第42章 不況脱出の出口は遠のくばかり|急落の株価が景気への不安を深める
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2015年5月7日

第42章 不況脱出の出口は遠のくばかり|急落の株価が景気への不安を深める

第42章 不況脱出の出口は遠のくばかり
急落の株価が景気への不安を深める

文=今 静行

ダブルパンチの家計、企業経営

原油の大幅な値上がり、穀物価格の上昇と世界中が物価上昇に悩まされています。当然のことですが景気のけん引力となる消費支出は低下しています。日本も例外でなくダブルパンチにあえいでいます。世界経済に最大の影響力を持つアメリカの実情は落日の一言で表現できます。日本をはじめとする他の先進諸国におカネを貸してくださいと助けを求めているのです。景気の動きをよく反映する株式市場でなにがおきているのか、数字をあげて冷静にその流れをみてみましょう。

日経平均株価1万円割れ

2008年10月初旬の日経平均株価は1万円を割ってしまいました。株の売買を専門とする市場関係者は、どんなに下がっても1万500円を下回ることはないといい続けてきたのに、あっさり1万円台を割ってしまいました。4年8ヶ月振りです。アメリカの大企業で構成するニューヨークダウ工業株平均も4年振りに1万ドルを割ってしまいました。

もともと株式投資はギャンブルの最たるものであり、上げ下げがあって当たり前なのですが、それにしてもその急落ぶりは目を覆うばかりです。ことしはじめ(年初)、経財界の有名人や株式専門家といわれるプロの予想では高値1万6000円ぐらい、下値はどんなことが起きても1万1000円を下回ることはないというのが共通の見方でした。バブルが崩壊してざっと20年間、株式のプロは毎年強気の予想をし続けてきましたが、一挙に砕け散ってしまいました。

分かり易い株価の動きと景気の関係

問題に景気の動向を見定める有力指標である株価かどうなるのか誰も確信がないのです。1万円の下値をきって8000~9000円になる可能性は十分考えられることです。(注:原稿を書いた時点では9000円台でした)一方で1万2000~1万3000円台に回復するという見方もあるでしょう。暴騰暴落の世界、それが株式市場だということをここで改めて心してほしいと思います。

閣僚が率先して投資をすすめてきた

それにしても今年の春ごろ政府の金融担当閣僚が声を大にして、「貯蓄を投資に回してほしい。個人の金融資産を株式に回せば、経済活動の効率が上がって企業収益も拡大します。家計にも恩恵をもたらす」と旗を振り続けました。

そのようなことを信じて株に向ったらショックで立ち上がれないほどひどい目にあっているのです。大臣だけでなく証券会社銀行も同じような呼びかけを私たちにしてきました。分かり易くいえば競馬、競輪の予想屋と少しも変わらないということです。最後に私の印象にいつまでも残っているある大手証券会社役員のホンネを紹介しておきましょう。その友人は「株が上がっても下がっても間違いなく手数料をいただくビジネスがベストなのです」その通りです。元本保証なしの金融商品である株式投資には慎重をきしてほしいものです。株価動向について全く見通しが立たないのか、現在の日本経済そのものです。世界経済にも当てはまります。よく噛みしめて自分の生活設計をたてて下さい。

           
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