ACT 6|BE@RBRICK meets TOYO KITCHEN 前編
ACT 6|BE@RBRICK meets TOYO KITCHEN 前編
メディコム・トイとトーヨーキッチンによる
「非常に高級なTOY」づくり、スタート──
「非常に高級なTOY」づくり、スタート──
メディコム・トイが世に生み出してきた立体物たちは、たんに「玩具」としてまとめられるものではない。
アニメ、特撮といったいわゆるキャラクターモノだけに頼ることなく、本来の玩具メーカーが一般的に行う作業とはまったく異なるアプローチ方法や、さまざまな異分野とのコラボレーションにより誕生したフィギュアたちは、日本のみにとどまらず世界にまでその名を轟かせている。
さて今回はいまやキッチンだけでなく、ライフスタイルの演出まで手がけてくれるインテリアブランド、トーヨーキッチン アンド リビング株式会社の代表取締役である渡辺孝雄氏にご足労いただき、そんなコラボレーション群に新たに組み込まれる企画対談が実現した。
メディコム・トイ代表取締役 赤司竜彦さんとの掛け合いにより生まれる柔軟な商品の発想、新しいコラボレーションの内容を全2回にわたってお贈りする──まずはその商品発想の序文をお楽しみください。
文=秦野邦彦まとめ=高橋猛志(本誌)写真=北原 薫
渡辺 私が最初にBE@RBRICKを見たのはヨーロッパなんです。ミラノにファッションと家具と小物とをひとつのスペースで売ってる店があって、そこの中2階と奥にBE@RBRICKがいっぱい並んでいるのを見て、すごいなと思って。
赤司 ありがとうございます。
渡辺 そのときは日本製だと思わなくて。これはベルギー製だろうと。
赤司 キャラクターが日本製っぽくないとは、よく言われますね。
渡辺 それからオリジナルがあるときいて興味をもったんです。たまたまOPENERSから伊勢丹のMerry Green Christmasの話をいただいて、「やるやる! ぜひメディコム・トイさん紹介して」って。
赤司 渡辺社長も僕もOPENERSで連載をもっていた関係もあって、トーヨーキッチンさんのショールームにお邪魔させていただいたんですよね。あのときは通常のキッチンの概念とはまったく別なところでお仕事なさってらっしゃるというか、こんなにクリエイティブなキッチンがあったんだって驚きました。
渡辺 変でしょう(笑)?
赤司 いえいえ(笑)。当たり前の話なのかもしれないですけど、どんな世界にも匠の技というのがあって、そこに表現や創造が生まれるんだなって。トーヨーキッチンさんが自由闊達にいろんなことをやられてらっしゃるのをみて、すごく刺激を受けました。それ以来、僕がやっているアパレルブランドの展示会に来ていただいたり、渡辺社長にはいろいろご懇意にさせていただいてます。
渡辺 以前から私はインテリアのなかにフィギュアとかコミック系のモチーフが入ってきていいんじゃないかと思ってたんですよ。日本のキッチンって妙に真面目すぎるんですよね。うちがこんど出す新製品は『KIRAKIRA』っていうんですけど、デザインイメージは「ラピュタ」なんです。
赤司 たしかに浮遊してますね!
渡辺 扉のキラキラした部分は飛行石のイメージでね。インテリアって、ある意味「遊び」の世界じゃないですか? そういう思いはずっとあって。ほかにもアメコミ風のキャラクターが描かれたモザイクタイルをイタリアから輸入しました。こんど7月の新製品のプレゼンテーションで使うんですけど。
赤司 アメコミ風のタイルをキッチンにですか? それも面白そうですね。
渡辺 最近「Casa BRUTUS」でも“家具もアートだ”って特集をやっていましたが、たとえばアレッサンドロ・メンディーニの、金色のモザイクタイルでつくった巨大なブーツが乗っけられた収納ボックスなんて面白いですよ。価格が一千万円とかするんですけど、ブーツには何の意味もない(笑)。
赤司 なるほど。
渡辺 家具の世界には、いわゆる具象的なモチーフを使っていくっていうのが昔からあることはあるんです。だから僕は3、4年後ぐらいにはフィギュアがインテリアのなかに取り入れられてくるんじゃないかと思ってるんです。だから、BE@RBRICKの椅子とかつくると面白いと思いますよ。
双方のプロジェクトを突き詰めると浮かび上がる、「TOY」というキーワード
赤司 いわゆるトーヨーキッチンさんで扱われているようなインテリアパーツと、玩具という分野のどこに接点があるのかなと考えたとき、浮かんでくるのは本当に機能性の部分を突き詰めたカタチとある意味対極にある「JOY」の部分なんです。
渡辺 いわゆる機能ばかり考えると、カタチが面白くなくなるんですよ。日本はバウハウスの影響で、カタチに理屈がなけりゃいけないっていう思いが強すぎる。でも、考えてみれば人間のカタチってひとつなんで、お尻のカタチが変わらない限り椅子のカタチは変わらないわけです。たとえば、マッキントッシュの椅子とかフランク・ロイド・ライトの椅子って決して座り心地良くないですよ。でも、それはインテリアの装飾の一部という考え方からすれば関係ないんです。
赤司 玩具というのはJOYの部分を突き詰めてったカタチなんですけど、家具とかキッチンまわりのものもJOYを突き詰めていくと、どんどんTOYにちかくなってくる気がしてならないんです。だから、渡辺社長から最初にショールームにご招待いただいたときに、これは非常に高級なTOYだって思ったんです。TOYなんていったら失礼なのかもしれないんですけど。
渡辺 いやあ、TOYですよ。
赤司 本当にキッチンのカタチをしたTOYだったり、家具のカタチをしたTOYだなあと。非機能的な部分だろうが、高額だろうが関係ないんですよね。それが家にあることによって自分の心が満たされたり、友達をよんでいっしょに過ごす楽しい空間や時間が共有できるのであれば、これはあまり座り心地とか関係ないんだろうなと。
渡辺 キッチンも料理する切り口だけで考えると、たんなる業務用になっちゃってつまらないですよ。たとえば、さっきお話ししたKIRAKIRAのハンドルは「ローレット仕上げ」といって、要は旋盤で切り込んで網の目状に出したものなんですけど、このローレットが大好きなもので、いつかキッチンの部品に使ってやろうと思っていたんですけど、これ、えらい高くつく割には何の意味もないんです(笑)。
赤司 何の意味もですか? 滑りにくいとかは?
渡辺 ありますけど、多少くらい滑ったっていいでしょ(笑)。ここに価値を感じるかどうかは人によるでしょうけれども、ともかくこれ、出来たときに頬ずりしたくなったほど気持ちいいんですよ。触った感触が。
赤司 そのお気持ち、すごくわかります。商品の最終サンプルあがったとき、思わず頬ずりしたくなりますよね。トーヨーキッチンさんの商品は、こまかいギミックの一個一個から愛を感じるんです。こういう価値観やものの捉え方でお仕事をなさってらっしゃるんだったら、ぜひなにか面白いお取り組みをいっしょにさせていただけないでしょうか、なんていうところから、だったらBE@RBRICKをトーヨーキッチンさんといっしょに作るっていうようなところに、うまく話をもってけないかな、なんてことを考えてました(笑)。
渡辺 うちは逆にやりたいですから(笑)。
赤司 それで、じつはいま極秘裏に進行中の企画があるんですよね……。
あの素材でBE@RBRICKを製作!? 極秘で進められていたプロジェクトを次回、ついに公開します。