第28章 惨たんたる公共事業予算──批判が多いのも事実だが
第28章 惨たんたる公共事業予算──批判が多いのも事実だが
文=今 静行
7年連続の削減
景気浮揚策の常とう手段といえば、減税と公共事業を増やすこと。戦後の日本経済はこのふたつに絞って突き進んできました。減税をすれば、浮いたぶんを消費支出にまわすだろう。また心理的にも明るさをもたらすことになるだろう。GDP(国内総生産)の約6割、圧倒的なウェイトを占める個人消費支出が増大し好景気に結びつくという見方です。
しかし現状はまったく逆の政策をとっています。これまでの減税措置をやめてモトに戻しています。増税そのものです。さらに消費税の大幅増税が待ち受けています。2、3年のうちに実施することが既定の事実となっています。
景気が盛り上がらないのは当然でしょう。それもこれも国と地方あわせて約800兆円にのぼる膨大な財政赤字のせいです。
とばっちりは公共事業に
もうひとつの景気刺激策となる公共投資関連予算は、これも巨額な財政赤字のせいで毎年削減が当たり前となっています。
たとえば平成20年度の公共事業予算は、ざっと6兆400億円で、前年比で2.1%減となっています。7年連続の削減です。平成10年度のピーク時に比べると、じつに約4割も落ち込んでいるのです。しかもお先真っ暗です。公共工事が増えるアテは少しもないのです。建設土建業界に同情するつもりはありませんが、これでは中小の下請け土建業者がバタバタつぶれていかざるを得ないのです。
無論、公共事業に対してはいまも続いている談合や官との癒着など、よからぬケースがつぎつぎと明るみに出ています。公共事業に批判が多く出ていることを否定できません。だからといって、公共事業を減らせばよいというものでもないでしょう。国や地方自治体が社会資本整備に取り組まなければならない公的分野はまだまだあるはずです。
既存整備の大量更新が迫っている
道路、空港、港湾の一体化した設備、地震や水害など災害に備えた防災事業などたくさんあります。見落とせないのは既存施設の補強、整理、保持の重要性。経済が拡大しつづけた高度成長期に建設した大量の社会資本が、これから更新時期を迎えるのです。手直し補強は安心した国民生活をおくるためにも手を抜けない。それも公共事業の分野です。公共事業予算を削ればいいというものではないのです。より効率的な事業推進に、業界だけでなく私たちひとりひとりが関心を持つ必要があるのです。