MOVIE│狂熱の青春映画『ベルフラワー』
MOVIE|サンダンス映画祭で旋風を巻き起こした話題作
狂熱の青春映画『ベルフラワー』
世界滅亡を夢見る青年たちの友情、愛と憎しみを幻覚的なヴィジュアルとサウンドを駆使して描いた映画『ベルフラワー』が6月16日(土)からシアターN渋谷でロードショー。全国順次公開される。
Text by YANAKA Tomomi
31歳の新鋭エヴァン・グローデルが監督、脚本、制作、編集、主演を担当
インディペンデント映画を発掘するサンダンス映画祭に昨年出品され、旋風を巻き起こした話題の青春映画『ベルフラワー』がついに日本に上陸する。
監督、脚本、制作、編集、そして主演を務めたのは31歳の新鋭エヴァン・グローデル。自らの過去の失恋体験をベースに脚本を執筆し、収まりのつかない怒りと悲しみの感情を映画に叩き込み、長編映画監督デビューを飾った。仲間たちと制作プロダクション“コートウルフ”を結成し、本作を撮影した彼は、独特の映像美を見せるため、既製のデジタルカメラを自ら改造。にじんだ色彩と深い陰影、ぼかしたピントなど、サイケデリックでシュールなヴィジュアルも見所のひとつだ。
絶望と苦悩から突き進む、狂おしい妄想の世界
『マッドマックス2』を愛し、主人公ではなく、悪の首領「ヒューマンガス」に憧れる親友同士のウッドローとエイデン。ハリウッドの北のはずれ“ベルフラワー”通り界隈に住み、働きもせず朝からビールを飲みつづけてばかり。いつか訪れると信じる文明崩壊後の世界で火炎放射器を搭載した戦闘用改造車を乗り回す夢を見て、二人は銃火器の破壊力追求と、より大きな爆炎放射実験に明け暮れていた。
そんなある晩、飲み屋でミリーという女と出会い、思いがけなくも激しい恋に落ちるウッドロー。しかし、幸せだった日々もつかの間。彼女の裏切りを知った彼は、怒りと絶望から正気を失い、火炎放射器を手に狂おしい妄想の世界へと突き進んでいく――。
見るものすべての心を熱くする男の友情、そして心に深い傷跡を残す失恋の絶望と苦悩。現代アメリカの青春像を描きだした『ベルフラワー』は、かつてのアメリカン・ニューシネマ誕生をおもわせる鮮烈さで、私たちを魅了することだろう。