ART|村越としや写真展『木立を抜けて』
LOUNGE / ART
2014年12月5日

ART|村越としや写真展『木立を抜けて』

ART|亡くなった祖母の影を追うように撮影された実家周辺の風景

村越としや写真展『木立を抜けて』

写真家の村越としや(むらこし・としや)による個展『木立を抜けて』が、5月11日(土)まで、港区六本木のタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムで開かれている。村越としやが故郷である福島県須賀川市を撮影した、15点の未発表作品が展示される。

Text by YANAKA Tomomi

「故郷の小さな風景が美しい記憶になっている」

1980年生まれの村越としやは、現在東京を拠点に活動を展開。2006年からは故郷を被写体に選び、そこで過ごした記憶をなぞるように継続的に撮影。東日本大震災以降も故郷、福島の姿にシャッターを切りつづけている。

今回の『木立を抜けて』展は祖母の死を経験したことで、地元の風景を撮ることと、家族との思い出がリンクするようになった時期、2009年の作品。これまでに出版した写真集『雪を見ていた』(2010年)、『土の匂いと』(2011年)につづくシリーズとしてまとめられている。また、今回の展覧会の写真などを収録した写真集『木立を抜けて』も刊行された。

ART|村越としや写真展 02

2009年1月に余命3カ月と宣告された祖母の写真を少しでも残そうとたびたび帰郷した村越としや。しかし、やせ細ってゆく祖母の姿にカメラを向けることができなかったという。ただ、実家に帰るたびに祖母の影を追うように実家周辺の撮影を重ね、4月に祖母が他界したあとも撮影をつづけた作品が会場に並ぶ。

「ひとの記憶は少しずつ薄れてしまうけど、祖母と過ごした故郷の小さな風景、そこに刻まれた記憶の欠片はきっとこの先も残っていくんだと感じた。それまではどんなに変哲もなかった風景でも、いまとなっては美しい記憶になっている」と語る村越としや。並べられる写真は、私たちの記憶にある普遍的な家族への愛、幼き頃の原風景に対する懐古を呼び覚ますこととなるだろう。

村越としや写真展『木立を抜けて』
期間│4月12日(金)~5月11日(土) ※日曜、月曜、祝日は休廊
時間│11:00~19:00
会場│タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム
東京都港区六本木6-6-9 2F
Tel.03-6447-1035

村越としや写真集『木立を抜けて』
サイズ│H18.3×W15.5センチ、40ページ
掲載作品│19点
発行│TAP/タカ・イシイギャラリー
価格│2520円

           
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