MOVIE|孤高の映画作家、蘇る 特集上映『ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ』
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2015年1月7日

MOVIE|孤高の映画作家、蘇る 特集上映『ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ』

MOVIE|孤高の映画作家、蘇る

特集上映『ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ』

気鋭の映画作家 ジョン・カサヴェテスが残した数々の名作が一堂に会する特集上映『ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ』が、5月26日(土)より、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムを皮切りに、全国順次ロードショーされる。

Text by FUJITA Mayu(OPENERS)

不器用な登場人物たちが描き出す、人間の普遍的な感情

1989年2月、59歳でこの世を去ったひとりの映画作家──ジョン・カサヴェテス。“インディペンデント映画の父”とも称された彼の作品群、そしてそのスピリットは、23年経ったいまも、ハリウッド、インディーズの垣根や国を越え、世界の監督たちに影響を与えつづけている。

そんなカサヴェテス作品にふたたび出合う特集上映『ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ』が、5月26日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか、全国劇場にて順次開催される。93年、日本ではじめて特集上映が企画されてから、じつに19年ぶりの特集上映である。作品は『アメリカの影』『フェイシズ』『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』『オープニング・ナイト』『こわれゆく女【復元ニュープリント版】』『ラヴ・ストリームス【ニュープリント版】』の6作品。

『こわれゆく女【復元ニュープリント版】』は、マーティン・スコセッシ監督が映画修復作業の支援・監修を目的に、90年に設立した非営利団体THE FILM FOUNDATION(フィルムファウンデーション)と、イタリアを代表するラグジュアリーブランド GUCCI(グッチ)の協力のもと、復元ニュープリント版として復活。また、未DVD化のため幻の作品となっていた『ラヴ・ストリームス【ニュープリント版】も、今回スクリーンに甦る。

特集上映 ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ 01

ジョン・カサヴェテス監督
©1977 Faces Distribution Corporation

「カサヴェテスの作品を観るときに、予備知識はあまり意味がない。ただ、観る。出くわす。びっくりする。ストーリーそのものはシンプルで、複雑な人物相関図も年表も必要ない。奇をてらった表現もない。ただひたすら、大切なひととの関係がうまくいかない人間たちが、“孤独”や“老い”の前でジタバタし、愛を掴もうと懸命に闘っている。それが今まさにカメラの前で起こってしまったかのようであることが、衝撃的なのだ」──松田広子(映画プロデューサー)

登場人物たちの心の機微が、観る者の琴線に触れる不朽の名作たち──いまふたたび、私たちに問いかけるものとは? 懐かしいという方も、彼の作品を知らない方も、ぜひこの貴重な機会をお見逃しなく。

ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ
5月26日より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー!
http://www.zaziefilms.com/cassavetes/


特集上映 ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ 02

『アメリカの影』
1959年/アメリカ/82分/モノクロ/スタンダード/デジタル
脚本|ジョン・カサヴェテス
撮影|エリック・コルマー 編集|モールス・マッケンドリー
録音|ジェイ・クレッコ 音楽|チャールズ・ミンガス
美術|ランディ・リレス、ボブ・リー
製作協力|シーモア・カッセル
製作|モーリス・マッケンドリー、ニコス・パパタキス
出演|ベン・カラザース、レリア・ゴルドーニ、ヒュー・ハード、アンソニー・レイ、ルパート・クロス、デイヴィッド・ポキティロウ、デニス・サラス、トム・アレン
©1958 Gena Enterprises.

ストーリー
ニューヨークのマンハッタンで暮らすヒュー、ベン、レリアの3人兄妹。黒い肌をもつ長男のヒューにくらべ、弟のベンと妹のレリアは白人の血を多く受け継いで、外見は白人と変わりない。ヒューは売れない歌手。一家の暮らしはヒューが支えているのだが、親友でマネージャーのルパートがもってくる仕事は、ストリップの前座や場末のクラブの司会といったものばかり。ベンの夢はトランペット奏者になることだが、無力感にさいなまれ、日夜、街を徘徊しては女性をひっかける刹那的な生き方をしている。そしてレリアは世間ずれしていないしっかり者で、ふたりの兄弟から愛情を注がれている。愛に、夢に傷つきながら、肌の色のことなる兄弟たちはそれぞれに複雑な想いを抱えたまま、ニューヨークの街角で自身の人生を見つめ、歩みだす姿を描く。


特集上映 ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ 03

『フェイシズ』
1968年/アメリカ/130分/モノクロ/ヴィスタ/デジタル
脚本|ジョン・カサヴェテス
撮影|アル・ルーバン
編集|アル・ルーバン、モーリス・マッケンドリー
美術|フェドン・パパマイケル 音楽|ジャック・アッカーマン
製作|モーリス・マッケンドリー
出演|ジョン・マーレイ、ジーナ・ローランズ、シーモア・カッセル、リン・カーリン
©1968 JOHN CASSAVETES

ストーリー
実業家のリチャードと妻マリアのあいだには、もはや埋めることのできない溝があった。ある日、高級娼婦ジェニーを巡り、リチャードと仕事仲間のフレディとのあいだでいさかいが起きる。複雑な想いを抱えたまま家に帰ったリチャードは、マリアに離婚を切り出し、そのままジェニーの元へ。傷心のマリアは女友達と4人でディスコへ繰り出し、そこで青年チェットと出会う。その夜、ひとりの男を巡って乱れた4人の女たちは解散、マリアはチェットと結ばれる。翌朝、我に返ったマリアは事の重さに耐えかね、自殺を図る。そこへリチャードが帰宅。ショックを受けたリチャードはマリアを罵るが、もはやふたりのあいだに愛はない。気まずい沈黙が流れるなか、孤独と静けさが辺りを包んでいく……。


特集上映 ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ 04

『こわれゆく女【復元ニュープリント版】』
1975年/アメリカ/147分/カラー/ヴィスタ/35mm
監督・脚本|ジョン・カサヴェテス 製作|サム・ショウ
撮影|カレブ・デスカネル、ミッチ・ブレイト、マイケル・フェリス
編集|トム・コーンウェル 美術|フェドン・パパマイケル
音楽|ボー・ハーウッド
出演|ジーナ・ローランズ、ピーター・フォーク、マシュー・カッセル、マシュー・ラボートー、キャサリン・カサヴェテス、レディ・ローランズ、クリスティナ・グリサンティ
©1974 Faces International Films,Inc.

ストーリー
土木工事の現場監督を務めるニックは、ある日、妻メイベルとふたりで過ごす約束をしていたが、突然の事故処理で家に戻れなくなってしまった。その日を楽しみにしていたメイベルはショックを受け、夜の街へ飛び出し、見知らぬ男と一夜を過ごしてしまう。翌朝、夫の前で明るく振る舞うよう努めるも、抑制が利かなくなっていく彼女に、ニックはついに怒鳴ってしまう。その後メイブルの言動は目に見えておかしくなっていく。ニックはそんなメイブルを深く愛していたが、彼女を病院に入れることを決意。6ヵ月後、家に戻ってきたメイブルは落ち着いてはいたが、どこか覇気がない。ニックは自分を抑える必要はないと告げるが、メイベルは混乱し、自殺騒動を起こす。やがて興奮が収まると、ふたりは部屋の片づけをはじめた。喧噪のあとの静寂。夫婦ははじめて、お互いを見つめ直そうとしていた。


特集上映 ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ 05

『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』
1976年/アメリカ/134分/カラー/ヴィスタ/デジタル
脚本|ジョン・カサヴェテス
撮影|フレッド・エルムス 編集|トム・コーンウェル
音楽・録音|ボー・ハーウッド 製作|アル・ルーバン
出演|ベン・ギャザラ、ミート・ロバーツ、ティモシー・アゴリア・ケリー、シーモア・カッセル、ロバート・フィリップス、モーガン・ウッドワード、マーティ・ライツ
©1976 Faces Distribution Corporation

ストーリー
ラスベガスにある場末のクラブのオーナーを務めるコズモ。店は大きくはないが、美しいストリッパーたちと、芸人ミスター・ソフィスティケーションのショーが売り物。彼は舞台に誇りをもっていた。ある日、クラブ経営のため借りていた金を返済し終え、解放感に浸るコズモは街へと繰り出す。そこでギャンブルに大負けし、マフィアに多額の借金をしてしまう。借金を帳消しにするべく、コズモは暗黒街のボス、チャイニーズ・ブッキーの暗殺を実行。しかし逃げる途中、手下に脇腹を撃たれてしまう。傷を負ったコズモは病院ではなく、クラブへ向かった。しかし客を前にして、舞台には誰もいない。コズモはみずから舞台に上がり、口上を述べるとミスター・ソフィスティケーションを迎え、ひとり裏口へ。タバコに火をつけ、血の滲む脇腹を抑えるのだった──


特集上映 ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ 06

『オープニング・ナイト』
1977年/アメリカ/144分/カラー/ヴィスタ/デジタル
脚本|ジョン・カサヴェテス
撮影|アル・ルーバン 編集|トム・コーンウェル
音楽|ボー・ハーウッド 美術|ブライアン・ライアン
製作|アル・ルーバン
出演|ジーナ・ローランズ、ジョン・カサヴェテス、ベン・ギャザラ、ジョーン・ブロンデル、ポール・スチュアート、ゾラ・ランパート、キャサリン・カサヴェテス、レディ・ローランズ
©1977 Faces Distribution Corporation

ストーリー
舞台女優マートル・ゴードンは、40歳を過ぎる今日まで、演技一筋に打ち込んできた。ある日、彼女を取り囲むようにファンたちが殺到するなか、ナンシーと名乗る熱狂的な女性ファンがマートルのクルマを追いかけ車道へ飛び出し、運悪く対向車線からきた車にはねられてしまう。事故を目撃したマートルは深く心を痛め、やがて死んだナンシーの幻まで見るようになり、しだいに精神のバランスを失ってゆく。稽古も途中で中断するようになったマートルは、気心の知れた仲間たちとともに作り上げてきた舞台「2番目の女」上演初日に失踪してしまう──


特集上映 ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ 07

『ラヴ・ストリームス【ニュープリント版】』
1984年/アメリカ/141分/カラー/ヴィスタ/35mm
脚本|ジョン・カサヴェテス
原作・共同脚本|テッド・アレン 撮影|アル・ルーバン
編集|ジョージ・ヴィラセノール 音楽|ボー・ハーウッド
製作|メナヘム・ゴーラン、ヨーラム・グローバス
出演|ジーナ・ローランズ、ジョン・カサヴェテス、ダイアン・アボット、
ジェイコブ・ショウ、シーモア・カッセル、マーガレット・アボット、ミシェル・コンウェイ
©MCMLXXXIV Cannon Films, Inc.

ストーリー
数回の離婚歴のある流行作家 ロバートは、ハリウッド郊外の家で、秘書や若い女性たちと奇妙な共同生活を送っている。一方、ロバートの姉 サラは、15年つづいた夫 ジャックとの結婚生活に終止符を打とうとしていた。ある日、前妻との息子 アルビーを1日だけ預かることになったロバートだが……。どんなふうに我が子と接していいのかわからず、アルビーを傷つけ、それにより自身の心を痛める弟。みずからのナイーヴな神経と激しい気性とのバランスがとれず、夫と娘を失うも、なおも家族との和解を夢見る姉。それぞれに想いを抱えたまま、言葉を交わすことなく、兄弟はふたたび別れてゆく。

           
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