ART│ハンブルグを拠点に活動する小笠原美環の個展『beyond silence』

ART│作品に大きな影響を及ぼした震災以降の新作20点を展示

ドイツ・ハンブルグを拠点に活動するペインターの小笠原美環による個展『beyond silence 』が4月11日（木）にはじまった。5月18日（土）まで彼女の作品にも大きな影響を与えることとなった東日本大震災以降に描かれた新作20点が紹介される。

Text by YANAKA Tomomi

Anfang 2011 190 x 150cm カンバスに油彩

20年前からハンブルグで制作をつづける小笠原美環さん。静謐な室内空間や光と闇のコントラストが印象的な風景など、何気ない日常の光景をみつめているなかで深い精神世界に迷い込んだような錯覚を呼び起こす絵画で知られている。

東京では3回目となる今回の個展では、2011年以降の近作や新作を展示。これまで常に世界が直面する“大きな物語”と個人の“内なる物語”を対峙させることで、目には捉えられない世界を築き上げてきた彼女にとって、東日本大震災や原発事故はいまだかつてないほどの大きな衝撃を与えることとなった。

その衝撃は子ども時代の彼女の記憶にさえ揺さぶりをかけ、作品には彼女の初期に見られたように再び純粋な少女の姿や、未知の闇におびえる子どもの姿が多く見受けられる。一方、室内の光景など静的な世界を描いた絵画では、より研ぎ澄まされた透明感のある表現が追求された。

自らの内的世界への扉でありながら、同時に宇宙を映す鏡でもある小笠原美環の絵画。彼女が描きだす深い闇、あるいは光に満ちたかなたの場所の奥にある深淵な思索の空間を漂ってみてほしい。

小笠原美環個展『beyond silence』
日程│4月11日（木）～5月18日（土）　※日曜、月曜、祝日は休廊
時間│12:00～18:00
会場│SCAI THE BATHHOUSE
東京都台東区谷中6-1-23
Tel.03-3821-1144