第29章 罪深い超低金利政策の実態
第29章 罪深い超低金利政策の実態
文=今 静行
もうひとつのサブ・プライム住宅ローン
タダで仕入れて、それにマージンをのせて商売する。売り手は損するはずがない、儲けで笑いがとまらないでしょう。これとおなじような状態が、いまの日本の金融政策です。超低金利が長くつづいています。景気を浮揚させるために、ゼロ同様の超低金利政策を日本政府がとっているためです。金利を低くして企業がおカネを借りやすいようにすれば、それを使って設備投資が増え、生産も上がるだろうという図式です。
私たちが銀行、信金や郵便局に預けるさいの金利は普通預金、定期預金を含めて、すべて0%~0.3%台です。0.1%の金利水準なら、10万円を1年間銀行に預けて預金金利100円です。ここから20%の税金を引かれるので、手取り1年間で80円です。コーヒー一杯はおろか、100円ショップでも役に立たないのです。ゼロ金利といっても言いすぎではないでしょう。
異常としかいいようのない超低金利
ある私立大学の外国人教授(アメリカ人)は、私に向かって「日本人はおとなしいですね。アメリカなら騒動が起こります」と語ってくれたことが大変印象に残っています。その印象をさらに深めるために、長期金利の目安となる10年物国債金利を国際比較してみましょう。
アメリカ、イギリス、ドイツなど欧米諸国の10年物国際金利は5-6%です。これに比べ日本の場合2%弱です。しかも1998年以降、年率2%を超えたことがないのです。長期にわたる低金利時代がつづいていることをあらためて知ることができます。各国に比べ異常な低さがつづいているのです。
すべては政府の巨大な借金のせい
タダ同様の預金金利(消費者である私たちからの仕入れ値)に1-3%上乗せして、企業や個人に貸し付けた住宅ローンを組んでいるのです。あきらかに人並み(各国並み)でない低金利政策をつづけているのですか、その背景の一番手にあげなければならないのは、政府の膨大な借金残高にあるのです。
現在、国と地方をあわせた長期債務残高は約800兆円にのぼっています。国債という借用証書、地方債が発行する借用証書には、きちんと決められた利息をつけて元金を返済しなければなりません。当たり前ですね。
金利を少しでも上げれば、政府、自治体の負担は重くなるばかり。利上げで増える政府の支払いはハンパな額ではないのです。このような事情があって、私たちはゼロ金利状態をしいられているのです。
日本には投資する金融商品がない
そんな事情ですから、日本では好利回りの金融貯蓄商品など生まれてくるわけがありません。日本の超低金利のため国内で物色する金融商品がなく、しかたなく海外の商品に目を向けることになります。
専門家のなかには“だからまわりまわって化け物みたいなサブプライム住宅ローンに飛びつき、大怪我をするんだ”と自嘲気味に話す人もいるほどです。ひとつの真実をついていることを否定できません。
日本は、超低金利の金利政策をいつまでもつづけることは難しい。文字どおり人並み、つまり各国先進国並みの水準に近づけることが急務となります。とにかくこのまま日本からの資本流出かつづく状態は異常であり不健康です。つねに低い金利で泣かされている私たちも身近に低金利問題をとらえることが重要です。