MOVIE|ワン・ビンによる最新ドキュメンタリー『三姉妹~雲南の子』
MOVIE│世界映画の旗手であるとともに、中国現代アートシーンも注目
ワン・ビンによる最新ドキュメンタリー『三姉妹~雲南の子』
世界映画の旗手として、また中国現代アートシーンの重要人物として知られるワン・ビン(王兵)の最新ドキュメンタリー映画『三姉妹~雲南の子』がシアター・イメージフォーラムなどで公開されている。
Text by YANAKA Tomomi
ベネチア国際映画祭やナント三大陸映画祭で受賞
小さなデジタルカメラでひとつの時代を象徴した大工業地区の衰退を記録し、合計9時間を超える全三部作の『鉄西区』を発表以来、新作が待たれていた中国のワン・ビン。その評価は映画界だけのものではない。
彼の作品は『名前のない男』をはじめギャラリー収蔵作品も多く、昨年はパリのポンピドゥーセンターでも上映されるなど、中国ではデジタル時代の映像作家として現代アートシーンで重要な役割を果たしている。
待望の新作となった『三姉妹~雲南の子』は昨年のベネチア国際映画祭で革新的な映像を集めたオリゾンティ部門において、グランプリを獲得するとともに、ナント三大陸映画祭ではグランプリと観客賞をダブル受賞するなど、日本公開前から大きな話題に。そんなワン・ビンならではの圧倒的な映像と音で表現された映像作品がいよいよ日本上陸を果たす。
標高3200メートルの雲南の村で3人だけで暮らす幼い姉妹
中国、雲南地方。標高3200メートルの村で3人だけで暮らす幼い姉妹がいた。母は家を出てしまい、父は出稼ぎに行き、両親は不在だ。近くに伯母家族や祖父はいるものの、10歳、6歳、4歳の三姉妹は農作業をおこない、家畜の世話をして自分たちだけで生活しているのだ。
やがて、町から父親が戻り、子どもたちを町に連れて行くことを考えるが、経済的な問題から長女だけが村に残されることに。強く吹きつづける風に抗うかのような子どもたちのエネルギーと、ひとり残される長女インインの孤独。そして孤独を知ればこそ生まれる人間の尊厳に、ワン・ビンがもつデジタルビデオカメラは迫ってゆく。
ワン・ビンのドキュメンタリーフィールドのあらたな傑作ともいえる『三姉妹~雲南の子』。貧しくもたくましく生き抜こうとする少女たちの姿に、感動を覚えずにはいられない。
『三姉妹~雲南の子』
シアター・イメージフォーラムにて上映中
6月1日(土)より梅田ガーデンシネマ、他全国順次公開
監督│ワン・ビン
配給│ムヴィオラ
2012年/フランス・香港/153分
www.moviola.jp/sanshimai
© ALBUM Productions, Chinese Shadows