ART│マリオ・ジャコメッリ写真展『THE BLACK IS WAITING FOR THE WHITE』
LOUNGE / ART
2014年12月8日

ART│マリオ・ジャコメッリ写真展『THE BLACK IS WAITING FOR THE WHITE』

ART│強いコントラスト、苦悩を詩的で奥深く普遍的なものにする力

マリオ・ジャコメッリ写真展『THE BLACK IS WAITING FOR THE WHITE』

「白」と「黒」を見事に操り、強烈なハイ・コントラストで「生」と「死」に立ち向かった鬼才マリオ・ジャコメッリの写真展『THE BLACK IS WAITING FOR THE WHITE』が、3月23日(土)から5月12日(日)まで恵比寿の東京都写真美術館で開かれる。

Text by YANAKA Tomomi

前回の回顧展ではなかった詩の世界を写真で表現する『シルヴィアへ』も展示

『THE BLACK IS WAITING FOR THE WHITE』 02

「私にはこの顔を撫でてくれる手がない」より © Archivio Mario Giacomelli, Senigallia

組み合わされた写真群で物事の本質へと迫ろうとする独創的な写真家ジャコメッリは、1920年イタリア生まれ。アドリア海に面した町セニガッリアでの貧しい家庭で育った彼は、幼少時に父親を失う。そして、ホスピスで洗濯婦の仕事をみつけた母について回り、小さいときからホスピスに出入りし、人生の終わりという残酷な光景、抗うことのできない老いを目の前にしてきたという。

その後、ジャコメッリは若くして印刷の仕事をはじめる。名刺やレターヘッドなどの印刷をしていくなかで、白地に活字で記される黒、光と影がくっきりと織り成すありように慣れ親しんだ彼は、1950年代から印刷所の仕事と並行して、休日にカメラを構えるようになる。

暗室で長い時間をかけ試行錯誤の末生み出された、トリミングや覆い焼き、多重焼付けなどのジャコメッリならではのプリント。そこには一枚一枚に現れたくっきりとしたライン、根源的な感情、突き詰められた想いのなかにはたぐいまれな一貫性と詩情、幻想的なちからが表現されており、その活動は死を迎える2000年までつづけられた。

東京都写真美術館では2008年に約140点で構成し、大きな話題を呼んだ本邦初の回顧展を開催。つづく今回の展覧会では、イタリア在住のジャーナリストで写真作品のキュレーターとして知られるアレッサンドラ・マウロ氏がキュレーションを担当。『ホスピス』『スカンノ』『神学生たち』『大地』などの代表作をジャコメッリが望んでいたかたちで展示される。さらに、前回の回顧展では紹介されなかったという、レオパルディの詩に触発され、詩の世界を写真で表現しようとした『シルヴィアへ』をくわえた218点を展示し、作家の本質へ切り込む。

 
『THE BLACK IS WAITING FOR THE WHITE』 03

「スカンノ」より© Archivio Mario Giacomelli, Senigallia

『THE BLACK IS WAITING FOR THE WHITE』 04

「自然についての認識」より © Archivio Mario Giacomelli, Senigallia

モノクロの強いコントラスト、苦悩を詩的で奥深く普遍的なものへとする力。死後10年を経た今もさまざまなアーティストに影響を与える鬼才ジャコメッリの写真世界を、この機会に旅してほしい。

マリオ・ジャコメッリ写真展『THE BLACK IS WAITING FOR THE WHITE』
期間│3月23日(土)~5月12日(日) ※月曜休館。月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜が休館。
ただし、4月30日(火)は開館
時間│10:00~18:00
会場│東京都写真美術館 B1F展示室
東京都目黒区三田1-13-3
Tel.03-3280-0099
観覧料│一般1000円、学生800円、中高生、65歳以上600円

           
Photo Gallery
           
  • ART│マリオ・ジャコメッリ写真展『THE BLACK IS WAITING FOR THE WHITE』
        BRAND INDEX