彫刻家・矢崎良祐とイラストレーター・Sayori Wadaによる「ファインアート」|Levi's® Made & Crafted™
Levi's® Made & Crafted™|リーバイス® メイド アンド クラフテッド™
Person 1; 彫刻家・矢崎良祐|作品タイトル『Urusuodok』
人のような、ジーンズのような彫刻
「Levi's®(リーバイス®)」の歴史を踏まえたデザインに、現代の革新的な高品質素材と縫製技術を取り入れたモダンライン――それが「リーバイス® メイド アンド クラフテッド™」(以下、LMC)だ。2015春夏シーズンのテーマはずばり「アート」。リアルなコレクションでありながら、常に実験的な提案や要素が詰まったモノづくりを得意とするブランドらしいテーマと言えるだろう。そんなLMCが注目する2名の日本人アーティストとの、コラボレーションが実現した。リーバイス®に縁の深い「インディゴ」をテーマとして、彫刻家・矢崎良祐さんとイラストレーター・Sayori Wada(サヨリ ワダ)さんに作品制作を依頼。そのクリエーションの過程を追うとともに、見事に完成した作品について話を聞いた。
Photographs by JAMANDFIXText by americaEdit by KASE Tomoshige
瞬間の遭遇による化学反応
物語のはじまりは2014年11月、LAのギャラリー「TORTOISE」でおこなわれた個展での出会いだった。LMCのアジア、中東、アフリカにおけるセールスおよびマーケティングを管轄するディレクターを務める大坪洋介さんという人物がいる。彼は日常的に訪れているLAの空港に降り立った。
そこでなにげなくチェックしたインスタグラムで、以前から興味をもっていたアーティストの矢崎良祐さんが、LAで個展を開いていることを知る。しかもその日は会期の初日。運命的なものを感じた大坪さんは、すぐに個展に行きたい、そして矢崎さんに会いたいというメッセージを送り、そのままギャラリーへと向かって、驚くべきスピードで初対面を果たすこととなった。
LAという土地で目にする矢崎さんの作品は、大坪さんの感性を揺さぶり、「いつかこの人と何かをやりたい」という抑えきれない衝動をもたらしたという。そしてその「何か」を実現する機会は、やはり驚くべき早さで、必然のようにあっけなく訪れたのだ。
2015春夏、LMCのテーマは「アート」である。「アート」という抽象的な概念を、LMCのフィルターを通して具現化するなら、決して外すことはできないと大坪さんが考えていたもの。それが、矢崎良祐という彫刻家の存在である。矢崎さんは回想する。
「若いころはイギリスのファッションが大好きだったものですから、活動はロンドンからスタートしたんです。先に海外で成功してから日本に戻りたいという希望もありました。その時からパンツは古着のジーンズをよくはいていて、501®XXが定番でしたね。だからリーバイス®というブランドには特別の思いがあります。今回のお話は大坪さんからのご指名、しかもLMCとのコラボレーションということで、本当にうれしくて……。よろこんでご協力させていただきました」
どっしりと大地に深く根を張る巨木のような存在感と、ピアニストの指先のような躍動感を併せもつ、矢崎さんの彫刻作品。主にテラコッタ(イタリアのレンガ)やヒノキを素材とするが、今回は迷うことなくヒノキを選択。1994年に発表した自身の処女作『Kodousurukatachi』を再構築した。
処女作を見つめ直して
「大坪さんが一番気に入ってくださったのが、この作品。そして個展のために数年ぶりに倉庫から引っ張りだして、改めて向き合っていた作品でもあるんです。当時の生き生きとした感覚がじわじわ蘇ってきて、とても興奮したのを覚えています」
偶然が重なり合った結果、処女作を題材にしてあらたな作品と対峙することになる。矢崎さんはこう解説する。
「『Kodousurukatachi』というのは、文字通り“鼓動する形”を意味していて、脈打つビートを形にしようと必死に格闘したもの。ヒノキとの押し合い、引っ張り合いを、そのまま表現しています。でも『Kodousurukatachi』を制作した1994年と、今回の2015年の格闘はまったくの別物。今回のお話に対して前のめりになっていたせいか、極端に飛び出してしまいそうだった“Kodou”を、ぐっと押し込んで静かな表現に止めているんです。だから、 “Kodou”という文字を押し込んで反転させた“Urusuodok”。これを作品タイトルとしました」
素材となった木曽ヒノキは、法隆寺の再建時の復元彫刻や平和観音像の万博出展などで知られる彫刻家であり、実の祖父でもある矢崎虎夫さんから譲り受けた、年代物の名木。「ちょうどいい、しっくりくる素材が見つかったのも、ラッキーでした。祖父に感謝ですね」と笑う。
おなじく虎夫さんから受け継いだ木槌やノミを駆使して、木と向き合うことおよそ2週間。ヒノキに宿る“魂”との押し合いへし合いを経て、見事にその“katachi”を取り出すことに成功した。
「生の木肌もとてもいい雰囲気で、着色前から処女作とはまったくちがうものになるというたしかな手応えを感じていました。作品を寝室に飾る方もいらっしゃるので、いつも着色する際は体に優しい天然の顔料を使うようにしています。今回はLMCとのコラボレーションということで、『藍群青(あいぐんじょう)』という、インディゴによく似た日本画用の天然顔料を選びました」
はじめて扱う顔料だったので不安もありましたが、と矢崎さん。
「でも、木肌に塗り重ねると、時間の経過とともに深みを増していきました。その表情はジーンズそのもののようで、とても新鮮な驚きをあたえてくれました」
私見だが、どこか肉感的で動物的なふくらみを感じさせるフォルムは、ジーンズのヒップラインを彷彿とさせる。どの角度から見ても画になる、多彩な表情を持つこの作品『Urusuodok』は、まさにLMCが考える「アート」そのものといっても過言ではないだろう。
「『アート』とはなにか? 生まれたときからそこにあったもの、とでもいいますか……。私にとってはもっとも身近でシンプルな表現手段であり、“生きていること”と言い換えてもいいかもしれません。幼いころから祖父にあたえられた粘土でイメージをカタチにするのが大好きでしたが、今やっていることも、それとなんら変わらないんですよ(笑)」
リーバイス® メイド アンド クラフテッド™
http://www.e-levi.jp/shop/made
リーバイス® ダブルエックス
Tel. 03-6418-5501
矢崎良祐|YAZAKI Ryosuke
1965年、東京都生まれ。日本大学芸術学部美術学科彫刻専攻を卒業後、同彫刻研究科を修了。祖父は仏教を題材とした木彫像の第一人者で、文部大臣賞を受賞した故矢崎虎夫氏。93に渡英し、ロンドンにて初の個展を開催。主な受賞歴として、2001年「グラスハウス賞」、2003年「東京都都議会議長賞」、2007年「アート未来大賞」、2008年「蓼科高原美術館賞」、2010年「文部科学大臣賞」などがある。インターナショナルギャラリー ビームス、プレイマウンテンなどでの展示を通じ、近年国内外、ファッション業界での一般的知名度を高めている。
Levi's® Made & Crafted™|リーバイス® メイド アンド クラフテッド™
Person 2; イラストレーター・Sayori Wada|作品タイトル『THE TWO HORSES』
ダイナミックな点と線
Photographs by JAMANDFIXText by americaEdit by KASE Tomoshige
ビジョンと感性が描き出すもの
キャンバスにまっさらな白布を張り付けて、迷うことなく、テンポよく描いていくインディゴブルーの図形や直線、そしてドット柄……。取材するスタッフの存在などお構いなしといわんばかりに淀みなく進んでいく作業は、イベントでアーティストのライブペインティングを見ているかのようだ。
彼女は、日本人イラストレーターのSayori Wada(サヨリ ワダ。以下、ワダ)さん。彫刻家の矢崎良佑さん同様、「リーバイス® メイド アンド クラフテッド™」(以下、LMC)のディレクターである大坪洋介さんが熱く注目し、今回のアートを表現するにふさわしい人物として白羽の矢が立てられた人である。
「どこでも描けますし、人がいようが騒がしかろうが気にせず描けるんですけど、音楽は絶対に欠かせないんです。iPhoneのアプリで適当に流しているだけなんですが……。よく聴くのはジャズ系ですね」
下絵を描かず、一切の迷いを感じさせない、流れるような筆の運び。静かだが、ダイナミックでエキサイティング。まさに「作品」が生まれようとしているリアルな現場を、目の当たりにすることができた。
「すでにイメージは固まっていて、大体の構図が頭のなかにあるので、それをキャンバスに落としこんでいくだけの作業ですからね。全体のバランスを調整しながら進めていますけど、ほぼ感覚のみでバンバン描いているんです」
そう言ってワダさんは穏やかに笑う。
「今回キャンバスに使っているのは、自分で生地屋さんで見つけてきたもの。素材感がデニムに似ているのがいいな、と思って。インディゴがテーマですし、やっぱりLMCの作品を作るのであれば、デニムに近いものでやりたいと思ったんです。絵の具もやっぱり本物のデニムを意識して、本藍染料を使うことにしました」
集中し、1時間ほどの短時間で作品を描き上げたワダさん。あとは乾いてからの色味のバランスなどを見たうえで、最終的な仕上げをほどこすだけだという。この日の作業を終えた彼女は、自らその作品を詳しく解説してくれた。
細部に宿る暗号
「はじめに描いた三角は、馬の顔。その横の櫛のような細かなタテ線は、馬のタテガミをイメージしたもの。テーマとなる題材を、わかりやすいカタチや記号のようなモチーフに置き換えて、作品内で使うことが多いんです。このドットの集合のようなものはジーンズのリベットを、山なりの線はポケットのアーキュエイトステッチを、そして三角や細かなタテ線で表現した馬の姿は、紙パッチにあしらわれた二頭の馬の姿を記号化したものなんですよ。リーバイス®のジーンズを自分らしく表現しようと思ったら、こんなイメージが湧いてきたんです」
あの山なりの線はひょっとして……。なんとなく感じるものはあったのだが、あらためてご本人に解説もらったことで、気持ちがいいほど合点がいった。「インディゴの濃淡で描かれた図形の羅列」は、美しいバランスで白いキャンバスへと落とし込まれ、ワダ サヨリさんのイメージするLMCを見事に表現していたのだ。
タイトルは、『THE TWO HORSES』。リーバイス®のアイコニックなデザインやディテール、パーツなどへの愛情とリスペクトを大いに感じさせるものである。
「リーバイス®は、まさにジーンズの王様。毎日ジーンズしか穿かないような私にとっては憧れの存在だし、まさかコラボレーションできるなんて思いもしませんでした。LMCもすごくヒップなんだけどまったく行き過ぎた感じはなくて、素材や作りの上質さが際立ってますよね。とっても好きなブランドです。秘密の暗号のような、モチーフの宝庫でもありますし(笑)」
ジーンズは生きている――そう語ってくれたワダさんの言葉が印象的だ。
「今回はじめて絵の具として使ってみて、インディゴは“生きている”素材なんだということがとてもよく分かりました。水の分量で自由に濃淡が付けられるし、塗った直後と乾いたあとでは全然表情が変わってくる。しかも重力で自然に垂れたり滲んだりすることで、ペンなどでは表現不可能なニュアンスや“動き”が生まれるんです。パンを発酵させるイースト菌のように、インディゴは作品を変化させる力を持った、生きている素材なんだと実感。これからも使っていきたいと思いました。洗いやアタリによってどんどん表情が変化していくジーンズもきっと、インディゴそのものとおなじように生きているんですよね」
街を歩いているだけで、あらゆるところに発見することができるもの。それがワダ サヨリさんにとってのアートなのだという。
「アートって、私にとっては人生そのものと言ってもいいくらいスペシャルだけど、全然おおげさなものじゃないんです。レストランのメニューを眺めているときだって、ちょっとしたフォントの使い方ひとつにも『感じる』ことができる。そういうなにげない、静かで主張しない日常のアートに気づけることが、すごく楽しいんです。LMCのコレクションひとつひとつのなかにも、アートはすでにたくさん詰まっているんですよ」
リーバイス® メイド アンド クラフテッド™
http://www.e-levi.jp/shop/made
リーバイス® ダブルエックス
Tel. 03-6418-5501
Sayori Wada|サヨリ ワダ
デジタルとアナログを融合させた迷いのないラインのイラスト、そして自由気ままかつ力強いペインティングが国内外で支持される日本人アーティスト。2014年には27歳で亡くなった数かずのレジェンドにまつわるイラスト本『27』(WOOLY ARTS出版)を発売。Manhattan Portage Art Award 2014にてプロダクト賞を受賞し、2015春夏シーズンのバッグデザインに採用。国内外のさまざまなファッションブランドとのコラボレーションアイテムを手掛けている。また東急ハンズ店内壁面, TOMMY原宿店, 六本木ヒルズ「Brasserie Le Duc」店内の壁面などでも作品を目にすることができる。