松本 隆×秀島史香 コンピレーションCD発売記念対談(1)
松本 隆×秀島史香 コンピレーションCD発売記念対談(1)
「私は、茅ヶ崎生まれ、松本育ち」(秀島史香)
前回のコンテンツで曲目を紹介した、松本 隆作品の2枚のコンピレーションアルバム『風街少年』『風街少女』が11月21日に発売される。松本 隆氏の作詞の仕事はこれまでに約2100曲にのぼり、オリコン1位獲得51曲というのは堂々のぶっちぎりトップである。
松本 隆の詞とともに生きてきた人には、収録曲とその曲順に思わず胸が熱くなるだろうし、10代、20代の人は、この豊かな歌の世界と歌い手のバラエティさに驚くだろう。
松本さんに「ぜひ選者の方と対談を……」とお願いして実現した秀島史香さんとの対談を全3回にわたりお送りします。テンポ良く弾む話をお楽しみください。
文=梶井 誠(本誌)photo by Jamandfix
秀島さんは、僕の人脈です(松本 隆)
秀島 その節はとても美味しかったです。いつも食べてばかりで(笑)すみません。
松本 いえいえ(笑)
秀島 今回の企画CDに選者として参加させていただいてありがとうございます。この『風街少年』と『風街少女』はなぜ実現したんですか。
松本 秀島さんも知っていると思うけど、僕のホームページの「風待茶房」のなかに「風街俺図鑑」というコーナーがあって、そこではいろんな人が僕の詞をつかって自分なりのベスト10をつくっているんです。そこから「ライブをやったらどうか」という話がスタッフのあいだでもち上がってね、でもいつの間にか立ち消えた。その後、映画監督の堤幸彦さんと対談する機会があって、対談が終わったら、スタッフが「松本さんはこれで終わりですが、僕たちはもう少し堤さんとお話ししていきます」っていわれて、「なにをやってるの?」って聞いたら、「じつはこういう企画を進行しています」と説明されて、そこではじめて知ったわけ。
秀島 それはいつ頃のことですか。
松本 もうずいぶん長いことやっていたね。2年以上前からかな。選者についても僕はぜんぜん聞いてないの。
秀島 それもまた風まかせですね(笑)
松本 すべてスタッフがやっていた気がする。選者もスタッフまかせだけど、秀島さんは僕の人脈です。
秀島 ありがとうございます!
少年編は「硝子の少年」から、少女編は「さらばシベリア鉄道」から(松本 隆)
秀島 そういうプロセスだと、松本さんはあまり関わらなかったんですか。
松本 選者と選曲にはあんまり口ははさめなかったけど、ジャケットは羽海野チカさんがいいんじゃないかというのと、少年編は「硝子の少年」から、少女編は「さらばシベリア鉄道」からはじめてほしいというリクエストはしました。そこには僕の思いがあるのね。
──秀島さんは今回の選者の話がきたときはどう思われましたか
秀島 いつも松本さんには可愛がっていただいていて、でも今回はちゃんとお仕事として依頼をいただいて、「まぁなんということでしょう!」って。最初、私でいいんですかって思ったんです。松本さんの歌にはあまりにもいろんな思いがありすぎて、選べないですよぉって(笑)。子どもの頃から当たり前のようにずっと聴いていた歌ばかりですから、あまりにも私の日常に溶け込んでいて、「選ぶなんて、そんなことできません!」ってとにかく悩みました。
──でも、『少年』も『少女』も、鳥肌ものの選曲ですよね
秀島 私は『少年』で3曲、『少女』で2曲選ばせてもらいました。松本さんは歌手の男女って性別は意識されて書かれたんですか。
松本 男の歌う詞と女の歌う詞はランダムに書いてきたけど、その切り替えの早さは天才的なの。自慢じゃないけど。
秀島 男性が女性の気持ちを歌ったり、その逆だったり、中性的な詞だったりいろんなカタチがありますよね。
松本 今回の『少年』30曲、『少女』30曲は、年代だと30年ぐらいの幅があるんだけど、マスタリングはひとりの人にお願いして、できる範囲で統一感をとってくれとお願いした。そうしたらたとえば、やまがたすみこさんの「夢色グライダー」とかは「いまこの曲ができました」といっても違和感のないぐらいの曲とアレンジなのね。それはぜひ聴いてほしいなと思う。
秀島 70年代の曲も多く収録されていますね。
松本 「夢色グライダー」はずっと廃盤だったんだけど、インターネットを通じてファンが動いて再発させたんだよね。だから音源があるわけ。
CDショップに『少年』と『少女』が並んでいるのが目に浮かびます(秀島史香)
松本 『少年』も『少女』も、最初から聴いていくと、歌い手の声は順番に変わっていくんだけど、詞がベースにあって声が変わっていく感じがする。そうすると、詞の主人公が、同一じゃないんだけど、ひとつの人格が見えてくる。
秀島 それ、わかる気がします! ひとつの人生にあんな恋やこんな恋があるんですよね。
松本 だからそれぞれ30曲を聴くとね、ものすごく長い映画を観ているみたい。人間はいろんなことを体験して、恋ひとつもっても、30曲=30面体ぐらいあるでしょう。秀島さんもね。
秀島 いえいえ、そんな(笑)。私は、茅ヶ崎生まれ、松本育ちですから(笑)
松本 それで、最後の「Woman“Wの悲劇”より」で感動するんだよね。
秀島 わが一生に悔いなし……みたいな。
松本 だから『少女』だと、後半の曲の並びがすごいの。パーランマウムのほとんど絶叫なんだけど(笑)「ビーズ細工」はなんか胸を打つし、竹内まりあの「象牙海岸」はすごくて、とどめが秀島さんも選んでくれた薬師丸ひろ子の「Woman“Wの悲劇”より」。みんな「Woman“Wの悲劇”より」は好きだよね。不思議だよね。
秀島 大河小説を耳で聴くって感じですよね。私の世代より下の若い人には発見がたくさんあると思いますよ。この羽海野チカさんのイラストのCDがショップに並んでいたら、フッと足をとめますね。可愛いだろうなぁ。
──では次回は、秀島史香セレクトの5曲についての熱い想いを!
秀島 いっぱい語ります!
松本 隆×秀島史香 コンピレーションCD発売記念対談(2)
「松本 隆、恐るべしの自選5曲を大解説<少年編>」につづく
『風街少年』
CD2枚組 UMCK-1233/UMCK-1234 ¥3,500 (Tax In)
監修|風待レコード
販売|ユニバーサル ミュージック
イラストレーション|羽海野チカ
選者|羽海野チカ/おぎやはぎ/草野マサムネ/佐内正史/高須光聖/堤幸彦/中川翔子/ピエール瀧/秀島史香/松本大洋/リリー・フランキー/渡辺武信(50音順、敬称略)
『風街少女』
CD2枚組 UMCK-1235/UMCK-1236 ¥3,500 (Tax In)
コンピレーションアルバムの詳しくは――
風待茶房
http://www.kazemachi.com/
対談記念SPECIAL PRESENT!
「松本 隆×秀島史香のダブルネームサイン色紙」は
2007年11月30日(金)で締め切りました。
※サイン本プレゼント当選は、発送をもってかえさせていただきます。
多くのご応募ありがとうございました。(オウプナーズ編集部)