第46章 海外企業を買収したり巨額出資できる日本の金融機関|その背景を知る
第46章 海外企業を買収したり巨額出資できる日本の金融機関
──その背景を知る
文=今 静行
資金豊かな背景
わが国の銀行、生保など金融機関は海外の企業を買収したり、大口出資したりしていますが、今年にはいってからの投資資金はハンパな額ではなく驚くばかりです。
ことし(2008年)1から9月間で海外企業の買収、出資額は5兆8000億円に達しました。これは民間の権威ある調査機関の調べによるものですが、去年の5倍に激増、調査開始以来はじめてのことです。
大手銀行のなかには数千億円から八千億円を支出して外国の企業を買収したり、出資しております。とりわけアメリカの企業が目立って多く、全体の62%を占めております。
日本も不況で貸ししぶりや貸しはがしが問題になっているだけにわが国の銀行にたっぷりの資金があることを教えてくれます。なぜでしょうか。
仕入れ値タダ同様で商売する銀行の実態
見落とせない決定的な理由のひとつは、12年以上も続いているゼロ同様の超低金利にあるのです。
預金金利は現在でも0%台です。普通預金の金利は0.1%台ですし、定期預金金利も0.2%とか0.3%台です。
0.1%の金利ということは1年間10万円を普通預金にした場合、利息はわずか100円です。
利息には20%の税金がかかりますから手取りは80円です。100円ショップにも行けないのです。諸外国の金利水準の数%に比べひどすぎるというか、明らかに異常です。
政府の金融政策は一貫しております。貸出金利を低くすれば、企業や個人は安い金利で設備投資を積極的にすすめるだろうし、個人は安い住宅金利を利用してマイホームづくりに精出すことだろうという見方です。そのためには原資に当たる預金金利を圧倒的に低く、つまりゼロに近い金利水準にしておかなければならないのです。ここでしっかり知ってほしいのは預金は銀行にとっては仕入れ値段です。
ただのような値段で仕入れ、それにマージンをのせて売る(銀行にとって貸し出し)という仕組みです。だれだって儲かるでしょう。
同じようなことを金融機関は行っているのです。それも政府公認というお墨付きをもらって商売しているのです。銀行におカネがたまるのは当然です。どの金融機関も一等地に立派な本社ビルを持ち、給料、ボーナスも他企業より良いことを知るだけで、あとは説明を必要としないでしょう。
金融政策に強い関心をもちろん金融機関は公的性格も強く
役員、社員一丸となって営業に努力していることは事実です。敬意を表するにやぶさかではありません。しかし、タダ同様で仕入れをして、それに利益を上のせして貸し出すという仕組みが、いつまでも長く続くということに批判が出て当然でしょう。せめて先進諸国並みの預金金利水準にしないと日本国民は納得しないと思います。
海外企業の買収や巨額な出資は私たち庶民の犠牲に立っているといっても言い過ぎではないでしょう。政府の金融政策に圧力かけるぐらいの関心を国民一人ひとりが持つべきでしょう。