祐真朋樹・編集大魔王対談|vol.13 秋元梢さん
Page. 1
今回ゲストに迎えたのはモデルの秋元梢さん。美しく切り揃えられた黒髪のロングヘアが印象的で、東京を代表するオシャレなイットガールとしても人気です。最近ではパリコレにも足繁く通い、日本国内のみならずワールドワイドに注目を集める彼女の魅力を探りました。
Interview by SUKEZANE TomokiPhotographs by HATA Junji (Cyaan)Text by ANDO Sara (OPENERS)
海外でも活躍する秋元梢さんのファッションの原点とは
祐真朋樹・編集大魔王(以下、祐真) ファッションへの興味はいつぐらいからあったんですか?
秋元梢さん(以下、秋元) 小学生の頃から服は好きでした。親が買って来たものでコーディネートしたり、親と一緒に錦糸町のマルイに行って買ってもらったり。小学校高学年になるとお小遣いを握りしめて電車で原宿の竹下通りに出掛けたりもしてました。お相撲で地方に回った時は、空いた時間に母とデパートで服を買ってもらうのがルーティンになっていたので楽しみにしていました。
祐真 憧れていた人や好きな雑誌はありました?
秋元 ヴィジュアル系とかロックパンクバンドが好きで『KERA!』を読んでいました。『Zipper』とか『CUTiE』なんかは可愛いというかナチュラルな感じだったんですけど、『KERA!』はパンクやロリータ、ゴスなどちょっと派手な人たちが取り上げられていて、それをずっと買っていたんです。
祐真 ブランドでいうとどんな服が好きだったんですか?
秋元 ヒアゼアとかバツとかヒステリックグラマーとか。姉には「ヒスは高いからあんたにはまだ早いわよ」とか言われながら(笑)。母は私に女の子らしい格好をさせたかったみたいで、ミルクを着るようになって欲しかったみたいです。
祐真 当時ミルクは人気だったんですか?
秋元 ザ・スキャンティのYOPPYが雑誌で着ていて本当に可愛かったんです。彼女が着ているものは全身欲しくなるような感じでしたね。当時みんなのアイドルで読者モデルのさきがけというか。土屋アンナさんとかあんじさんが人気だった時代です。ミルクはずっと憧れのブランドだったので、まさか大学生になった自分が、2ヵ月という短い夏休みの間だけでしたが、ミルクボーイでバイトするなんて思っていませんでした。
祐真 モデルとして活動するようになったのは?
秋元 サロンモデルが最初ですね。竹下通りを歩いていたら、美容室の人に声をかけられて。当時、街にロングヘアがいなかったんですよね。それからしばらくしてSHIMAのsachikoさんにモデルになってくれないかと頼まれるようになって、アルバイト感覚でお小遣い稼ぎみたいにいろいろやっていました。そして今の事務所に入る事になったというわけです。
祐真 僕はエルメスのカタログにお兄さんと出ているのを見たのが最初でした。
秋元 事務所に入ってすぐだったので、もう6年以上前ですね。エルメス側が東京で面白い子を探していたそうで、秋元兄弟という何やら面白そうな子たちがいるらしい、と声を掛けてくれたのがきっかけです。
祐真 ストリートとハイブランドのミックスがとてもいいバランスでした。
秋元 エルメスは格式が高くて、雲の上の存在のようなブランドだったのですが、私にとっては原点ですね。
祐真 まさかあの千代の富士さんと関係あるとは知らず、一目見ていいモデルだな、面白いなって思っていました。
秋元 生まれた時から「千代の富士の娘」と言われ続けることには慣れていましたし、父のことは大好きなのですが、芸能界に入ったことで今まで以上に父の存在がついてまわるようになったのは事実ですね。エルメスのカタログに出させていただいたことも父とは関係ないのに、どうしてもイコールになってしまって、虚しさを感じることもありました。
祐真 お父さんの偉大さがそういうところで梢さんの人生に関わってくるわけですよね。ご自身にしかわからないと思いますけど、きっといいことですよね。僕はすごくいいなと思います。
秋元 いわゆる二世と言われる人たちは、親が有名というだけで、芸能活動をするとどうしてもマイナスに見られてしまうことが多いように思います。二世はいいよねって言われたりもしますが、普通に芸能活動をするよりも大変だと自分では思っています。
祐真 梢さんはここ数シーズンパリコレへ行っているそうですが、いつぐらいから行き始めたんですか?
秋元 3、4年前でしょうか。きっかけとなったのは、単純にパリコレってどんな感じなんだろうっていう素直な疑問です。日本のファッションショーに登場するモデルも、本業がモデルというよりもテレビで人気のあるタレントさんだったりして。私自身、モデルとしてのプライドもあるので、だったら本場のファッションショーを見に行こう!と。
Page02. エディターでもスタイリストでもないからこその視点で捉えるパリコレ
Page. 2
エディターでもスタイリストでもないからこその視点で捉えるパリコレ
祐真 初めてのパリコレはどうでした?
秋元 実は初めて海外のショーに行ったのはミラノコレクションでした。初めてだったので、何を見ればいいのかわからなくて戸惑いました。私はライターでもエディターでもスタイリストでもなく、むしろ着る側、モデルとしてショーに出演する側なので、どこを見ればいいのかわからなくて。私の初めての海外コレクションは、消化不良に終わってしまいました。
祐真 それからパリへ移動したんですか?
秋元 はい。空港に着いてホテルまでバスで行くか電車で行くかタクシーで行くか迷っていると、とあるエディターの方が「梢ちゃん1人なの?」って声を掛けてくれて。「ホテルまで送るから一緒に行きましょう」って送ってくれたタクシーの中でいただいた言葉でずっと残っているのがあるんです。私が「ショーで何を見ればいいんですか。みなさんは一体何を見ているんですか」と聞いたら「素直に服が好きっていう気持ちだけでもいいんじゃないかな。ショーが面白いって思うんだったら、続けたほうがいい。まずはひとつの都市を見続けるのが梢ちゃんのためになるわよ」と。ミラノではわからなかったけど、パリに着いてその話を聞いたので、じゃあ私はパリに行き続けようと思ったんです。
祐真 パリで最初に見たショーはなんですか?
秋元 たくさん見ているので、忘れてしまいました(笑)。でもパリで出会った人や、会話の内容などはずっと覚えているものですね。
祐真 何か衝撃的な記憶はありますか?
秋元 パリコレへ行き始めて確か二回目だったかと思うのですが、(水原)希子ちゃんが出ていたオランピア・ル・タンのショーを見て、私の中のパリコレの概念が変わってしまって。東京ガールズコレクションで見られるような演出に近くて「これはどういうことなんだろう」とパニックになりました(笑)。私が思い描いていたパリコレとあまりに違ったので……。でもその後もパリコレへ行き続けることで、それがオランピアの作風なんだとわかり、ストンと腑に落ちることになるのですが。オランピアのショーにはその後私も出させていただくことになって、そこでも改めて実感しましたね。ブランドやデザイナーによって表現の仕方が違うということもわかり、とても興味深かったです。
祐真 シャネルのショーは見ましたか?
秋元 実はまだ一度も見た事がないんです。
祐真 これは僕の持論なんですが、シャネルはほかのブランドとはまったく別物なんですよね。とにかくモデルが全員幸せそうにしているわけですね。「女性はみんなシャネルが好きなんだな」って実感するんですよ、シャネルのショーへ行くと。ハッピーな人たちを見るのはとても気持ちがいい。シャネルは見るだけで価値があるなって思います。機会があれば是非見に行ってください。
秋元 昔から私に似合うブランドは何だろうって思っていたんです。高校の時は流行っていたのでヴィトンのお財布を使っていましたが、今みんなが持っているシャネルのチェーンバッグ、私にはなんだか似合わないんですよね。だから自分の中でシャネルは「まだ違う」っていうのがあって。シャネルが似合うようになるのはいつかなと楽しみにしているんです。
祐真 ガーリーな世界観が梢さんとは違うのでしょうか?
秋元 そうかもしれません。自分の中で初めて一致したのがジバンシィ。シャネルとか他のブランドって、きっと誰もが似合うと思うんです。でも、ジバンシィの強い女性像が日本で一番似合うのは私、と思って着ているので、その気持ちが一番強い今はジバンシィを着たいなと思っています。
祐真 でもココ・シャネル自身はパンクな人だったはず。ただ単にガーリーで可愛いだけでなく、奥深くてカッコいいんですよ。梢さんに似合う服はあるはずですけどね。そういう意味ではジバンシィってわかりやすいかもしれないですね。「俺、怒ってます」っていう怒りが(笑)。それもひとつスタイル、世界観ですからね。
秋元 パリコレに行くようになって、見たいブランドのショーを見させてもらえるようになり、最近ではどのブランドのルックを着て街を歩いてパパラッチに撮ってもらおうか、という風に変化してきています。たとえばクロエのようなガーリーな服でも、どう自分らしく着こなそうかって考えるのが楽しい。自分の中で違和感があればパパラッチも全然撮ってくれませんが、自分でも気に入ったコーディネートだと歓声が沸いて拍手が起こるほど(笑)。そういうのがすごく楽しいですね。英語が喋れなくても「今回も来てるんだね」って写真をもらってインスタグラムにあげたりして。
祐真 梢さん大人気でしょ?
秋元 日本での人気とか知名度だけじゃない世界っていうのが気持ち良いんです。海外に出れば父の娘とか一切関係ないですし。テレビに出ていようが何をしていようが関係なくて、いかに服が好きで服を着こなせているかっていうことのみ。絶対に忘れられないエピソードのひとつが、AMBUSH®のVERBAL君とYOONちゃんに「私、初めてパリコレに行くんだけど、AMBUSH®のアクセサリーをパリで着けたいから貸して!」って借りた耳がとがった大きいピアスをつけた時のこと。パリで買った服や私物など全部好きなようにコーディネートしてアンダーカバーのショーへ行ったんです。そこでみんなが「あの子は誰だ?」って思ってくれたんですね。「コズエだ、日本のモデルだ」って写真をたくさん撮ってくれて。次の日には、そのつい前日まで誰も知らなかったのに、そこにいたみんなが私の名前を呼んでいることに驚きと楽しさとたくさんのいろんな感情が入り交じった嬉しい気持ちになりました。私の名前が一夜にして広まったことがすごく面白くて。日本ではテレビに出たり、マス的なことをしないと認知してもらえないけれど、パリでは自分の好きな服を着ているだけでみんなが喜んでくれる。モデルという自己表現としても、それが楽しくて仕方がなかったです。
祐真 その後行き続けてみて、実際ショーはどういう風に見ていますか?東京ファッションウィークや東京ガールズコレクションなどと違う点はありますか?
秋元 そこにいる人が違うというのが一番大きいかもしれません。緊張感が全然違います。私がスナップやファッションの世界で知ってもらったように、海外のモデルもそうですよね。ショーにキャスティングされてみんなの目に留まったら、そこからはシンデレラストーリーというような。でも私がいざ、オランピアのショーにモデルとして出演する側になったら、正直ランウェイを歩くという意味では東コレもパリコレも何も変わらないということがわかりました。日本に帰ったら「パリコレ出たなんてすごいね!」と言われるものの、私の中で何かは変わったはずなのですが、比較することではないんだなということに気づきました。
祐真 梢さんのように活動をしている仲間はいますか?
秋元 マンナミ(モデルの萬波ユカさん)は戦友ですね。私と同じように彼女も1人で海外で戦っているので、いかに海外に1人でいるのはつらいかとか同じような悩みを共有したり。
祐真 つらいのはどんな時ですか?
秋元 孤独。1人は嫌いじゃないのですが、私の場合、パリでのスケジュールは分刻みなので、まともに食事をとる時間がないこともしょっちゅうで。こんなに華やかな服を着ているのに、なんでホテルの部屋の隅っこでサーモンをもそもそ食べているんだろうって(笑)。
祐真 パリの街はちょっと孤独にさせるっていうのもあるからかな。1人で歩いているほうが絵になる街だし。
秋元 実際に過酷さを味わっているからマンナミは仲間ですけど、いろんな編集部の人たちとかは、一緒にパリコレを見た仲間という感じ。ウェルカムしてくれて嬉しかったです。「なんで梢ちゃん来たの?」からはじまって「梢ちゃんまた来たのねー」「またお茶しましょうねー」って。
祐真 共有できるからね、パリコレを見たっていう。それぞれコレクションの見方があるんですよね。僕はファッションが好きだからそれが続いている。会社勤めの人たちは意図せずファッションの編集部へ配属されてコレクションへ行くこともあって、そういう人たちの意見が面白かったりするんですよ。ある時、コムデギャルソンのショーを見て面白いことを言っていた人がいて。「コレクションはそこで起こる事件を見るような感じ」と。そこにいないとわからないことだから、面白いと思いましたって。だからそこでその事件を見た人たちはみんな共犯、ということなんですよね。「服がイケてるなー」とか「あのモデルいいなー」っていう観点で見ている側としてはその意見がとても面白かった。そういう、何か事件のようなものを見続けているというのもいいですね。
秋元 面白いですね、深くて。コレクションは考えさせるものも多いですしね。コムデギャルソンは特に。
祐真 謎解きなところはありますよね。一体なんでこうなったのかなとか。なんでこんなことをするのかなとか。
Page03. 自分らしさと日本人らしさ、「秋元梢」という確立したアイデンティティ
Page. 3
自分らしさと日本人らしさ、「秋元梢」という確立したアイデンティティ
秋元 私は友達が働いているので、コムデギャルソンは見させてもらっているのですが、ふと、日本人なのに日本人デザイナーのブランドのショーをそんなに見に行けていないことに気づいたんです。日本人で黒髪でこんなにわかりやすい容姿をしているなら率先して日本人を応援しなきゃと、なるべく日本人デザイナーのブランドのショーは行くようにしています。そうすると見えてくるものも違ってくるんです。ヨウジヤマモトの会場に行った時、明らかに有名な外国の方が(デザイナーの山本)耀司さんの服を着ているのですが、絶対に私のほうが似合ってる。「日本人が作った服だから、私が一番似合うの!」って思ったりして優越感に浸ったり(笑)。
祐真 嬉しいことですよね。自信にもなるし。自分たちのオリジンがそこにもあるんだって確信できたりする。
秋元 やっぱり自分だけっていうのはいいですよね。どんな撮影でも「梢じゃなくちゃだめなんだよ」って言われたもののほうが気持ちの入り方も違いますし。
祐真 そこがパーソナリティだと思う。この人でないと、この人で表現をしたいって選ぶ側からしてはその個性は尊重しなくちゃいけないし、魅力的なものですよね。僕がスーパーバイザーで参加したヨシキモノのショーで梢さんに着てもらいましたね。パッと梢さんの顔が出て来たわけですよ。YOSHIKIさんは日本人モデルを使いたくないって強い意見があったのですが、日本人のモデルに着せるのがいいと思いますよと提案をしたところから始まりました。
秋元 YOSHIKIさんが元々好きで、ヨシキモノも好きで、単純に出たいなと思っていました(笑)。YOSHIKIさんの世界観、外国人で表現したいというのもわかるのですが、お相撲の世界を見てきた身としては、着物は日本人が一番似合うというのは絶対に揺るがないので。着物のカタログを見ながら、なんで日本人が着るものを外国人に着せるんだろうって違和感は幼い頃からありましたね。
祐真 ところで、今回のパリでは美味しいもの食べました?
秋元 アディクションのAYAKOさんとれもんらいふの千原(徹也)さんと友達何人かと美味しいクスクスを食べました。ゼルダ・カフェ(Le Zerda Café)というところで、いかにもモロッコに来ましたって感じのお店でした。パリで一番美味しいモロッコ料理屋さんって言われているみたいで、野菜のタジンも美味しかったです。
祐真 ホテルはどこに泊まったの?
秋元 ギャラリー ラファイエットからほど近いところに泊まりました。ホテルの人も優しくて居心地が良かったです。目の前にモノプリもあるし。部屋の隅っこでもそもそ食べていたサーモンはそこで買いました(笑)。
祐真 ショーは何を見ましたか?
秋元 たくさん見ました。ジバンシィからはじまって、サカイ、ソニア リキエル、ルイ・ヴィトン、モンクレール、オランピア・ル・タンは出て、アレキサンダー・マックイーン、ケンゾー。
祐真 ベストは?
秋元 マックイーン!今回念願叶って初めて見られたんです。とてもきれいでした。力強くてフェミ二ンさもあって……。最後スタンディングオベーションになるショーは初めてでした。
祐真 マックイーン本人の世界観に戻っているね。
秋元 ご本人が手掛けていた頃の世界観はあまり知らないのですが、ちょっとパンクっぽくて好きです。今回はフィナーレの最後の三体ぐらいのドレスが素敵でした。
祐真 マックイーン以外は何が気に入りました?
秋元 サカイも素敵でした。リアルにも着られて、ピースとしても華やか。そのバランスが素晴らしいですね。ショー会場で、「こんなにみんなサカイを着ているんだ!」ってぐらいちゃんとみんなサカイだけは着てくるんです。それは着る服としてリアリティがあるからだろうなと思います。
祐真 それはすごいことですね。
秋元 私のように衣装として着てるのではなく、実際に支持されているっていうのがわかりますね。
祐真 ケンゾーはどうでしたか?
秋元 演出が毎回素晴らしいですね。今回はコンコルド広場で行われたのですが、銅像の格好をしたモデルがいて、とにかくすごくカッコよかった。服も好きでした。ケンゾーのいわゆるトラモチーフのシリーズよりももっとシンプルなものが好きです。
祐真 結構シックなんですね。
秋元 形がきれいで、毎回すごく好きなんです。
Page04. ファッションは鎧であり、自分を表現してくれる代弁者
Page. 4
ファッションは鎧であり、自分を表現してくれる代弁者
祐真 梢さんにとってファッションとは何ですか?
秋元 自分の一部ですね。強くなりたければ強いピースを着ればいい。自分を表現してくれる、代弁者のような感じですね。パリへ行く時は戦闘服でもあります。パリは戦いに行く場所なので。
祐真 その戦いとは?
秋元 私はショーに出られる身長はないので、観る側として、大好きな洋服を着てショーを味わっているところを撮ってもらうことを目的としています。自分の存在をいかに表現してみんなに認知してもらうかが大事なんです。自分が似合うものを身につけていかにほかの人たちよりも輝いて目立てるか。そういう意味での戦いですね。
祐真 では、ファストファッションとそうでないものの違いはありますか?
秋元 やっぱり値段、価値という意味では違うと思うけど、私は最終手に入れたら、同じような扱いになりますね。それが1000円であっても10万円であっても気に入れば気に入りますし。好きで選んで着ているので、なんでもいいというわけではないんです。
祐真 ハイブランドもファストファッションも同じフィールドで、そこに欲しいものがあれば買う、ということですね?
秋元 すごく高かったら考えますが、本当に欲しくてそれを身につけたら変われるならやっぱり買ってしまうかも。でも安いもの、ワンシーズンで捨ててしまうものの必然性もありますよね。
祐真 エルメスの存在はどうですか?
秋元 目標であり、最終地点ですね。たとえば恵まれた環境に生まれて、子どもの頃から高いものを身につけていることは素敵だけど、努力をして手に入れることも素晴らしいなと思うんです。その価値やありがたみをわかって着るのがいいなと。だって、どんなに高いものをプレゼントされたとしても、好みでなければいらないものになってしまうので。
祐真 いやげものになっちゃいますよね。
秋元 でも自分で頑張って買ったものは宝物だから、いかにそういうものに出会えるかが重要だと思っています。ファッションって表面的だなって思う瞬間も正直あります。ただ着飾っているだけで、内面がついていっていないなと。でもだからこそ服があるのかなと思います。内面が弱いから服で強くなれる。外側から守ってもくれるし、戦いにも行ける。私にとってファッションはそんな心強い存在ですね。
祐真 素敵なお話、ありがとうございました。