Lounge
2015年5月7日

第48章 輸出企業の雇用削減と過剰防衛|トヨタの場合を例に

第48章 輸出企業の雇用削減と過剰防衛──トヨタの場合を例に

文=今 静行

不況の拡がりと首切り

昨年(2007年)秋のサブ・プライムローンの焦げ付き(一口で言えば不動産向けサラ金の焦げつきそのものです)をきっかけに世界的不況が拡大、日本経済も例外ではありません。 とりわけトヨタなど輸出向け大企業を中心に間髪を入れず雇用削減を実施しております。 大きな社会問題になっています。

非正規社員が冬空に放り出されるばかりでなく正社員にも一時帰休を求めるなど深刻さは増大するばかりです。
とりわけ日本を代表する世界の大企業であるトヨタの業績悪化は目を疑わせるものがあります。数学をあげてみましょう。2009年3月期(今期)の連結営業損益が1500億円の赤字に転落ということで大騒ぎになっているのです。

トヨタを例にあげてみよう

連結営業損益というのは、子会社を含むグループ全体の営業活動で稼ぎ出した損益のことです。
連結売上高から原材料費や人件費などを差し引いて計算しています。
ここで留意してほしいのは、一年前の2008年3月期のトヨタの連結営業利益です。
驚くなかれ2兆2703億円というぼう大な黒字を記録しました。2位のNTTに1兆円近くも差をつけて文字通り世界一のトヨタの業績ぶりを誇示しました。
それが一年後の今期は一転してわずか1500億円の赤字ということで「大変だ、大変だ」とアピールしているのです。

「過剰防衛」の声も出ている

有識者のなかには明らかに「過剰防衛」という声も出ています。表現は適切でないかもしれませんが、悪なりの嫌いがあるように思えます。
その証拠に、受取配当金や子会社など関連会社で利益を出しているところもあり、これらを計上すると今期は500億円の黒字を見込んでおります。
さらに年間配当額は前期にじつに140円を支出していました。今期については様子を見てからというのが経営者の方針です。このように見てくると危機感は過剰防衛につながります。他の大企業にも同じようなことがいえます。

「終身雇用制」という日本の大切な雇用形態

経営の大変さはよく理解できますが、人件費を減らすことを最優先にし首切りや派遣切りを安易にすべきでないと思います。
戦後、廃墟のなかから立ち直って今日の日本経済をきずきあげた唯一最大の理由は日本の「終身雇用制」にあったことを片時も忘れてはいけないのです。入社した若者たちは誰もが「男子一生の職場」と受け止め仕事に精出しました。
経営者もファミリーのような気持ちで接しました。愛社精神は企業の業績向上に直結しました。アメリカのように成果主義、実績主義は日本の風土に合わないことは明らかです。
共に苦しみ、共に楽しむ日本の伝統的経営を改めて心してほしいものです。

           
Photo Gallery