションも見どころのひとつだ。ときに大胆に胸元の空いたドレスに真っ赤な口紅、ときにエレガントな装いにきりりと上がったまゆげ……。実際、沓子の衣装にはイ・ジェハン監督の意見がかなり反映されているという。そのこだわりは、衣装を変えるごとに豊を想う沓子の内面も変わっていくことからもわかる。

そう、愛することよりも愛されることがしあわせだと思っていた沓子が、いつしか、本気でひとを愛するようになっていたのである。

うーん、切ない。だって、その恋はかなわぬ恋。自由奔放に恋愛をしてきた沓子が、初めて“愛すること”が本当の愛だと知ったのに……。そのあたりから、どのシーンを観ても切なくて、涙がほろり。最終的には、豊を愛しつづける代わりにバンコクを去る沓子。別れのシーンに、また涙。

いちばんぐっときたのは、25年後に運命の再会を果たした沓子と豊の姿。あまりに自然なエイジング。そこにいるのはほんとうの50代のふたりに見えて、なんだかわからないが、ぽろぽろと涙が出てきた。これは、25年は長かったねーという気持ちなのか? であれば、時間軸で25年を意識できたということ。確実に過ぎた時間、でもそこには、遠く離れていても豊を愛しつづけた沓子がいる。25年かけてようやく自分のほんとうの気持ちに気づいた豊かがいる。これはもう、イ・ジェハン監督の手腕に脱帽である。

本作全編を貫く問いかけがある。それは、“ひとは死ぬとき、愛されたことを思い出すのか、それとも愛したことを思い出すのか”──

誰にでもおとずれる、人生の岐路での選択。
この映画、大人ほど、ぐっときます。

<ストーリー>

1975年、灼熱のバンコク。お金・美貌・愛に不自由なく暮らし、“ただ、愛されること”を求め生きてきた沓子は、ある日、夢に向かって真っすぐ生きるエリートビジネスマン・豊と出逢う。たちまち魅かれ合い、熱帯の夜に溺れていくふたり。しかし、豊は結婚を目前に控え、日本に婚約者がいたのだった。
かなわぬ恋とわかっていながら、愛することこそが本当の愛だと気づいた沓子は、それでも、豊を愛しつづけると決める……。そしてふたりは25年後のバンコクで、運命の再会をするが──

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『サヨナライツカ』
監督・脚本|イ・ジェハン『私の頭の中の消しゴム』
出演|中山美穂、西島秀俊、石田ゆり子
原作|「サヨナライツカ」辻 仁成(幻冬舎文庫)
配給|アスミック・エース
©2009 CJ Entertainment Inc. All Rights Reserved.
2010年1月23日(土)
新宿バルト9、丸の内TOEI 2ほか全国ロードショー
http://sayo-itsu.com/

           
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