MOVIE|鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督によるサスペンススリラー『コズモポリス』
MOVIE│若き富豪の人生崩壊をスリリングかつドラマティックに描く
鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督によるサスペンス『コズモポリス』
独特な世界観の作品をつくりつづける鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督による最新作『コズモポリス』が4月13日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館など全国順次ロードショーされる。若き富豪がたった2マイルを移動する1日の出来事をつうじて、「人生崩壊」をこのうえなくスリリングかつ、ドラマティックに描いた、極上サスペンス!
Text by YANAKA Tomomi
「トワイライト」シリーズのロバート・パティンソンが成長!
2003年に発表されたアメリカ文学の巨匠ドン・デリーロによる原作をデヴィッド・クローネンバーグ監督により映像化された『コズモポリス』。後のリーマンショックに端を発する金融パニックや反格差社会デモの勃発を鋭く予見したと評される、驚嘆すべきストーリーと世界観。詩的かつ、示唆に富んだダイアローグの数かずにインスパイアされた監督は、わずか6日間で脚本を執筆。原作者自身が「映画化は難しいと思っていた」と語るほど、つくり手のイマジネーションが試されるこの企画をこともなげに実現した。
主演は「トワイライト」シリーズで知られるロバート・パティンソン。クールなダークスーツに身を包み、やるせない孤独と狂気、退廃的な色気をにじませて、俳優として大胆な飛躍を印象付けた。また、パティンソンと絡み合う国際的キャストの豪華な顔ぶれも見逃せない。フランスからはジュリエット・ビノシュ、サラ・ガイドン、イギリスからはサマンサ・モートン、ハリウッドからはポール・ジアマッティが参加し、個性的なキャラクターが脇を固める。
ラストシーンに待ち受けるのは“死”か、それとも“生”──
金融業界で大成功を収め、莫大な富を築き上げたエリック・パッカーは28歳にしてあらゆるものを手に入れた大富豪。白塗りのリムジンをオフィス代わりにしている彼は、この外界から完璧に隔絶された空間で国際情勢を見渡し、思うがままにマネーを動かしている。あらゆる未来を予見できるエリックは、グローバル化が進んだ資本主義の万能の神たる存在なのだ。
しかし、エリックの内にはぬぐいようのない虚無感が漂っていた。そんなある日、2マイル先の理髪店を目指してリムジンに乗った彼は、大統領のマンハッタン訪問に合わせて沸き起こったデモと大渋滞に巻き込まれてしまう。
投資の失敗による致命的な巨額損失、美しい妻との感情的なすれ違い、そしてどこからともなく忍び寄ってくる殺しの影。一度狂った歯車を修復できないエリックはなす術もなく破滅的な運命にとらわれてゆく──。
ラストシーンの果てに待ち受けているのは“死”か、それともあらたな“生”なのか。観る者の知的好奇心を掻き立て、危うくも甘美な幻想と妄想へと誘う、クローネンバーグ・ワールドの真骨頂といえる作品だ。
『コズモポリス』
監督・脚本│デヴィッド・クローネンバーグ
出演│ロバート・パティンソン、ジュリエット・ビノシュ、サラ・ガドン、マチュー・アマルリック、サマンサ・モートン、ポール・ジアマッティ
配給│ショウゲート
2012年/フランス、カナダ/1時間50分/R15+
© 2012–COSMOPOLIS PRODUCTIONS INC. / ALFAMA FILMS PRODUCTION / FRANCE 2 CINEMA