松本 隆×秀島史香 コンピレーションCD発売記念対談(2)
松本 隆×秀島史香 コンピレーションCD発売記念対談(2)
松本 隆、恐るべしの自選5曲を大解説<少年編>
今回発売される松本 隆作品の2枚のコンピレーションアルバム『風街少年』『風街少女』で、秀島史香さんが選んだのは、冨田ラボfeaturingハナレグミ(永積タカシ)の「眠りの森」、C-C-Bの「Romanticが止まらない」、少年隊の「ABC」以上『風街少年』、畠山美由紀の「罌粟(けし)」、薬師丸ひろ子の「Woman“Wの悲劇”より」以上『風街少女』の5曲。
それではまず『少年』の自選の3曲を秀島史香さんに存分に語っていただきましょう。
文=梶井 誠(本誌)photo by Jamandfix
松本さんはそっと見守っているダンディな教頭先生です(秀島史香)
──では、『少年』に収録された冨田ラボfeaturingハナレグミ(永積タカシ)の「眠りの森」からどうぞ!
秀島 ラジオ番組など仕事での選曲は、“こういう世代にきっと響くだろうな”とか“あの時代にヒットした曲だから”とか気にすることもあるんですが、今回は、もうぜんぶ私的な理由で、もうただ好き!っていう“オレオレ選曲”(笑)なんです。「眠りの森」は、永積さんが私とほぼ同世代なんですね。
松本 うん、うん、そうだね。
秀島 最初、ラジオで聴いて、なんていい歌詞なんだろうと思って、ハナレグミの詞かなって思っていたんですね。それでクレジットを見たら「松本さんじゃん!」って(笑)。そのときはまずナゼ?って思ったんです。おなじクラスの男のコがこういう恋心を抱いているんだって詞の感じが大人になってもキュンときて……
松本 詞は大人っぽいよね。
秀島 それでクラスで机を並べている男のコの感じや甘酸っぱい同世代感がどうしてこんなに出せるんだろうと思って「松本 隆、恐るべし!」って(笑)
松本 その場合、僕はどこにいるわけ?
秀島 松本さんは、そっと見守っていてくださる素敵でダンディな教頭先生(笑)でいかがですか。この詞はセクシーというか、「寝ている顔が可愛いね」とかこんなふうにクラスの男のコに思ってもらえたらいいなぁって。そういうのが、“女ゴコロもつかむねぇ”と思いながら聴いています。“つかむねぇ、永積”って思っていたら、じつは松本さんでした(笑)
Romanticってなんだ? 止まらないってなんなんだ?(秀島史香)
──では2曲目、C-C-Bの「Romanticが止まらない」。発売が1985年ですね
秀島 私が10歳ですね。ボクシングの内藤大助選手も小さいときにこの曲を聴いて勇気づけられたっていっていましたね。
松本 彼はいじめられっ子で、子どもの頃は弱かったんだってね。
秀島 それを克服するためのボクシングだったらしいですね。私の場合は、C-C-Bさんの見た目のキャッチーさですね。ドラムを叩きながら歌うなんて……。もちろんその頃はイーグルスのドン・ヘンリーとかを知りませんから、なんてアバンギャルドなんでしょうって思ったんです。それとこの大人の歌詞ですね。「Romanticってなんだ? 止まらないってなんなんだ?」って。
松本 ちょっと日本語を破壊しているよね。
秀島 でもそれがすごく斬新で。
松本 オリコンって雑誌があってね、そのヒットチャートの表に曲名が書いてあるんだけど、そこに入りきれないぐらい長いタイトルにしたいなって思って。
秀島 え~っ。そうだったんですか。歌い出しの「長いキッスの途中で……」っていうのもオトナですよねぇ。
松本 これはTBSの「毎度お騒がせします」ってドラマの主題歌で、中山美穂さんがデビューしたぶっとんだドラマだったんだけど、初回のオンエアを見て、知り合いのTBSの関係者に「この子、歌わせたほうがいいよ」っていったら、「もう話があります」って。そうしたら僕のところに作詞の依頼が来た(笑)
秀島 それは中山さんの何を見てそう思ったんですか。
松本 存在感だよね。
秀島 そうなんですか~。
「ザ・ベストテン」、もちろん毎週見てました(秀島史香)
──少年隊って意外な気がするんですが(笑)
秀島 私は茅ヶ崎の普通の小学生で、C-C-Bもそうなんですけど、この「ABC」の歌を聴いていて、オトナになったらこんな恋をするのかなって憧れがあったんですよね。歌から絵が浮かんで、はやく大人になりたい!って(笑)。
──少年隊は好きだったんですか
秀島 大好きでしたよ、カッちゃんもニッキも。ヒガシの良さは大人になってからわかりました(笑)。小学生の頃って、キャッチーな濃い感じの男のコが好きじゃないですか。少女漫画のなかの手が届きそうな素敵な恋愛というか、憧れの教科書というか。「ザ・ベストテン」も毎週欠かさず見ていて、鏡が開いて少年隊が出てくると「うわ~」って(笑)。松本さんはスタジオには行かれていたんですか?
松本 ベストテンは一度も行かなかったね。「夜のヒットスタジオ」も見なかったね、怖くて。
秀島 怖くて……ですか?
松本 マッチとかよく詞を間違えるし(笑)、セットで足を滑らせて転ばないかとか、ドキドキしちゃって(笑)
秀島 それは、見守るお兄さん的マインドで?
松本 そうだね、みんな可愛かったし。近藤君も16歳とかですごく可愛かったね。
秀島 16のマッチって……。いまのKAT-TUNみたいな?
松本 いや、ぜんぜん、もう次元がちがうよ(笑)
──「ザ・ベストテン」といえば、「ルビーの指環」がずっと1位だったときとか、松本さんの詞の歌が半分以上占めたんじゃないですか?
松本 当時、来る仕事を全部引き受けると、あの掲示板を全部埋めちゃうのかなと思って、それは怖いから、そんなことになったら寿命が尽きちゃうから(笑)、半分ぐらい断りましたよ。
秀島 そうなんですか!
松本 10曲中、5曲ぐらいで止めたはず。怖くなっちゃって。
秀島 怖いって気持ちってそういうものなんですね。「行くなら、埋めてしまえ!」とは思わなかったんですか?
松本 それはないですよ、ビートルズだってビルボードの5曲ぐらいでしょ。そこまで世の中を乗っ取るとね、後が怖い(笑)
秀島 そういう感じだったんですか~。
松本 当時、筒美京平さんに「点取り虫」っていわれてね、これは生き方を直さないとって。この人にそんなことをいわれたら最後だなって(笑)。でも、そういう自制は本能的なものですよ。結構バランスは大事なんです。
──では、次回は『風街少女』の2曲をお聞きします。
秀島 『風街少女』も語ります!
松本 隆×秀島史香 コンピレーションCD発売記念対談(3)
「松本 隆、じっくり聴きたい自選5曲を大解説<少女編>」につづく
『風街少年』
CD2枚組 UMCK-1233/UMCK-1234 ¥3,500 (Tax In)
監修|風待レコード
販売|ユニバーサル ミュージック
イラストレーション|羽海野チカ
選者|羽海野チカ/おぎやはぎ/草野マサムネ/佐内正史/高須光聖/堤幸彦/中川翔子/ピエール瀧/秀島史香/松本大洋/リリー・フランキー/渡辺武信(50音順、敬称略)
『風街少女』
CD2枚組 UMCK-1235/UMCK-1236 ¥3,500 (Tax In)
コンピレーションアルバムの詳しくは――
風待茶房
http://www.kazemachi.com/
対談記念SPECIAL PRESENT!
「松本 隆×秀島史香のダブルネームサイン色紙」は
2007年11月30日(金)で締め切りました。
多くのご応募ありがとうございました。(オウプナーズ編集部)