第13章 株価はどうして決まる?
第13章 株価はどうして決まる?
文=今 静行
元本保証なしのさいたる金融商品「株式」
株式に対する関心は企業、家計を問わず大変な高まりをみせております。たとえば家計の貯蓄商品のなかで株価のウェイトが高い投資信託が目覚しい伸びを示しております。株に対する関心の高まりそのものです。
「株価」はどうして決められるのでしょうか? たいへん素朴な質問です。この素朴な疑問をしっかり理解することが株式投資の出発点なのです。
筆者はかつて民間ラジオ局のレギュラー解説者として金融、株式を含む経済全体の問題についてお話し、さまざまな質問に答えてきましたが、多くの質問のなかでつぎにあげるような内容のものが目立ちました。
「上下の幅が200円、300円もするのがたくさんあります。昨日と今日で会社の業績や経済状況が200円も300円も違うものなのでしょうか。こんなに上下すると株式が心配になってきました。なぜ株価は毎日大きく変動するのでしょうか」
夢中で株を売り買いしているうちに、フッと株価の決め方、つまり株の本質を知らなければということに気がついたのでしょう。ひとつの開眼であり、大きな前進といえます。
毎日の株式市場欄を見ても決して、この種の質問に対する答えは掲載されていません。いってみれば経済記事を理解するための基礎知識は表面上のことで、さらにその奥深く(裏側)にある「真実」を知ることによって初めて経済記事が私たちの血になり肉になるということです。
このことは株式だけでなく金融、財政、産業などあらゆる分野に当てはまります。国内だけでなく国際経済についてもおなじようにいえます。
教科書的表現と株価の決まり方
一般的には株価決定の要因には、
●企業の業績
●金融情勢
●外国人投資(外国人投資家の動き)
の3点に集約できます。言葉をかえていえば、業績相場、金融相場、外国人相場ということになります。
ここでしっかり理解してほしいのは、株式は元本保証のないさいたる金融商品です。よりわかりやすくいえばギャンブルそのものだという点です。
教科書どおりに株価が推移するなら誰も損するひとはいないでしょう。実態はギャンブルなのですから損した、
儲かったの繰り返しを百年一日のごとく続けているのです。したがって、お金にゆとりのないひとは株に手を出すべきでないと言い切れます。なにはともあれこのことをよく頭に入れてください。
とはいってもひとつの公式みたいなものは存在します。いつの時代も、株価の決め手になる材料はその会社の業績動向を一番手にあげなければなりません。
日常生活に置き換えてみればただちに理解できます。よい品物の値段が、悪い品物の値段より高いことは、
スーパーや近所の鮮魚店や青果店で私たちは毎日経験しております。
これは株式にそっくり当てはまります。業績のよい企業は、業績の悪い企業に比べ高い評価を受けます。その反映が株価に表れるのです。これが1番めの業績相場です。
2番めの金融情勢と株価の関係ですが、金融緩和期には金融機関、事業会社などの法人は余裕のある資金で株式を買いに出ます。需要(買い)と供給(売り)の関係で相場が上昇します。これが金融相場です。金融逼迫期には逆のかたちになります。
ゆとりある心、ゆとりあるおカネ
3番めの外国人投資家の売り買いによる影響ですが、日本の株式市場で圧倒的というか目をはなせない存在になっています。
近年(2006年)の株の動向をみますと、日本の株はわずか7%しか上がっていません。そのなかで外国人買いは半分くらいに達しています。
要するに外国人の売り買いで日本の株価が動いているといえるのです。
とりわけアメリカのファンドや機関投資家が目前の資金をバックに日本の株式市場で買いに出れば影響力が大きいだけに株価を上げ、反対に点とりに出れば株価を下げる働きに結びつきます。
2007年5月から外資系企業による三角合併が認められることになりました。株式交換による三角合併がOKということですが、日本の日経平均株価が1万7000円台なのに対し、アメリカのダウ平均株価は1万2000ドル台です。邦貨に換算すると104~105万円になります。日米ではケタが違います。
アメリカのファンドが日興コーディアルやサッポロビールにTOB(公開買い付け)を仕掛けようとして内外の大きな話題になりました。つまり外国人投資家の動き(外国為替の変動を含めて)がいってみれば腕力で、日本の株価を動かす最大の要因になってきていることをしっかり受け止めなければなりません。
一言でいえば"ゆとりある心、ゆとりあるおカネ"のない者は株に手を出すべきではないと思います。よく噛みしめてほしいものです。