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2015年5月7日
第31章 お年寄り泣かせのもうひとつの側面
第31章 お年寄り泣かせのもうひとつの側面
文=今 静行
国民皆保険の誇りはどこへ……
日本は国民皆保険の国ということで国民ひとりひとりは誇りを持ち、諸外国からはうらやましがれてきました。しかしここにきて、つまり後期高齢者医療制度の発足でがらり様相が変わってしまいました。後期高齢者の保険料は全国平均で月ざっと6000円、それに介護保険料4000円加わり合計1万円の支出になります。年金収入が月数万円の老人にとっては大きな重荷になります。
かつては老人天国といわれたほど、手厚く扱われたのが夢のようです。ここ数年の間に老人医療負担金は入院も外来も増え続けてきております。さらに扶養家族から引き離された75歳以上の老人は200万人もいるのです。なにも後期高齢者ばかりではない。65歳~74歳の「前期高齢者」と呼ばれる人たちも国民健康保険料の天引きが始まるのです。
保険料値上げの背景
こまったことに65歳前後で定年を迎えた層が急増し、すべての人たちが会社を退職した後、健康保険から国民健康保険に集中してきます。退職者医療制度廃止の影響もあって国保会計ががらり変わり、保険料値上げに踏み切るのです。サラリーマンの組合健保(組合管掌健康保険)も政管健保(政府管掌健康保険)も値上げラッシュです。
もともと国民健康保険の加入者は農業や自営業者が半数以上を占めていたのですが、サラリーマンの退職者の急増やアルバイト、フリーターなどのいわゆる非正規社員の加入も増え続けています。地方自治体は保険料値上げで対応しています。保険料アップで生活苦のおちいり、病院に行く回数を減らしたり、我慢する人たちも増えているのが実態です。福祉大国ニッポンは遠のくばかりです。政治の変革を私たちの手で実現することに改めて強い関心を持つべきでしょう。