ニコラ・フォルミケッティが拓くブランドの新境地|DIESEL
FASHION / WOMEN
2015年5月8日

ニコラ・フォルミケッティが拓くブランドの新境地|DIESEL

DIESEL|ディーゼル

ディーゼルが上海で初となるエキシビションを開催(1)

4月8日、上海の夜は「インターナショナル ファッションショーケース」を前日に控え、熱気に満ちていた。そのグランドオープニングを祝すためにおこなわれたのが、ディーゼル初となる特別展示とエクスクルーシブ・イベント。その模様をレポートするとともに、アーティスティック・ディレクターであるニコラ・フォルミケッティへのインタビューもあわせてご紹介する。

Text by ITO Yuji(OPENERS)

既成概念に捕らわれない、ディーゼルの革新性

上海の地で初となるイベントの会場として選ばれたのは、歴史的な建築物でもあるフレンドシップ・ホール。クラシックな趣のある建物に面した通りはピンクとブルーのLEDが交互に輝き、ビルに掲げられた今シーズンのキャンペーンビジュアルとあいまって、周囲をディーゼルらしい、サブバーシブ(反逆的)でボールド(大胆)、そしてアイコニック(象徴的)な雰囲気で彩っていた。

会場へと足を踏み入れると、そこに展示されていたのは、ディーゼルのイノベーションやクリエイティビティ、そしてノウハウを伝えるためのビデオ投影やアイコニックな製品たち。デニムはもちろんのこと、時計、シューズ、バッグ、アイウェア、フレグランス、ホームコレクションラインの「ディーゼル リビング」などのアイテムまでが、インタラクティブなインスタレーションにより、かつてないディーゼルらしい体験を来場者にもたらしていた。

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会場内にはあたらしい訴求のかたちと同時に、非常にアナログなダメージ加工の工程をその場で職人がほどこすなど、革新性だけではないデニムづくりの魅力も披露。ハンドワークでスタッズは打ち込まれ、ポケットに入れたシザーの当たり感も職人がやすりがけして表現されており、大胆なイノベーションというブランドスピリッツとクラフツマンシップの融合によって、このブランドが成立していることをあらためて認識できた。

ニコラ自身が、ストリートからもモデルをキャスティング

イベント後半にはアーカイブが展示された会場に隣接した屋内でランウェイも披露され、その幕開けを上海の人気シンガーであるモモ・ウーが飾ると、モデルたちが登場。今回のキャスティングは、プロのモデルだけではなく、上海や北京をはじめとする中国の主要都市の街中からニコラ・フォルミケッティが探し出した、型破りでクールな個性が光る人物もショーに参加しており、従来のランウェイショーにありがちな、美しいだけの退屈さは皆無。

この人選は、親近感と同時にファッションにリアリティをもたらすという意味で、大胆な決断ともいえる。それでもニコラがイノベーションを起こしたいと考えた理由は「ストリート・ファッションはつねに私にとって、インスピレーションの源なのです。世界のさまざまな都市の街中のスタイルを観察すること。これは、私の創造的DNAの一部であり、またディーゼルのDNAの一部でもあるのです」という言葉からもうかがえる。

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みずからを“もっともアンチ・ファッション的なファッション・ブランド”と称するディーゼルだが、今回のイベントによって浮き彫りにされたのは、同ブランドが掲げる精神性と個性こそが、着ることの楽しさ、纏うことのよろこびといったファッションのベーシックな部分にある快感を刺激した、ということ。かつてないリアリティとデジタル体験、さらにオーディエンスが発するエネルギーによって、ディーゼルは上海の人びとに自身のブランドのイメージを鮮明に印象づけることに成功した。

DIESEL|ディーゼル

ディーゼルが上海で初となるエキシビションを開催(2)

ストリートがインスピレーションの源になっている

――今回のショーのモデルは、すべてプロではなかったように見えましたが?

ニコラ・フォルミケッティ(以下ニコラ) 今回は中国でやるから、ちょっといままでとちがった内容にしたかった。もっとコンシューマー寄りの視点というかアイテムを使って、ショーを見たひとがすぐに買えるものを着せるというのがひとつの目的。今回もプレフォールの服を使って、それがもうちょっとしたら店頭に並ぶ、というように、コンシューマーにたいしてのファッションショーを意識したんです。

でもやっぱりディーゼルだから、もっとおもしろいことをそこに入れていきたくて、ローカルのひとたちとのコラボレートに挑戦してみようかと。だから「ウェイボー」を使って、キャスティングも全部ソーシャルメディア。ほとんどがアジアのモデルで、上海と北京のショップでオーディションをして、ひとりずつ選んでお客さんをモデルに起用したりとか……。

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簡単に言うと、ほかのブランドがよくやっているような、ヨーロッパやニューヨークでやっていることをそのまま上海に持ってくるのではなく、ローカライズされたイベント、より中国の人たちといっしょにコラボレートしている感覚を大事にしたかったんだ。

――自分がデザインした服を着ているひとを街で見ると、どんな気持ちになりますか?

ニコラ すごいアガる(笑)。これまで手がけたガガやビヨンセが着る姿はメディアでよく見られるけれど、知らないひとが街で着ているっていうシーンにはあまり遭遇しなかったから。だから知らないひとが着ているのを見られることは、すごくうれしい。そうすると「こういう着方する人もいるんだな」って。

――それがアイデアにつながったり?

ニコラ うん。いつもストリートや街からインスピレーションを受けています。デザインするときにストリートはつねに意識している存在で、僕のアトリエもストリートスナップがいっぱい貼ってある。それをアシスタントがアップデートしてくれるんだ。いろんな街のストリートスナップをね。

――ハイファッションとディーゼルのちがいをどこに感じますか?

ニコラ ハイファッションとちがって、ディーゼルは街で着るためのリアルクロージング。だからこそ、いろいろなひとのスタイリングの仕方も勉強したい。それに東京とロンドンとNYでは、それぞれ着こなしもちがうからね。でもそういうコレクションのつくり方も、はじめてだから大変なんだけれど、やっぱり日本やアメリカ、ヨーロピアンにスカンジナビアとか世界中にカスタマーがいるのがディーゼルというブランド。だからシーズンごとにスタイルひとつを提案するのではなく、定番のものに味つけしていく感じ。つまり、フレッシュアップデートに近いかもしれません。

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――アーティスティックな提案というよりはリアリティのある服づくりですか?

ニコラ そうですね。だから自分の感覚とグローバルのディーゼルのひとたちが考えるそれぞれのワードローブをつくっていくイメージですね。いろんな国のひとがいて、そのためのワードローブをつくるという感覚かな。

――デジタルによってビジネスはどのように変化しましたか?

ニコラ たとえばショップから連絡があり「これがいますごい売れてるから、色ちがいを入れて」というリクエストが来るようになった。デジタルのおかげでそういったインフォメーションがすぐに入ってくるようになったから、そういう意味では役に立っていますね。マーケティングがしやすくなったと同時に、ソーシャルメディアによって、デザインの仕方もすごく変わってきている。

あとはコミュニケーションとウェブと、ストアがいっしょになるような。あたらしいデジタル化を考えています。その代表が秋にローンチされるあたらしいウェブサイト。すごくクールに仕上がりつつあるから、ぜひチェックしてみてください。

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Nicola Formichetti|ニコラ・フォルミケッティ
1977年生まれ。静岡県沼津市にて、イタリア人の父と日本人の母とのあいだに生まれる。ファッション雑誌のエディターを経て、さまざまなブランドのファッションディレクターとして国際的に活躍。2013年4月、「ディーゼル」アーティスティック ディレクターに就任。

ディーゼル ジャパン
0120-55-1978
http://www.diesel.co.jp/

オンラインショップ
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