第44章 悪知恵の資本主義とサブプライムローン
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2015年5月7日

第44章 悪知恵の資本主義とサブプライムローン

第44章 悪知恵の資本主義とサブプライムローン

文=今 静行

サブプライムローンは“不動産向けサラ金”そのもの

米国のサブプライムローンの焦げつきが発端となった金融危機は世界経済全体に広がりをみせ、いっこうに落ち着く気配はない。むしろ長期にわたって不安が増大するという見方がマトを射ていると思います。深刻そのものです。
この社会に改めてサブプライムローンの実態を身近かに理解することが極めて大切だと思います。どこの国の金融機関も同じですが、個人や企業に融資する場合、融資先の所得、収入や担保物件を調べます。

住宅向け融資のサブプライムローンはおカネを借りる資格もない低所得層を対象にアメリカの金融機関が競って融資するローンです。その代わり金利はベラ棒に高いのです。
よく知ってほしい。要するに「不動産向けサラ金」そのものです。くどいようですがサブプライムローンは不動産を対象にしたサラ金なのです。住宅ブームのような状態が続いていたアメリカにとって貸す側の銀行も借りる側の個人、法人も不動産はいつまでも値上がりを続けると信じ込み金融機関は積極的に貸し出し、個人は借り易い住宅資金ということで借りまくりました。それが日本のバブル崩壊と同じようなことになり、金融危機をひき起こしているのです。

証券化の手口を見抜く

ひたすら利潤追求に明け暮れるアメリカ経済は、金融工学とかデリバティブズ(派生商品)などというもっともらしいネーミングをつけてサラ金並みの法外な金利を使ってさらに有利な儲ける仕組みを編み出したのです。プライムローンの証券化です。じつはサブプライムローンは金融機関と借り手の間でひとつのビジネスは完結しているのです。しかし利益至上主義に徹しているアメリカ経済はより利益を出す方法がないかとあの手この手をひねり出しました。
それが証券化です。その手口はかりに金利10%のサラ金だとします。こんどは金利5%の額面1万ドルとか5万ドルの債権(証券化)をつくり、市場に売り出すわけです。売り手の金融機関にとっては、10%サラ金の半分にあたる5%金利の債権にあてるわけです。10%の金利は5%と低くなる(銀行側にとって)のですが、実質的には1万ドルとか5万ドルの債権を売ることによってぼう大な資金がころがりこむのです。そのオカネで株などに投資するのです。

不動産不況で、すべて狂ってしまった

金融工学の成果などといいますが、借り手の不動産が値上がりをつづけ、10%の金利や元金が間違いなく返済されるというのが大前提です。実態は焦げつきが発生し銀行にはおカネがはいらなくなりました。その代わり借り手の不動産を担保にとっているので、イザという時は売却するという手はずだったのですが、ひどい住宅不況で完全に目算が外れニッチもサッチもゆかなくなっていまったというのが実情なのです。

住宅バブル崩壊といっても日米では天と地の違い

ここでよく言われるのは日本も住宅バブルを経験して立ち直ってきたのだから、アメリカも日本を参考にしたらいいのにという見方です。とんでもない間違いです。日本の場合は日本一国だけ対応すればよかったのに対し、アメリカは世界中を相手に対応しなければならないのです。証券化商品に仕立てて全世界に売りさばいていたのです。四苦八苦しているアメリカの事情の深刻さは想像以上のものであります。ズバッといえば悪知恵の資本主義の始末といえるでしょう。額に汗して働くという姿勢というか理念を決して失なってはいけないと思います。

           
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