第14章 株式は大量生産できない金融商品
第14章 株式は大量生産できない金融商品
文=今 静行
いつも暴騰、暴落のふたつの顔をもつ
何事も教科書どおりに決まるなら少しも問題ないのですが、実態はその逆のケースが多いのです。とりわけ株式について当てはまります。
一般に株価形成の主要因は企業業績、金融情勢、外国人投資をはじめ為替相場、物価、金利など交錯してその日その日の相場ができます。
しかし、このような基本どおりに株価が決まるものなら、株式投資は少しの心配も苦労もなく楽しいものになるでしょう。
実態は決してそのような安易なものでなく、不安の固まりのようなものが株式相場なのです。一喜一憂というなまやさしいものでなく、家族を巻き込んでの大きな悲劇が株式投資には待ち受けていることもあるのです。
本当に損する余裕もないひとが株式投資に走ったらどんな結果になるか。
寒気を覚えるのは私だけではないでしょう。
株式相場の宿命
くどいようですが株価の決まり方についての原則的な事項にかなりの紙数をさきましたが、本当のところそれ以上に重要な別の要因があるのです。
それは「株式は大量生産できない金融商品である」ということに尽きます。このことをかたときも忘れてはいけないと思います。つまり株式市場はしょせんかぎられた量の枠内で売買することを宿命づけられているという見方をすべきです。
一般の市場なら、どんどん売れて品不足状態が予想されるようになれば、いち早く生産を増やして商品を市場や店頭に並べます。大量生産、大量仕入れができるのです。
反対に売れ残りの山ができると、別の市場や店舗に持ち運び、場合によってはたたき売りをして処分することもできます。
しかし株式は大量生産できません。また処分したいからといって、どこかほかの市場やスーパーにまわすこともできません。
法律に従う株式市場で売り買いすることを義務づけられています。
かぎられた数の株式を、かぎられた枠で
かぎられた数の株式を、かぎられた枠の株式市場で売買するのですから、暴騰、暴落が起きるのも当然です。投資家が一斉に買いに入ればアッという間に暴騰します。株式という商品の補充がきかないからです。
逆に一斉に売りに出ればたちまち暴落します。逃げ場がないのですから暴落現象が起きるのは当たり前です。株式の特性を知れば、株価が大きく揺れ動くものであることを納得できるでしょう。