第25章 他人事ではない、サブ・プライムの大きな落とし穴
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2015年5月7日

第25章 他人事ではない、サブ・プライムの大きな落とし穴

第25章 他人事ではない、サブ・プライムの大きな落とし穴

文=今 静行

愚かさだけが残る金融機関

アメリカのサブ・プライム住宅ローン問題が重くのしかかってきています。住宅ローンの不良債権問題にすぎないのですか、これほど日本経済の足を引っ張るとは考えてもいなかったのです。

それは、ワケのわからない高度金融技術なるテクニックを用いて、ローンという債権を証券化し、世界中の金融機関に売りさばいたからです。
日本の銀行、信金や証券会社も目先の利回りに飛びついたのです。その損失額は6000億円以上ということです。大きな損失を被っております。いってみれば私達の預金(資金)が大損害を受けているのです。他人事ではないのです。

住宅価格は無限に上がり続けると信じたことのツケ

この機会に、あらためてサブ・プライムローンについて学習してみる必要があります。まず言葉の意味ですが、サブ(sub)はサブマネージャー(副支配人)とかサブ・キャップテン(副監督)の「サブ」のこと。補欠とか“次位の”という意味です。プライム(PRIME)は“最上”“極上”のことで、優れたという意味です。要するに優良顧客のことです。

したがってサブ・プライム住宅ローンは、普通というか、人並みの所得のない人、つまり金融機関からおカネを借りる資格のない低所得者や、過去に焦げつきなど問題を起した社会的信用度の低い層向けに貸しつけるローンのことです。銀行側は最初の2、3年は低い金利でスタートし、その期間がすぎる5年後、10年後には10-15%前後のひどい高金利にしました。低所得者層は住宅ブームもあって飛びつきました。

勘違いだらけの貸しつける側、借りる側

ここで見落せないのは、貸しつける側の金融機関も、借りる側の低所得者も、「住宅価格は必ず上昇しつづける」という思い込みが、すべての大前提になっていたことです。よく考えてみるまでもなく、住宅価格が果てしなく上がりつづけるようなことは絶対ないのです。日本の住宅バブルが身近な例です。

本当は、銀行も低所得者も、貸しつける、借りるという契約でひとつのビジネスは結実しているのですが、金融機関は巨大な低所得者向けの問題の多いローンをひとまとめにし、あやしげなほかの金融商品と組み合わせて証券化し、欧米の銀行や日本の金融機関に売りさばいたのです。
購入した欧米や日本の金融機関も、住宅はさらに値上がりするから、低所得者がローンを払えなくなったという最悪の場合には、住宅を差し押さえ、より高い価格で住宅を売れば、損することはないと決めつけ、各国に売りつけたのです。ところがアメリカの住宅事情は一変し、価格はどんどん下がりはじめ現在もさんたんたる状態にあるのです。

専門的知識を信じてはいけない

果てしなく値上がりするという思い込みは、貸す方にも借りる方にもあったのです。偉そうなことをいう金融の専門家も、その愚かさにいまごろになって気づいているのです。日本の銀行、証券会社も、アメリカのうまい話にのって証券化したローン債権を競って購入したのです。そのツケがいま大きな重圧となっているのです。いってみれば、新規の金融商品に手を出した銀行や証券会社の専門的知識は何の役にも立たず、大損失を被っているのが実態です。

とくに日本の場合、ゼロ金利にひとしいほどの低金利政策がつづいております。国内では優利な金融商品がないため、外国、とりわけアメリカの高利回りの金融商品を買い求めているのです。

困ったことです。それでは私たちは何を信用すればいいのでしょうか。いつも被害をモロに受けるのは個人(消費者)です。自分で正しく判断できるように努力する以外にないと言いきれます。

           
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