Rock My World !|いま、旬な英国へ|ベナレス・レストラン&バー
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2015年6月22日

Rock My World !|いま、旬な英国へ|ベナレス・レストラン&バー

Rock My World ! いま、旬な英国へ

アトゥール・コハール 『ベナレス』シェフ

インド人初のミシュランスターシェフ

「ロンドンのインド料理はおいしい!」。そう断言する英国通は多い。確かにそう感じる。庶民的な店から高級レストランまで数多くのインディアンレストランがひしめく。その頂点に立つのがメイフェアにあるミシュラン一ツ星の『ベナレス』。オーナーシェフのアトゥール・コハールはインドの名門ホテル、オベロイで経験を積み英国へ。北インド料理を出す名店『タマリンド』で活躍中にインド人としてはじめてミシュランスターシェフになり一躍、話題のひとに。その後、2007年に彼自身の店『ベナレス』をオープン。2011年1月に発行された『ミシュランガイドUK版 2011』で一ツ星を獲得している。

文=寺田直子写真=Rob McDougall協力=VisitBritain

料理は哲学を変えなくても、異なったアプローチであたらしくなる

「私が英国に来た1994年、ロンドンにはカレーハウスしかありませんでした。それがいまでは、シナモン・クラブ、ブッサバタイ、NOBUなど世界的に高い評価を受けるエスニックなレストランがあります。なぜ、ロンドンの食文化がこれほどに進化したのか。おそらく、世界中を旅した経験をもつイギリス人が、自分たちの国にもどってきて各地で味わった料理を再現してみようと思いはじめたからではないでしょうか。ミシュランの存在もとても大きいと思いますよ。英国の料理の評価を高めてくれたと思っています。星をいただければもちろんうれしいですしね」

『ベナレス』の店内は、純白のテーブルクロスに磨きこまれた銀のカトラリーにワイングラス。奥にはガラス越しにキッチンが見わたせる6人が座れるシェフズテーブルと、一流レストランらしい心地よい緊張感に包まれる。メニューにはエキゾチックな名前の料理が並び、ゲストのはやる心と胃袋を魅了してやまない。コハール氏の料理コンセプトはオーセンティックなインド料理をモダンにアレンジすること。英国人向けにアレンジしたり妥協したりしない伝統的なレシピに忠実なフレーバーこそが高い評価を受ける理由だ。

オーナー・シェフのアトゥール・コハール。

一流レストランらしい心地よい緊張感に包まれる店内。

「ベナレスは“モダン・ブリティッシュ・インディアン・レストラン”と名づけています。そして、何よりも上質な食材、スパイス、フレーバーを大切にしています。スパイシーさのためのスパイスではなく、素材の味をひきたてるためのスパイスです。料理の哲学を変えなくても異なったアプローチをすることでまったくあたらしいものができます。東京のレ・クレアシヨン・ド・ナリサワの成澤由浩シェフが創る土のスープもまさにそう。私もインド料理は辛い、スパイシーというイメージを払拭させる異なったアプローチを試みているわけです」

レストランでもっとも人気があるという金箔をあしらった「ラムシャンク、パンジャブチックピー、ゴールドリーフ添え」を味わってみた。じっくりと低温で火をとおしたラムはほろりと肉が骨から離れる柔らかさで、そこに深い風味が閉じ込められたソースがからめられている。骨太なラム肉の香りと柔らかさのあとに感じる灼熱のインドを思わせる刺激的なフレーバー。まちがいなくこれはインド料理そのもの。しかも、宮廷料理につうじる洗練さが織り込まれている。モダンでプリミティブ。この絶妙なバランスに多くのグルメが虜になるのだろう。オープンから4年目、予約が取りづらいレストランとして当分、ロンドンのダイニングシーンで君臨するはずだ。

Benares|ベナレス・レストラン&バー
12a Berkeley Square House, Berkeley Square, London, W1J 6BS
Tel.020-7629-8886
http://www.benaresrestaurant.com/

           
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