第52章 日本経済の強味、独自性を知る
第52章 日本経済の強味、独自性を知る
文=今 静行
総崩れの世界経済、日本も例外ではない
無茶苦茶な話だ。返済能力のない人たちにサブプライムローンという安易な貸し付けが横行し、さらにそれを証券化した上、いい加減な格付けで多くの人たちを信用させ世界中に売りさばいてきた。
要するに住宅向けサラ金そのものといい切れる。背景には土地や家屋は永久に上がり続けるという思い込みがあった。
無限に上昇し続けるものなどあり得ない。イージーな貸し付けは焦げつき、すべての金融機関(銀行・証券会社など)がアッという間に破綻、倒産した。これがアメリカ発、世界金融危機である。
投資より貯蓄を重視する日本人の国民性もあって、アメリカのうまい話に飛びつくようなことを余りしなかったので、比較的、被害は少なかった。
しかし、世界的金融危機は不況をもたらしている。外需依存つまり輸出に精出している日本経済に対する影響は強く、日本も百年も一度といわれる不況のさなかに立たされているとみていい。
他の諸外国とは違う日本の“良さ”とは……
なにはともあれ、ここに一つの数字を示したい。日本の家計(個人)の金融資産残高は最新の2007年確定で1544兆8347億円。約1500兆円とおぼえておくといいだろう。
3年前の2004年の1430兆円に比べ115兆円も増加していることがわかる。金融資産がこの大不況の時代に増加しつづけている先進国は日本だけである。外国から借金もしないで自力で消費支出や住宅なども建てられるということである。
こんな国は日本だけであり、強味そのものである。
さらに日本の貿易は年間で約11兆円の黒字国である。2007年の数字をみてみよう。
輸出は約84兆円に対し輸入は73兆強。輸出から輸入を差し引いた貿易黒字はざっと11兆円になる。恒常的に日本はずっと貿易黒字国だ。大変なプラス要因と受け止めてよい。参加までにあげておくと、日本と貿易額(輸出、輸入額の合計)が多い国は中国がトップで次いでアメリカ、韓国、台湾、オーストラリア、タイなどの順になっている。
留意しておきたいのは2007年には、中国がアメリカを抜いて最大の貿易相手国になったという点である。
人権、宗教問題のほとんど無い国ニッポンと治安の良さ
日本には人権、宗教問題は無いといっても差し支えないだろう。キリスト教と仏教徒が血を流すようなことはないし、同じ宗教同志が暴力沙汰を起こすことは無い。このような国は世界でも稀な国といえる。絶対的な強味の一つといい切れるだろう。
文盲率ゼロ、つまり識字率100%という教育水準の高さも世界に誇れるものである。
教育は“百年の計”というが、まだ貧しかった明治、大正時代、そこに町があり村があれば小学校や文教所をつくり読み書き、計算ができないような人が一人もいないようにわれわれの先輩は教育に全力投球した。これが今日の繁栄につながっていることを片時も忘れてはならないと思う。マネーがすべてというアメリカとは本質的に違うことを心してほしい。