第34章 在日米軍とその家族の日本に寄せる思い
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2015年5月7日

第34章 在日米軍とその家族の日本に寄せる思い

第34章 在日米軍とその家族の日本に寄せる思い

文=今 静行

在日米軍司令官の本音

去る4月中旬、日本記者クラブ(ジャパンナショナル・プレスクラブ)に在日米軍司令官エドワード・ライス(Edward A.Rice Jr.)を招いて昼食会を開きました。生粋の黒人司令官(中将)で、ハーバード大学行政学に留学もしており、その経歴をみるとジェット機の操縦時間も3000時間を多岐にわたっている最優秀の米国軍人です。ことし2月に日本に赴任したばかりです。なぜここでライス司令官を取り上げたのかと疑問に思う人もいるでしょうが、ふたつの面で非常に興味あるお話を聞くことができたからです。ひとつは昼食後の冒頭でライス司令官は「在日米軍とその家族は心から日本に勤務することを喜んでいる。ながい歴史のある日本の文化、風習を学ぶことができ嬉しく思う」と日本で働くことに喜びをあらわしていました。

米軍は世界各地に駐留していますがその中にはロケット砲が飛びかったり、テロの恐怖にさらされている地域が多くあります。その点、日本は治安が良く、テロの心配もなく、おだやかに毎日を過ごせる国です。新任間もないライス中将は、その思いを冒頭に述べたのだと思います。軍人はつねに戦争に対応するための職業ですが、平和こそベストということを反映したのでしょう。

戦争とコスト意識

本論の日米共同問題については日米両国の立場と協力関係など率直に所信を述べていましたが、多額な資金と必要とする防衛の要の情報機器の整備や武器など軍用機器の購入についての質問に対してライス司令官は次のように答えておりました。「すべていちから日本側が準備用意するということになれば、莫大なコストがかかる。米軍にかなりの部分をまかせた方がコストは比較にならないほど安くなるでしょう」もともとアメリカ経済はコストを引き下げるための最良の方法を最重視していますが、なにか軍事部門にも共通しているように私たちは受け止めました。アメリカはいまイラク戦争で完全に泥沼にはいりこみ膨大な軍事費支出に悩んでいます。
戦争も民営化の傾向が強まっています。たとえば派遣会社がアメリカの賃金の数倍もの数字を示してトラック運転手を募集、イラクで軍関係の食糧品や米軍用の生活用品などを輸送するという業務が実際に行われています。

戦争というか防衛にもコスト意識が必要であることを同司令官からうかがい知る思いがしました。これがふたつ目の印象深いお話でした。いずれにしてもトラブルでなく平和であることが最優先事項であることを知らされました。有意義な会見になりました。

           
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