萩原輝美 連載 vol.145|ビッグブランドが挑んだのは新しい量感
DRIES VAN NOTEN/BALENCIAGA
ビッグブランドが挑んだのは新しい量感
ドリス ヴァン ノッテンとバレンシアガ。コレクションをリードする2つのビッグブランドが挑んだのは新しい量感。量感をいかにエレガントに、かつシャープに収めるか‥がポイントです。
Text by Terumi Hagiwara
男スタイルに込めたエレガンス――ドリス ヴァン ノッテン
2016年秋冬パリコレクション。ドリス ヴァン ノッテンは自分の世界を守りながらも、トキメキのあるコレクションを発表しています。今シーズンは量感たっぷりのニューバランスで作る“ジェンダーの融合”に挑みました。
どす黒いアイシャドウにメンズライクなヘアースタイル。ファーストルックは白シャツにベルベットのタキシードジャケット、量感あるアニマルプリントのパンツが登場しました。シャープなのにフェミニンです。ユニフォームような胸のエンブレムが清潔感を漂わせます。白いパイピングのネイビージャケット、Vネックのベストもたっぷりとタックをとったパンツと合わせています。コートやニットに使われているビロードタッチのアニマル素材はすべてフェイクです。コクーン袖のコートやブルゾンも量感を出しながら女っぽさを強調しています。羽のチョーカー、透け感のあるタトゥ柄のボディースや手袋でエレガンスを引き立てます。グリンが気になる色です。
新しいバランスに挑んだデムナスタイル――バレンシアガ
バレンシアガはアーティスティック・ディレクターに就任したデムナ・ヴァザリアのデビューコレクションです。
直線的な肩に角ばった袖、ウエストは程よく絞りながらも腰を張らせたスタイルです。コクーン袖のニットやスウェットは先シーズン、デムナが自身のブランド、ヴェットモンで出したバランスです。バレンシアガでは、これがより洗練されました。シャツやパーカー、ライダースなどを重ね着した時の抜けた着こなし、ハートネックもたくさん登場しています。この着こなしはすでに他ブランドにも影響を与えているスタイルです。コクーンシルエット、肩を張り出したジャケット、ヒップを突き出したバスク。バレンシアガのシグネチャーラインをなぞりながら、バイカージャケットやパーカーを加えてモダンに仕上げています。クチュールテイストがぐっと身近に感じます。フロントに布を大きく折りたたむように重ねたスカートをマウンテンブーツと合わせて着てみたい。ストレートラインなのに量感を感じさせる今年らしいアイテムです。
萩原輝美|HAGIWARA Terumi
ファッションディレクター
毎シーズン、ニューヨーク、ミラノ、パリ・プレタポルテ、パリ・オートクチュールコレクションを巡る。モード誌や新聞各誌に記事・コラムを多数寄稿。セレクトショップのディレクションも担当。
オフィシャルブログ http://hagiwaraterumi-bemode.com/