第47章 依然、白人大国アメリカの苦悩|初の黒人大統領誕生と変革の度合い
第47章 依然、白人大国アメリカの苦悩
──初の黒人大統領誕生と変革の度合い
文=今 静行
オバマ黒人大統領就任と人種問題
アメリカ建国以来233年にして初の黒人大統領が誕生しました。米国史上44代目のバラク・オバマ大統領です。
自由と民主主義を掲げるアメリカですが、人種問題は別格でいつもノドにトゲが刺さったような暗い歩みをつづけてきました。わずか40年前までは、トイレもレストランも白人と黒人は区別されていた国です。日本では考えられないことでした。
ところで若い学生たちに、人口3億人のアメリカで黒人の割合はどのくらいかと尋ねると、多くの若者たちは50%から60%と答えます。むろん、別に根拠あっての答えではなくあくまでも情緒的な見方そのものです。
黒人の比率はわずか13.5%にすぎない
じつはアメリカの人口構成をみると、黒人は4000万人強で、その比率はわずか13.5%に過ぎないのです。ヒスパニック系(スペイン語系)の4550万人、15.1%より少ないのです。
参考までにあげておきますと最近、目立って増えつづけているアジア系は1520万人、5%にすぎません。圧倒的に多いのは白人で1億9910万人、66%を占めております。アメリカは文字通り“白人大国”そのものです。
なぜ若者たちが、50%以上も黒人が占めると思い込むのかといえば、野球、陸上競技、バスケット、アメリカンフットボールなどテレビに映し出される黒人選手が圧倒的に多いので、その影響のせいでしょう。
さらにジャズなどミュージシャンや芸能人にも黒人が多いことも影響していると思います。
政治面では上院議員100人のうち黒人議員はただひとり
この機会に政治家ではどうかといいますと、上院議員100人のうち黒人議員はオバマ氏ただひとりです。連邦下院議員でも黒人議員は40人で全体の約9%です。1割にも達していないのです。改めて説明するまでもなくアメリカは依然として白人大国そのものです。だからこそ黒人大統領の誕生は歴史的な出来事であり、アメリカ一国の問題ではく世界各国の最大の関心事になるのです。
人種間の差が歴然としている
オバマ黒人大統領が生まれたからといってアメリカ社会が成熟したなどという議論は単純で短絡的すぎると言い切れます。
なぜなら1億人を超える非白人社会が存在しているのです。黒人をふくむ非白人社会と白人社会を比べてみると、失業率は白人の2倍以上です。大手企業の黒人経営者は白人の足もとにも及びません。サラリーも白人よりも低くなっています。
差別化はひとりの黒人大統領の出現によって一挙に解決できるものではありません。
その意味ではオバマ大統領のお手並み拝見というのが偽わらざる気持ちです。変革は容易でないと受け止めざるを得ません。アメリカにおける人種問題の苦悩はつづくとみるべきでしょう。