第30章 家族意識を分断する──後期高齢者医療制度
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2015年5月7日

第30章 家族意識を分断する──後期高齢者医療制度

第30章 家族意識を分断する──後期高齢者医療制度

文=今 静行

政府の意図するもの

年金から保険料を天引する後期高齢者医療制度の第一回の特別徴収か4月15日から始まりました。極めて評判が悪い。理由は数え切れないほどあります。保険料の引き上げ、医療の低下、国民への周知徹底がないままのスタートに伴う混乱、世界に例を見ない年齢差による医療制度の二分化など、上げればきりがない。ここで大切なのは、政府の意図です。一口でいえば急ぎ足で押し寄せてきている少子高齢化は確実に医療費増大をもたらすので、政府の社会保障費を抑制するために、今回の制度を創設したのです。これが本音です。

見落とせないのは“家族意識の分断”

考えてほしい。これまでは世帯主が年老いた両親や妻、子供達を扶養家族としてまとめ、健康保険料など支払ってきました。それが75歳以上を後期高齢者と名づけ、家族から切り離した形にして独自の保険証を作成したのです。おじいちゃん、おばあちゃんは、もううちの扶養家族ではないのですという医療制度になったのです。
明らかに家族意識、家族一体化の崩壊そのものと受け止めるべきでしょう。政府支出には公共事業、防衛費、教育部門など多岐にわたりますが、一番手のつけやすい弱い高齢者にマトを当てたといっても言い過ぎではないでしょう。

大衆は愚かでない

社会福祉の充実は各国政府にとって最大の関心事になっています。日本政府はあえて年齢差による医療制度に踏み切りました。国民の猛反対にあうのは確実でしょう。現にいまの福田政府に対する風あたりは強くなるばかりです。マスコミ大手各社の世論調査でも支持率は軒並み30%を割り込み危機的状態に追い込まれています。

大衆は愚かでないことを示しています。早晩、後期高齢者医療制度は大幅な手直しか廃止になるでしょう。よく実態を見極め、私たちの声を政治に反映すべきです。

           
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