第15章 経済予測や株価予想が当たらないわけ
第15章 経済予測や株価予想が当たらないわけ
文=今 静行
「経済は生き物だ」を知る
景気の動きを予測したり、株式市場の流れを見定める場合、なにはともあれ私たちのまわりにたくさん出まわっている経済指標や株式指標を参考にするというのがごく一般的な手法となっています。
なかでも投資家といわれる層は、過去や現在のさまざまなデータを引っ張り出し、前から見たり、横からのぞいたり、裏側をひっくりかえしたりして自分なりの予想、あるいは結論を引き出します。
しかし全部といっていいほどその見通しは当たりません。投資家だけでなく研鑽を積み重ねた有能な学者や経済専門家、豊富な経験をもつ調査マンが膨大な資料をととのえ、最高の性能を備えたコンピューターを駆使しても、経済の諸現象をなにひとつ正確に見通せないのです。
いつの間にか「当たらずといえども遠からず」ならば百点満点、という考え方が大手を振ってまかり通るようになっています。
ドーナツをながめて「強気予想」と「弱気予想」
自分なりに予測したり結論を出した人たちを、大きく色分けしますと「強気の筋」と「弱気の筋」になります。強気の見通し、弱気の見通しです。
強気の筋と弱気の筋の違いは非常にユーモラスです。欧米では経済見通しや株価についてこんな話があります。
「強気筋はドーナツそのものをながめるのに対し、弱気筋はその穴をながめている」
目の前にあるドーナツをじっと見て、強気の人はドーナツの本体の大きさだけに集中し、穴があることをすっかり見落としているのです。反対に弱気の人は、ひたすらドーナツの穴だけを見て暗~くなっていくばかりです。
つまりドーナツがどんなに大きくても、そのぶん穴が大きければ普通のドーナツと変わらないのに、強気筋はドーナツの本体の大きさだけに気をとられ、逆に弱気筋はドーナツの穴だけを気にしているという一面的なものの見方を皮肉っているのです。
この強気と弱気というふたつの見方が出ることをダシにして分別くさく教えを導き出す人たちが本当に多いのです。「強気と弱気を足して2で割ってみる習性を身につけることによって、正しい予想が立ち、あなたの投資も成功する」というような言い方をします。
しかし経済や株式投資が決してこのように動かないことはくどくど説明する必要もないでしょう。日々変化する株価や外国為替の動きを解明しようとしても不可能なことを私たちはイヤというほど体験しています。
このような根本にあたる事項をよく理解して、損得を承知してチャレンジすることが肝要です。