BOOK|ターナー賞作家が送り出す“あたらしい世界”
BOOK|ターナー賞作家が送り出す“あたらしい世界”
『BT BOOKSヴォルフガング・ティルマンス』
ベルリンを拠点に活動する世界的な写真家、ヴォルフガング・ティルマンスの作品+テキスト集『BT BOOKS ヴォルフガング・ティルマンス』が完成。美術出版社から刊行された。
Text by YANAKA Tomomi
旅しながら撮影した、最新シリーズも収録
1968年ドイツに生まれたヴォルフガング・ティルマンス。クラブなど若者文化を題材とした作品を、1980年代から雑誌『i-D』などで発表。そして2000年にはイギリスを代表する芸術賞「ターナー賞」を受賞する。
2003年にロンドンのテート・ブリテンで初の回顧展が開かれたほか、2004年には、東京オペラシティ アートギャラリーで、日本初となる美術館での個展を開催。3月15日(土)まで、六本木のWAKO WORKS OF ARTで、新作展『Affinity』が開かれている。
そんな彼の20年の歩みを記すとともに、近年の同時性をあらわし、重ね合わされたイメージで構成される“新境地”を紹介した本作。ページを開くと、世界を旅しながら撮影したという、最新シリーズ『Neue Welt(あたらしい世界)』と過去の作品を組み合わせた、ティルマンらしいレイアウトが目に飛び込んでくる。
さらに印画紙に直接光や感光乳剤で操作をくわえた結果、抽象画のような画面が生み出された作品など、ティルマンス自身がディレクションしたアートワークも収録。さらに、ベルリンでおこなわれた彼の最新インタビューや清水穣、トム・ホーラートによる論考、ベアトリクス・ルーフによるインタビューなどから、ティルマンスがたどり着いた写真表現のあらたなステージに迫っていく。
写真表現の新境地を切り開いてきた、ティルマンスが見せる“あたらしい世界”。『BT BOOKS ヴォルフガング・ティルマンス』は、トップランナーでありつづける彼のクリエイティビティの進化を見つめることができる1冊だ。