第45章 日米経済の決定的違いは家計部門
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2015年5月7日

第45章 日米経済の決定的違いは家計部門

第45章 日米経済の決定的違いは家計部門

文=今 静行

“自己責任”最優先の米国が巨額な公的資金注入

アメリカ発の金融危機は世界的規模に広がり、いっこうに沈静化する気配はありません。危機回避のため米政府が75兆円規模の公的資金を拠出、金融機関の不良債権を買いはじめているのに先行きは不透明感でいっぱいです。
何事も自己責任でやれ、自助努力がすべてといい続けているアメリカとしては税金をつかっての大手金融機関の救済に乗り出したのは、異例中の異例といえます。もっとも米市民の間からは“われわれの税金を使って大企業を救済することに絶対反対だ”という声もあがっています。“百年に一回あるかないかの大不況”と指摘する米国の学者、金融マンもいるほどです。

景気を左右する消費支出と日米の違い

見落とせないのは、景気のカギを握る家計の状態です。日本とアメリカでは個人金融資産の中味が全く違う点です。
景気を左右する消費支出はアメリカでは国内総生産の70%を占めております。日本は60%弱です。家計がいっせいに消費に向えは景気は疑いもなくよくなります。公共投資とか住宅建設がよく進めば景気を上向かせることができるといいますが、国内総生産に占める割合はせいぜい数%から10%足らずです。
個人の消費支出と比べようもないほど影響力は低いのです。そこで家計マネー(個人金融資産)の日米比較してみましょう。
日本の家計マネーは約1600兆円あります。その半分は預貯金で占めています。株式投資信託などは10%足らずです。
一方、アメリカの家計マネーは約4300兆円(約43兆ドル)です。その内訳をみると、預貯金のシェアーは一割前後に過ぎません。一番多いのは元本保証なしの株式投資信託40%以上です。

株に集中する米国の家計マネー

すでに理解ずみですが、元本保証無しの金融商品である株に集中しているのです。したがって今回のような株の暴落による痛手は、日本の家計と比べようもないほど大きいのです。アメリカの家計は株の暴落で消費をさらに抑えることでしょう。
不況から立ち直るには、少なくても3年ぐらいはかかるでしょう。アメリカに比べ、日本は圧倒的に今回の金融危機による影響力は少ないとみていいのです。その証拠に日本の金融機関をはじめとする大企業は海外の銀行、証券会社を買収した
り巨額な出資をしているのです。諸外国は日本からの融資を求め、日本銀行は多額の米ドルを用意し、世界の市場に貸し出しています。
日米の不況をアメリカと同一線上に見てはいけないことを知ってほしい。不景気だけど日米両国は差があるということです。

           
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